週刊エコノミスト Online2021年の経営者

料理から日用品まで「宅配を日常化」 藤井英雄 出前館社長

    Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都渋谷区の本社で
    Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都渋谷区の本社で

    料理から日用品まで「宅配を日常化」

     Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

    ── 自転車で料理を配達する人の姿を見ない日がありません。ブームをどう見ていますか。

    藤井 新型コロナウイルス禍での飲食店の営業自粛や政府による人流抑制をきっかけに、利用者が広がりました。宅配の便利さに気づいてもらったことが大きいです。当社は「デリバリーの日常化」を合言葉にしていますが、徐々に近づいていると実感します。(2021年の経営者)

    ── 配達員の確保は大変では。

    藤井 成長市場を支えるために配達員は不可欠です。空いた時間で気軽に働くことができ、女性や業務委託の人も増えています。当社では月100万円以上稼ぐ人もいます。「稼げる仕事」にするためには、もっと専業の人を増やすことが重要です。

    ── コロナ拡大前から事業展開していました。

    藤井 デリバリー総合サイト「出前館」を開設したのは2000年です。もとはピザ屋やすし屋など配送員を自前で抱えているお店を対象とし、当社が顧客から注文を受け、それを店舗に知らせて、店舗の配達員が届けるサービスでした。17年ごろからは当社が「シェアリングデリバリー」と呼んでいる配達代行サービスも始めました。配達員を持たない飲食店に当社の配達機能を利用してもらうサービスで、こちらのニーズが急速に拡大してます。

    ── 勢いがあるのに、業績は赤字です。業績てこ入れのため、LINEグループから追加出資も受けました。

    藤井 21年8月期の売上高は前期比1・8倍でした。取扱高(商品代金と配送料の合計)は1627億円と前期比で1・5倍以上、利用者数も734万人に達し、22年8月期は取扱高3300億円、利用者数1200万人が目標です。

     一方で、営業損失は前期は179億円になり、今期も500億~550億円の赤字を見込んでいます。シェア拡大のために広告宣伝費など販管費を増やしているためです。これらを減らせば黒字にはなりますが、競合相手が増える中、手を緩めるわけにはいきません。そのために9月、増資して830億円を調達しました。マーケティング費用などの運転資金や設備資金などに充てる計画です。

    競合はいずれ淘汰も

    ── 国内では米ウーバーイーツとの「2強」と言われています。

    藤井 当社は他社と比べて、自社配送の店舗が多いということが強みでもあります。テレビCMによって全国で知名度を上げる戦略で、営業所を増やしています。

     競合相手は国内で大小十数社あります。東京ではウーバーイーツが強いですが、地域によって違いがあり、例えば札幌や広島ではウォルト、大阪や福岡では中国系のDiDi(ディディ)が強いと言われています。ただ、まず国内市場を拡大しなくてはいけないというのが業界共通の考え方。その意味で、現状では競合が増えるのは良いことだと思っています。

    ── 今後の市場をどう見ますか。

    藤井 間違いなく伸びます。日本の外食市場は20兆~25兆円規模です。海外では市場規模の10%が料理宅配です。日本市場の10%というと2兆円ですが、現在の規模はその3分の1程度。海外並みの10%の規模になるのに時間はかからないと思います。日本より3~5年先行している海外では、国ごとに既に2~3社に集約されています。日本でも今後、撤退が必ず出てくるでしょう。同時に、資本力がないところはサービスの統廃合が進むと見ています。

    ── 店舗での購入と宅配の違いはどこにありますか。

    藤井 昔は安くて良い物に需要が集まりましたが、今は価値観が多様化しています。最近、「タイム・パフォーマンス」という言葉が使われます。「時間をお金で買う」という発想で、特に1990年代中盤から00年代終盤までに生まれた「Z世代」には浸透しています。例えば、女性が身支度をしてコンビニに行き、食べ物を買って家に戻るまで30分とします。代わりに多少お金を払ってでも商品を30分で届けてもらい、浮いた時間で好きなことをする方がよいという考え方です。ウーバーイーツはこうした価値観の人たちに強いので、当社もその層を拡大したいです。

    ── 新たな取り組みは。

    藤井 料理以外を運ぶサービスです。料理はランチとディナーの時間帯に注文が増え、14~16時台に減ります。その時間帯にトイレットペーパーなどの日用品も宅配しています。配達員にとっても一日中稼げる仕組みにつながります。

     将来的にはドローンの活用も考えています。自転車やバイクでは人口10万人近い商圏がないと配達が成り立ちませんが、ドローンなら分散した世帯にも運べますし、買い物難民の解決にもなります。6月には当社アプリで注文を受けた牛丼をドローンで病院に届ける実証実験を行いました。今は規制の壁がありますが、いずれ活用できるようになればいいですね。

    (構成=桑子かつ代・編集部)

    横顔

    Q これまで仕事でピンチだったことは

    A 27歳の時に札幌市で縫製工場を経営していた父が急死したことです。勤めていた会社をやめて従業員30人の会社の経営を一時引き継ぐことになり、苦労しました。

    Q 「好きな本」は

    A 企業の成り立ちや資産形成に関心があり、IT(情報技術)や不動産の本をよく読みます。

    Q 休日の過ごし方は

    A ゆっくりします。一番ためていけないのはストレスですから。気分転換に旅行をしたりもします。


     ■人物略歴

    藤井英雄(ふじい・ひでお)

     1976年生まれ、北海道出身。札幌北陵高校、北海道教育大学卒業。2006年楽天入社、15年楽天マート取締役副社長。16年LINE入社、17年執行役員。20年6月から現職。


    事業内容:料理を中心とする配達事業と運営

    本社所在地:東京都渋谷区

    設立:1999年9月

    資本金:161億円

    従業員数:312人(2020年8月末、連結)

    業績(21年8月期、連結)

     売上高:290億円

     営業損失:179億円

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