実像はこんなに違う戦国武将たち=和田肇
経済環境が激変するなか、今の時代を生きづらいと感じる日本人も増えてきているのではないだろうか。一方で、近年は空前の歴史ブームといわれる。なぜ人々は、歴史に引き付けられるのだろうか。
小説や映画、マンガの歴史モノでも特に人気が高いのは戦国時代だ。歴史学の世界では「戦国時代全体の解明を進める中で、戦国大名をとらえ直す研究が主流になっている」(柴裕之・東洋大学文学部非常勤講師)という。そして「研究を通じて、私たちがイメージしている戦国大名とは、全く異なった実像が浮かび上がっている」という。
驚きの実像が次々と
この特集では、現代にも共通する社会課題・現象と関連する人物として、(1)北条氏、(2)今川家の寿桂尼(じゅけいに)、(3)織田信長、(4)明智光秀――の4人を取り上げた。
北条早雲(ほうじょうそううん)に始まる北条氏は、日本史上初めて「民の安泰」を政治スローガンに掲げ、領民の負担を軽減。5代100年にわたり関東を支配した。
駿河の今川氏親(いまがわうじちか)の正妻・寿桂尼(本名不詳)は、夫が病没すると政務を代行し、今川家を支えた。最近の研究で、戦国大名の政務を女性が担う事例が多いことが分かってきており、戦国時代の女性像が見直されつつある。
「革命児」とされる織田信長も、その実像はイメージと全く異なるという。明智光秀が起こした本能寺の変は、戦国時代最大の謎だ。真相は霧の中だが、そこには現代にも共通する、難しい人間関係が浮かび上がってくる。
(和田肇・編集部)