2022年大学入試:主要279私立大共通テスト利用入試 実質倍率は低かった初年度 2年目も「コロナ」で志望増〈サンデー毎日〉
当初の難化予想に反し、2021年度入試(21年4月入学)の大学入学共通テストの平均点は、前年の大学入試センター試験を上回った。その影響は、22年度の私立大の大学入学共通テスト利用方式の志望者増として表れている。
21年度入試から導入された共通テストは、国公立大志望者の第一関門であるとともに、私立大志望者にとっても共通テスト利用方式(共通テスト方式)の合否を左右する重要な試験。共通テスト方式は、21年度に学習院大と上智大が参加したことにより、難関私立大で実施していないのは慶應義塾大と国際基督教大くらいだ。
願書受付締め切り日(10月7日、17時)時点の共通テストの出願者は50万1981人で、前年同時期を1万2670人下回った。センター試験との比較では2万2454人(4%)減となった21年度に続き2年連続の減少だ。現浪別に見ると、現役が前年を7064人下回る43万3491人で、浪人は5606人減の6万8490人。現役生の減少は、18歳人口の減少と連動したもの。浪人生の減少は、21年度の私立大の一般選抜で前年比6%増と多くの合格者が出たことで、22年度入試を目指す受験生が減っていることにある。
共通テストの出願者自体は減少している一方、私立大の共通テスト方式の志望者は増加傾向にある。その要因について、駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一氏が説明する。
「プレテストが難しかったため共通テストに対する警戒感があり、21年度入試は、共通テスト方式を敬遠する動きが見られました。ところが、実際の平均点は、前年のセンター試験を上回りました。そのため、日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)クラスから上位の大学を目指す受験生は『これならいける』と思ったのでしょう。もちろん、コロナ禍で一般選抜が受けられなかった場合の保険という意味合いもあります」
大半は出願するだけで合否が決まる共通テスト方式の志望者は、コロナ対策もあり21年度も増えていた。ただ、実際の志願者は前年を10%程度下回った。2年目を迎える22年度は、共通テストの姿も見えてきたことから共通テスト方式の志願者は増えそうだ。
大学の難易度別に見ると、あらゆる難易度帯で志望者が増えている。駿台の石原氏は、難関大の動向に注目して、こう話す。
「昨年、共通テストと大学個別試験を組み合わせた国立型の一般選抜を行った早稲田大と青山学院大で志願者が大幅に減りました。どのような入試になるのか分かりにくかったからでしょう。2年目となり入試内容が見えたことで、国公立大層を中心に志望者が増えているので注意が必要です」
共通テストの成績のみで選抜する方式も難関大の志望者が増えており、早稲田大や上智大、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)などで志願者増が見込まれている。21年度入試で難関大の志願者は大幅減となったが、その反動で、共通テスト方式の志望者が増えているようだ。
個別の大学に注目すると、早稲田大は、国立型を実施する政治経済や国際教養、スポーツ科学以上に、共通テストの成績だけで選抜する方式の教育や法、商、人間科学の増加幅が大きくなっている。中央大は全学部で志望者が増え、特に23年に多摩キャンパス(東京都八王子市)から茗荷谷キャンパス(同文京区)に移転する法の志望者が増えている。他大学では、明治大の法や情報コミュニケーション、青山学院大の地球社会共生やヒューマンライツ学科を新設する法、立教大の現代心理や法、理などに志望者が集まっている。
募集人員の10倍近い合格者が出た大学も
西日本では、立命館大の志望者が前年の志願者減の反動で増えている。特に法や食マネジメント、情報理工などの人気が高い。関西学院大は、従来の3教科型と5教科型に加え、7教科型を実施することで志望者が増えている。
準難関大グループでは、日東駒専が志望者増。特に2年連続で志願者減となった専修大が、新たに4もしくは5科目型方式を導入することもあり志望者が増えている。産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)も志望状況が好調だ。
難関、準難関大ともに志願者増が見込まれているが、志願者の増加幅ほど倍率は上がらない可能性が高い。一般方式に比べると募集人員が少ない共通テスト方式は、倍率が高くなると思われがちだが、「共通テスト利用入試 主要私立大279校 詳細情報」に掲載した倍率に注目してほしい。明治大・法の前期は、募集人員140人に対し、10倍近い1463人の合格者を出しているため、志願倍率(志願者数÷募集人員)34・6倍に対して、実質倍率は3・3倍だ。同志社大・法も志願倍率28・4倍に対し、実質倍率は2・1倍。駿台の石原氏は言う。
「共通テスト方式の出願者は優秀な受験生が多く、大学は採りたい人材だが、国公立大に進むなど歩留まりが悪い。そのため、多くの合格者を出すので、倍率は思ったほど高くならないのです」
前出の関西学院大や専修大のように多くの科目を課す大学は、さらに倍率が低くなる傾向にある。例えば、成蹊大・法の共通テスト5科目と独自試験を組み合わせて実施している「共通テスト・独自併用5科目型国公立併願アシスト入試(P方式)」は1・4倍だ。多数の科目を課す方式は、国公立大志望者を受け入れたいと考える多くの大学が実施しており、教科を絞らず、多くの科目を頑張って学んできた国公立大志望者にとって狙い目になることが多い。
一般的な大学も共通テスト方式の志望者が増えている。一覧表から分かる通り低倍率の学部が少なくなく、この傾向は22年度入試でも続きそうだ。「共通テストの志望者が戻っている難関大は、慎重な出願が求められますが、中堅以下の大学は、前年のボーダーラインと模試の成績を比較して出願すれば、合格の可能性はかなり高い」(石原氏)
共通テスト方式の志望者増の背景には、共通テストのレベルに対する安心感がある。ただ、多くの受験関係者は、22年度の共通テストは難化すると見ている。また、今は落ち着いているが、コロナ禍の影響も排除できない。不測の事態に慌てないためにも、志望大学の実施状況を確認したい。