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教養・歴史 アートな時間

正反対の性格を演じる「1人2役」が3人! 米女性の強さ描く=濱田元子

左から、大原櫻子、八嶋智人、小泉今日子
左から、大原櫻子、八嶋智人、小泉今日子

舞台 シス・カンパニー 「ミネオラ・ツインズ」 激動のアメリカ現代史 女性の視点から過激に=濱田元子

 #MeToo運動もあって、ジェンダー問題への意識が日本でも高まってきた。とはいえ、各国の男女格差を測る世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」(2021年3月公表)で、日本は156カ国中120位と、格差解消は決して進んではいない──。

 と、そんないまだ男性中心主義の日本社会にも痛烈に刺さってくるのが本作。1950~80年代の米国の激動の歴史をたどりながら、女性たちが何を考え、どう生きてきたのか。過激で挑発的なコメディーだ。

 米国のピュリツァー賞受賞作家、ポーラ・ヴォーゲルの作品は96年に初演され、その後、米オフ・ブロードウェーなどで上演が重ねられてきた。

 主人公は、双子の姉妹のマーナとマイラ(ともに大原櫻子)。顔はそっくりでも、保守的で理想の結婚を目指すマーナ、常識にとらわれない反逆児マイラと、性格は正反対だ。その2人のぶっ飛んだ生きざまが、50年代のアイゼンハワー、69年のニクソン、89年のブッシュ(父)政権下の社会状況を色濃く反映しながら展開されていく。ジェンダーやセクシュアリティー、人種、格差など今日的な問題がてんこ盛りだ。

 卓越したセンスで戯曲を立体化してきた、俊英の藤田俊太郎が演出するのも楽しみだ。「女性の言葉とか価値観が過剰にちりばめられていて、エキセントリックで美しいと思った。女性がどう生きて、何を得て、何を失ってきたのか。この戯曲はもう一つのアメリカ史。男性中心主義的な表面の歴史があったとすれば、その裏側で女性がものすごく強く生きたというのを明らかにするのがこの台本の仕掛けだと思います」と語る。

 副題を「六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ」と銘打つように、3人の俳優がかつらと衣装を変えながら、1人が対極にある2役を演じるというのもいかにも演劇的。双子それぞれの恋人役を小泉今日子、それぞれの息子役を八嶋智人(やしまのりと)という巧者が演じるというから期待が高まる。

「一人の俳優がまったく違う人格を演じる。分断と許容、異なる価値観を受け入れることができるのかということを、一人の身体で語らせていくというのがこの作品の最大の特徴だと思います」と藤田。89年で戯曲が終わるというのも示唆的だ。この年、中国では天安門事件が起こり、ベルリンの壁が崩壊した。

「物理的な壁がなくなった時に人間の中における壁や線というものがなくなっているわけじゃなくて、より強く強調されているんじゃないか。歴史を見ながら、現在を見る作品になっています」。徐賀世子訳。

(濱田元子・毎日新聞論説室兼学芸部)

日時 2022年1月7日(金)~31日(月)

会場 スパイラルホール(東京都港区南青山5―6-23)

料金 1万円

問い合わせ 03-5423-5906(シス・カンパニー 平日11時~19時)


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