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経済・企業 脱炭素・DX 技術革命 

大注目の東芝の次世代太陽電池、軽量で曲げることができるフィルム型

東芝の逆襲 ペロブスカイト太陽電池 軽くて曲がる性質で設置自在=加藤結花 

 最新ITや家電の見本市「CEATEC(シーテック)2021」が10月19〜22日に開催され、東芝グループの次世代太陽電池のフィルム型ペロブスカイト太陽電池が経済産業大臣賞・カーボンニュートラル部門のグランプリ、量子暗号通信がソリューション部門の準グランプリを受賞した。(脱炭素・DX 技術革命)

 東芝は、2015年に発覚した不正会計処理や米原子力子会社ウェスチングハウスの巨額損失計上を受けて、「虎の子」の半導体メモリーや成長が期待されていた医療機器事業を次々と売却するなど一時は経営危機に陥ったが、いま、脱炭素とDX(デジタルトランスフォーメーション)という主戦場で、新技術を武器に“逆襲”に転じている。

軽くて曲がる性質で設置自在 “街全体が発電所”に変わる

 東芝は9月、大面積フィルム型ペロブスカイト太陽電池で世界最高となる15・1%のエネルギー変換効率を実現したと発表した。ペロブスカイト太陽電池とは、「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造の材料を用いた新しいタイプの太陽電池で、現在太陽電池として広く普及しているシリコン型太陽電池に匹敵する高い変換効率を達成できるという。09年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発案した日本発の技術で、宮坂氏はノーベル賞の有力候補でもある。

軽量で曲げることができるフィルム型のペロブスカイト太陽電池 東芝提供
軽量で曲げることができるフィルム型のペロブスカイト太陽電池 東芝提供

 フィルム型は「軽量」「曲がる」という特性があり、重量などの問題で既存のシリコン型太陽電池では設置が難しかった住宅の屋根や都市部のビルなどにも設置できるようになる。政府は50年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指しており、実現に向けた再生可能エネルギーの比率の引き上げが急がれている。再エネを推進する企業を中心に需要が見込める。

 東芝のフィルム型太陽電池は透明なフィルム状でビルの窓に内側から張ることもできるため、設置に足場を組む必要もなく、交換の費用も抑えられる。また、フレームが不要なため廃棄コストも安価で、雹(ひょう)などが降ってきても割れる不安もない。従来型の太陽電池に比べ、さまざまな建築物に設置可能なので、「街全体」を太陽光発電所に変える潜在力を持っているといえる。

25年に量産開始

 世界最高効率を東芝が達成できた大きな理由は「塗布技術」の高さにある。均一で大面積の塗布膜を形成できる「メニスカス塗布」と呼ばれる技術で、これは元々、有機EL開発にも用いられるなど、10年以上の技術的な蓄積がある。これをペロブスカイト電池向けに改良した。これまで2回に分けて塗布していた工程を1回に短縮。工程が減ったことで塗布にかかる速度が上がり、効率化にも成功したという。

 基板の大きさは703平方センチ。同じフィルム型を開発するオランダの太陽電池コンソーシアム「ソリアンス」は160平方センチ、ポーランドのサウレテクノロジーズは15・7平方センチで、都鳥顕司・研究開発センターシニアエキスパートは「大面積において均一な膜を作る技術は(競合他社も)一朝一夕には追いつけないだろう」と自信を見せる。

 量産開始は25年を予定する。大量生産できれば、発電コストは20円/キロワット時、現在主流である国内のシリコン型太陽電池の発電コストの相場(14~20円/キロワット時)に比べるとやや高い。しかし、「これまでは設置できなかった場所で普及していく可能性はある。また、化学材料は少数生産だとコストが高い。大量生産すればコストも安くなるので、普及に伴い下げていくことができる」(都鳥氏)。

 軽量で持ち運びが比較的容易な点も、グリッド(送電網)が普及していないアジア・アフリカ地域、再エネ導入が進む欧州で販路拡大が期待できるという。

 注目の技術だけにサウレテクノロジーズがすでに生産ラインを立ち上げるなど各国の動きも早い。更なる性能の改良に加え、量産スピードが勝負を決めそうだ。

(加藤結花・編集部)

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