週刊エコノミスト Online2021年の経営者

インタビュー 海底油田の生産設備で世界2強の三井海洋開発は低炭素対策も同時に進めている=三井海洋開発社長 金森健

    Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都中央区の本社で 自社製造のFPSOの模型の前で
    Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都中央区の本社で 自社製造のFPSOの模型の前で

    編集長インタビュー 金森健 三井海洋開発社長

    海底油田設備が世界市場で存在感

     Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

    ── 主力である海洋の石油・ガス設備はどういうものですか。

    金森 当社はFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)を設計・建造しています。船の上に原油の1次処理プラントが搭載されたような設備です。海底油田の上に係留し、海底から原油をくみ上げて、FPSO上の処理設備で水や随伴ガス、硫黄などの不純物を取り除き、船腹にあるタンクに貯蔵します。タンクが満杯になったらタンカーに原油を移して陸上に輸送し、陸上で更に原油を精製します。(2021年の経営者)

     FPSOは原油をくみ上げて1次処理する過程までを担うものです。そのほか、1次処理プラントを持たないFSO(浮体式海洋石油・ガス貯蔵積出設備)も建造しています。

    ── 建造実績は。

    金森 これまで西アフリカ、アジア、オセアニア、メキシコ湾、ブラジルでFPSOをはじめとした浮体式の生産設備53基が完成、もしくは建造中です。うち、ブラジル向けが17基を占めます。

    ── 顧客はどういうところですか。

    金森 ロイヤル・ダッチ・シェル(英蘭)などの石油開発世界大手や、ペトロブラス(ブラジル)などの国営石油会社です。FPSOなどには大きく二つのビジネスモデルがあります。設計・建造・据え付けをして引き渡す「建造工事」モデルと、据え付け後も当社が所有権を持ち、客先にリースして操業や維持管理を当社で担い、デイレート(日額の料金)を受け取る「チャーター」モデルです。当社はチャーターの比率が高いです。

    ── 御社の強みは。

    金森 海底深くから石油をくみ上げることができ、かつ大型のFPSOを安定供給できることです。例えば、ブラジルの「プレソルト」と呼ばれる海底油田では、水深2000メートルの下に厚さ3000メートルの岩塩層があり、海面から5000メートルの深さから掘り出す技術が必要です。大水深から石油をくみ上げられる大型船を安定供給できるのは、世界では当社とSBMオフショア(蘭)くらいです。海底油田での生産量ベースでは、2社で世界シェアの過半を占めます。

    ── 2019年12月期~20年12月期は2期連続の最終赤字に陥りましたが、21年12月期は50億円の黒字化を予想しています。今年から3カ年の中期経営計画では、23年12月期に最終利益2億ドル(約220億円)を目指す野心的な目標を掲げていますね。

    金森 新型コロナウイルス感染拡大の影響による工事遅延などの打撃を受けました。今期予想は、20年にコロナの影響でできなかった修繕や維持管理をてこ入れするために1・3億ドル(約140億円)の一過性損失・支出を織り込む結果、最終利益は0・45億ドル(約50億円)としています。しかし、一過性損失を除けば1・75億ドル(約190億円)を見込んでいます。

     また、今年からの3年間で新たなFPSO5基のチャーターが始まり、利益を底上げします。そのため、2億ドルは決して野心的な数字ではないのですが、中計策定時以上にコロナの影響が長引いているので、目標達成は1~2年遅れるかもしれません。

    ── 原油価格が上昇しています。業績への影響は?

    金森 チャーターでの操業、維持管理に対するデイレートは、契約時の固定価格なので、原油価格上昇は直接影響しません。ただ、原油価格が高い局面では、石油開発会社の新規案件に対する意欲が高まるので、FPSOへの引き合いが強くなることが期待できます。

    低炭素設備も検討

    ── 世界では脱石油の動きが強まり、逆風が吹いています。

    金森 大手石油開発会社による目先の新規案件への意欲は衰えていません。現に当社でも、FPSOを中心に世界で入札中・入札前最終段階の案件が約70件あります。30年ごろまでは新規の海底油田開発は行われていくことでしょう。しかし、大手石油開発会社も50年の温室効果ガス排出実質ゼロを掲げており、当社としても、石油のサプライチェーン(供給網)の中で目標達成に寄与しなければなりません。

    ── 具体策は?

    金森 FPSOの各種搭載機器の電源には、海底からくみ上げた原油に混じっている随伴ガスを燃焼させるガス火力を用いていますが、これをコンバインドサイクルに転換することです。コンバインドサイクルは、ガス火力発電で生じた高温の排ガスを活用し、蒸気タービンを駆動させます。ガス火力より、発電容量当たりの温室効果ガス排出量を削減できます。

     例えば、ノルウェーのエネルギー会社「エクイノール」向けに建造しているFPSOは、発電設備をコンバインドサイクルとする計画です。今後、改造したり、新規建造するFPSOも、コンバインドサイクルを搭載することを検討しています。

    (構成=種市房子・編集部)

    インタビューは10月14日に実施しました。この後、同社は11月2日に2021年12月期連結最終(当期)損益予想を65億円の赤字(従来予想は50億円の黒字)へ修正しました。

    横顔

    Q 今までピンチだったことは

    A 三井物産勤務時代、20代で加わったスリランカ向け水力発電機輸出案件で一時交渉が決裂し、私1人が現地に残されて、連日、担当大臣に厳しい条件を突き付けられました。結局、日本に帰った交渉団の支援があり成約しましたが。

    Q 「好きな本」は

    A 『21Lessons』です。著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏の慧眼(けいがん)に感服しました。

    Q 休みの過ごし方

    A こっそりと、へたなゴルフをしています。


     ■人物略歴

    金森健(かなもり・たけし)

     1956年生まれ、東京都出身。桐朋高校、早稲田大学法学部卒業。80年三井物産入社、常務執行役員・プロジェクト本部長、専務執行役員・中国総代表を歴任。2018年三井海洋開発副社長、21年4月から現職。


    事業内容:海洋の石油・ガス生産設備の設計、建造、据え付け、操業

    本社所在地:東京都中央区

    設立:1987年6月

    資本金:301億円

    従業員数:5622人(2021年6月末、連結)

    業績(20年12月期、連結)

     売上高:3099億円

     営業損益:216億円の赤字

    インタビュー

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