週刊エコノミスト Online2022年の経営者

「昔はカード会社だったね」と言われる日が来るかもしれない クレディセゾン・水野克己社長

    Interviewer 秋本 裕子(本誌編集長)Photo 中村 琢磨、東京都豊島区の本社で
    Interviewer 秋本 裕子(本誌編集長)Photo 中村 琢磨、東京都豊島区の本社で

    カードから総合生活サービスへ 水野克己 クレディセゾン社長

     Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

    ── 新型コロナウイルスは経営にどう影響しましたか。

    水野 Eコマース(電子商取引)事業者の中には、コロナで取扱高を大きく伸ばした会社があります。当社もネットショッピングでの取扱高は堅調に成長しています。しかし、単価はそれほど高くありません。当社は大型店などにカードの総合窓口「セゾンカウンター」を設けており、店頭でカード申し込みの勧誘ができるのが強みです。しかし、百貨店などが営業を休止したことで高額な利用もなくなり、需要が蒸発してしまいました。ただ、緊急事態宣言が明けた昨年10月以降は、富裕層に需要の「戻り」が顕著に出てきていると感じます。(2022年の経営者)

    ── どういうクレジットカードに力を入れているのですか。

    水野 アメリカン・エキスプレスとの提携カードを発行しています。アメックスは安全でステータスが高いと人気です。「セゾンといえばアメックス」というイメージを定着させて、会員を増やしたいです。また、2020年から「セゾンカードデジタル」という「ナンバーレス」のカードの発行を始めました。スマートフォンの完結型のサービスで、早ければ申し込みから5分でカード番号が利用者のアプリに届く仕組みです。

    ── 狙いは若い世代の取り込みですか。

    水野 主にZ世代(1990年代半ば以降生まれ)がターゲットです。しかし、狙いとは少し違った動きも出ています。21年8月からテレビ通販のジュピターショップチャンネルと提携カードの発行を始めました。ここの視聴者は50~60代の女性がメインです。デジタルに弱いと思われがちですが、カード申し込みの9割以上がウェブ経由です。

    ── 他社とどのように差別化していきますか。

    水野 楽天や三井住友カード、イオン、エポス(丸井グループ)などライバルはたくさんいます。(堤清二氏が率いた)セゾングループを知らない世代も増え、企業イメージが薄らいでいる面もあります。しかし、シニアにとってはなじみがある企業です。シニア世代に対してうまくアプローチすることができれば、勝ち目はあります。

    ── カード以外で力を入れている事業は。

    水野 住宅ローンの「フラット35」や家賃保証、個人向け投資用不動産購入ローン、リース、金融機関向けの信用保証などのファイナンス事業です。2本目の柱に成長しました。不動産市況が好調であることから、ローンは伸びています。

    ── 海外展開にも熱心ですね。

    水野 東南アジアとインドを重視しています。進出している国によって、取り組んでいる事業は違います。ベトナムは平均年収がまだ低く、バイクやスマホなどを一度に買うことができない人が多いです。このため、個品割賦のような個人向けのファイナンス事業を現地の合弁会社で行っています。インドでは現在、現地のフィンテック企業と提携し、中小企業や個人向けのファイナンス商品を提供しています。ベトナムもインドも今期の上期だけで2億円ほどの利益貢献につながりました。

    ── 会社の将来像をどのように描いていますか。

    水野 「総合生活サービス企業グループ」への転換を掲げています。当社はペイメント(決済サービス)事業が主軸ですが、2本目の柱としてファイナンスが伸び、海外事業も今後2~3年の間でかなりの規模まで成長できると確信しています。これからは4本目の柱を作らないといけません。

    広告にデータ活用

    ── 4本目の柱を目指して新規事業に力を入れていますね。

    水野 サイバーエージェントとの共同出資でカード決済データを活用したマーケティング会社を21年6月に設立しました。当社のデータを活用した広告ビジネスはこれまでも取り組んできましたが、うまくいきませんでした。それなら、ノウハウがある企業と組んで、やり方を学んだほうがいいと判断しました。今年度上期に黒字化を達成するなどパワーがあります。

    ── デジタル化にも力を入れています。

    水野 当社はリアルに強みを持つ半面、デジタルが非常に弱いという課題がありました。デジタル人材を現在の約150人から、24年度までに1000人にまで増やします。カード会員向けのアプリを使いやすくするなど、利用者向けサービスもデジタル化を進めます。もちろん社員向けのデジタル化も必要です。例えば、2万ページにも上っていたオペレーション用マニュアルをデジタルでも検索しやすいように変えました。

    ── どのように経営改革を進めますか。

    水野 カード事業をやめるという選択肢はありません。ただ、ファイナンスや海外事業が大きくなり、4本目の柱も育てば、「昔はカード会社だったよね」といわれる日が来るかもしれません。今はそのための土台作りをしていきます。

    (構成=神崎修一・編集部)

    横顔

    Q 30代のころはどんなビジネスマンでしたか

    A ユーシー(UC)カードとの統合後、UCの事業を担当する部署へ異動しました。セゾンとの仕事の進め方の違いに戸惑いましたが、異文化との融合を経験できました。

    Q 「好きな本」は

    A 司馬遼太郎の『竜馬がゆく』です。北海道江差町出身の自分と重ね合わせる面があります。

    Q 休日の過ごし方は

    A 麻雀です。企業対抗戦にも出場しています。


     ■人物略歴

    水野克己(みずの・かつみ)

     1969年生まれ。北海道立江差南高校(現江差高校)、北星学園大学経済学部卒業。92年クレディセゾン入社、営業企画部長、常務取締役、取締役専務執行役員などを経て、2021年3月から現職。北海道出身、52歳。


    事業内容:クレジットカード、リース、信用保証、不動産、エンターテインメント事業

    本社所在地:東京都豊島区

    設立:1951年5月

    資本金:759億円

    従業員数:5623人(2021年3月末、連結)

    業績(21年3月期〈IFRS〉、連結)

     純収益:2826億円

     事業利益:483億円

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