週刊エコノミスト Online2021年の経営者

ノジマ店舗の「接客力」で家電量販店生き残り術=ノジマ・野島廣司社長

    Interviewer 秋本 裕子(本誌編集長) Photo 武市 公孝:横浜市西区の本社で
    Interviewer 秋本 裕子(本誌編集長) Photo 武市 公孝:横浜市西区の本社で

    家電の「コンサル販売」で差別化 野島廣司 ノジマ社長

     Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

    ── 2022年3月期の売上高は過去最高の5650億円、営業利益も7期連続の増益を見込んでいます。新型コロナ禍の中でも業績は好調ですね。

    野島 コロナの影響で消費者の所得が落ち、ボーナスも良くないので、業界全体では前年度に比べてほぼ横ばいか下回ると見ています。ただ、今年は東京五輪の開催でテレビの需要が伸びたほか、炊飯器やホットプレートなどの調理家電が引き続き売れています。巣ごもり需要を取り込めたことが、当社の売り上げが伸びている要因だと思います。(2021年の経営者)

    ── 出店にも積極的ですね。

    野島 デジタル家電専門店だけで現在、神奈川、東京、埼玉を中心に約200店舗を展開していますが、今年度は30店舗の出店を目標にしています。これまでの出店は主に首都圏を環状に結ぶ国道16号線沿いでしたが、その内側に当たる都心部は空白でした。人材と物件と資金がそろえば、そこを埋めていくのが効率がいいし、顧客からも喜ばれるでしょう。その一環として、11月に東京・新宿の高島屋の中に出店しました。百貨店の顧客層に合わせ、高付加価値の商品に絞り、空間を広くとるなどした新しいタイプの店舗です。

    ── 店舗の接客が特徴的です。

    野島 通常、家電量販店は電機メーカーや携帯電話会社などから派遣された販売スタッフが接客しますが、当社は受け入れていません。そのため、メーカーに人件費を払ってもらってはいませんし、特定のメーカーの商品を勧めることもありません。メーカーなど“川上”からではなく、“川下”の顧客のニーズに合わせて販売することが大事だと考えているからです。

     従業員が各メーカーの商品を実際に使って良い点と悪い点を客観的に把握し、説明できるようにしています。店舗では全員がタブレット端末を持って接客しますが、この端末で商品の特徴がすぐに分かるため、顧客の要望を聞いたうえで、中立的な立場で最適な商品を勧めることができます。いわばコンサルティング販売です。こうした接客で他社と差別化し顧客から評価されることが、成長のカギだと思っています。

    ── その分、人件費がかかります。価格競争が激しい中で商品価格に影響しませんか。

    野島 決して商品を高く売っているわけではありません。家電製品は価格で選ぶ人も多いわけですから。社内努力で販売管理費をできる限り抑え、従業員には同業他社より高い給料を支払い、顧客にも「ノジマで買ってよかった」と思ってもらえることを心がけています。だから、テレビCMなどの広告宣伝費はほとんどかけず、「口コミ一番」でやってきました。

    海外出店増やす

    ── 家電製品をインターネットで購入する人も増えています。

    野島 当社はネット販売を同業他社に先駆けて始めましたし、一定のニーズはあるので今も手がけていますが、規模は大きくありません。強みは対面での接客なので、今後もオンラインを無理に伸ばそうとは考えていません。ネットでの口コミは必ずしも信用できるものではないので、当社の従業員の中立的な説明を聞いてファンになってくれる人は多いですよ。

     その意味で、一番大事なのは従業員です。従業員が育たないと出店もできません。当社は店舗ごとに地元の顧客層に合わせた運営をしています。何ごとも本社や上司から命令されるより、自分たちで考えて運営する方が楽しいし、失敗をしても取り返そうという意欲が出るのではないでしょうか。

    ── グループ内で多様な事業を手がけていますね。

    野島 ネットプロバイダーの「ニフティ」、携帯電話販売の「ITX」、総合通信販売の「セシール」などがあります。昔からネットプロバイダー事業を手がけていましたし、店頭で携帯電話販売をしていることもあって携帯ショップをグループに収めました。それぞれがネット販売を切り口に関連しており、相乗効果を出せると見込んでいます。

    ── スルガ銀行の経営立て直しのため、昨年に資本業務提携してITと金融の融合を目指しましたが、今年6月にスルガ銀の取締役副会長を辞任し、スルガ銀は持ち分法適用会社から外れました。

    野島 ITと金融の融合に関心がなくなったわけではありません。

    ── 出店している東南アジアを成長のカギと見ていますか。

    野島 日本での出店拡大に加えてシンガポールで手がける店舗がうまくいけば、次のステップとして海外で出店を増やしていければと思います。米国の「ベストバイ」のように、海外の家電量販では売り上げ4兆、5兆円規模という企業もあり、海外はまだ伸びる余地があります。ただ、無理に拡大するつもりはありません。無理をして成長するのではなく、ゆっくりでも、永遠に成長を続けられる会社でありたいですね。

    (構成=中園敦二・編集部)

    横顔

    Q これまで仕事でピンチだったことは

    A 1991年に経営の考え方の違いで家族と衝突し、分裂したことです。それまで私が実質的に経営を取り仕切っていましたが、組織再編で専務となり、社長の母と常務となった弟に経営の実権を握られました。ただ、3年後に私が社長に就きました。

    Q 「感銘を受けた本」は

    A 城山三郎の『雄気堂々』、司馬遼太郎の『坂の上の雲』、山岡荘八の『徳川家康』です。

    Q 休日の過ごし方は

    A ゴルフ、読書、妻と一緒に食事や買い物です。


     ■人物略歴

    野島廣司(のじま・ひろし)

     1951年生まれ。中央大学付属高校卒業、73年中央大学商学部卒業後、有限会社野島電気商会(現ノジマ)入社。78年に取締役、91年に専務を経て、94年から社長。神奈川県出身、70歳。


    事業内容:デジタル家電製品の販売、付帯工事、修理、技術指導

    本社所在地:横浜市西区

    創業:1962年4月

    資本金:63億3000万円(2021年3月末時点)

    従業員数:連結 1万937人(21年3月末時点)

    業績 (21年3月期・連結)

     売上高:5233億2700万円

     営業利益: 338億2600万円

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