2022年入試:国公立・私立318大学4大模試最新難易度・文系編 コロナの反動で志願者増へ〈サンデー毎日〉
志望者が戻り難関・準難関大とも難化か
秋も深まり志望大学を決める時期となった。2022年度入試(22年4月入学)の学部志望動向は、コロナ禍に加え不透明な経済状況が影響を与えている。詳細な状況について、文系、理系、医療系に分けてお届けする。
学部系統別難易度特集の第1回は、文系学部の志望状況について検証する。まず、難関大の傾向について、21年度の入試状況を振り返りながら22年度の状況を見ていこう。 21年度は、国公立大の志願者が堅調に集まる一方、私立大は大幅減。その背景にあったのは、18歳人口の減少に加え、21年度の入試改革を避けるための安全志向から、20年度入試で進学先を決めた受験生が多く浪人生が減ったこと。さらに、コロナ禍で年内の総合型選抜や学校推薦型選抜で入学した受験生が増加したことにある。
これらの要因のうち、入試改革以外は22年度入試でも継続しているが、難関大の志望状況には変化が見られる。ベネッセコーポレーション・学校カンパニー教育情報センター長の谷本祐一郎氏は言う。
「前年の志望者を100とした時の指数は、難関国立10大学が110で、国公立大全体の104を上回りました。私立大も早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大)111、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)123、日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)122と難関大から準難関大まで志望者が戻っています」
難関国立大の人気がさらに上がりそうな中、準難関の国公立大でも、難化含みの大学がある。河合塾教育情報部長の亀井俊輔氏は、こう話す。
「コロナ対策で2次試験を早くに中止発表して志願者が大幅減となった横浜国立大は、文理を問わず志望者が増えて昨年の倍率を上回るのは確実。大阪市立大と大阪府立大の統合で生まれる大阪公立大は、難化を警戒して文や商の志望者が減っていますが、認知度も上がっており、入試が易しくなることはないでしょう」
前年の反動で志願者増が見込まれる難関私立大の中で注目されるのは、大学入学共通テストと大学独自の記述式の問題を組み合わせた国立型の入試を導入し、21年度入試で大幅な志願者減となった早稲田大や青山学院大。早稲田大の状況を見ると、22年度は大学全体として志望者は増加傾向だが、政治経済、国際関係、スポーツ科といった国立型の方式を導入した学部はそれほど増えていない。それでも、第1志望のコアな層は減っていないと言うのは、東進ハイスクール広報部長の市村秀二氏。
「21年度入試で国立型の入試方式を取り入れた早稲田大・政治経済の志願者は大幅減でしたが、第1志望者は増えていると思います。慶應義塾大・経済とダブル合格した場合、以前は慶應義塾大の入学者の方が多かったのですが、今春は逆転しました。難関国立大と併願しやすくなり、東大との併願者が増えていることも特徴です」
大半の学部で国立型の入試方式を導入して志願者が大きく減った青山学院大も、これまで立教大とのダブル合格で立教大を選択する受験生が多かったが、21年度は逆転したという。同様の方式を導入した上智大も含め、難関大を第1志望とするハイレベルな争いとなったことは、22年度に向けた難易度が3大学ともに上がっていることに表れている。22年度入試で志願者が大幅に増えなくても、厳しい入試を覚悟して臨みたい。
早稲田大や青山学院大、上智大を含めた私立の難関大で厳しい入試が予想される一方、一般的な大学の文系学部は競争が緩和されそうだ。駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一氏は言う。
「日本私立学校振興・共済事業団の発表によると、21年度の入学定員充足率は100%を割り込み、定員割れの大学は46・4%に上ります。定員割れの大学は22年度入試で合格者を多めに出すので、一般的な大学は入りやすい状況が続くと見ています」
外国語と国際関係で志望減も観光は人気
学部系統別の動向を見ていこう。学部志望動向は景気状況が直結する。そのため、22年度入試では、就職に不利な文系学部の人気が低く、就職に強い理系学部の人気が高い、文低理高の学部志望状況となりそうだ。
系統別志望状況では、文系学部で志望者の減少幅が大きいのは外国語と国際関係。学部系統としての就職率の低さと、コロナ禍で海外との往来が滞っていることが要因となっている。
「コロナの感染状況は鈍化していますが、それでも留学が不透明なことや、留学を必須とした学部の学費が高いこともあり、志望者は戻っていません。すでに志望が固まっている時期であり、志願者が急増することはなく狙い目になりそうです」(駿台の石原氏)
千葉大・国際教養や横浜市立大・国際教養、上智大・国際教養など難関クラスでも志望者が減っている。そうした中、2次試験で独自のスピーキング試験を課すことから志望者減が見込まれていた東京外国語大の人気は下がらず、難化の可能性がある。私立大では22年度に新設される武蔵大・国際教養や追手門学院大・国際も堅調に志望者が集まっている。
外国語や国際関係と同様にコロナ禍で志願者減が見込まれている観光でも、22年度に新設される金沢大・融合学域の観光デザイン学類と國學院大の観光まちづくりは志望者が集まっている。
コロナ禍が追い風になり注目度が高まっているデータサイエンスを含む総合科学は、全体として志望者増。滋賀大、横浜市立大、武蔵野大のデータサイエンスはいずれも志願者が増えそうだ。ITに深く関係するメディア関連の学びの注目度が上がったことから、芸術の人気も高まっている。
社会科学系では、人文科学や経済・経営・商学、社会の志望者が前年並みを維持する一方、景気に対する不安感を背景とした公務員志向の強まりから、国公立大と私立大ともに法の志望者が増えている。特に難関大の人気が高く、北海道大、名古屋大、京都大、大阪大、神戸大、九州大で大幅な志望者増となっている。
教員養成・教育は、就職に有利な資格が取れるにもかかわらず国公立大で志望者減。教師を取り巻く厳しい職場環境が要因となっている。私立大は、幼保の資格取得希望者が増えていることから、前年並みの志望状況。
ここまで、難関大と系統別の志望状況を見てきた。大学個別の難易度については、「国公立・私立318大学 4大模試最新難易度」で確認してほしい。