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週刊エコノミスト Online2021年の経営者

建設クレーン大手、風力発電に商機 氏家俊明 タダノ社長

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都墨田区の東京事務所で
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都墨田区の東京事務所で

建設クレーン大手、風力発電に商機

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── クレーンは建設現場でよく見ますが、いろいろな種類がありますね。

氏家 大きく分けて、売り上げの6割超を占める主力の「建設用」、トラックなどに搭載する「車両搭載型」、高層ビルの修理や電線工事などに用いる「高所作業車」の3種類です。顧客の多くはクレーンレンタル会社です。建設会社がクレーンを所有し、オペレーター(運転・操作の技術者)を雇用するケースはまれで、通常は建設現場で必要な工程でのみレンタル会社から機械とオペレーターを確保しています。(2021年の経営者)

── 建設用には、どういうものがあるのですか。

氏家 当社が製造しているのは、建設中のビル上に据え付ける「タワークレーン」などではなく、自走タイプです。一つは、走行とクレーン操作の運転席が同じで、狭い現場でも機敏に作業できる「ラフテレーンクレーン」、これより大型で車輪の数も多いのが「オールテレーンクレーン」です。大型ゆえに走行とクレーン操作の運転席は別で、不整地でも走行でき、橋梁(きょうりょう)据え付けなど大型のインフラ整備に使われます。そして、車輪ではなくキャタピラー(履帯)で動くものが「クローラクレーン」です。つり上げ能力が格段に高いうえ安定性もあるので、荷をつり上げたまま移動もできるメリットがあります。

── 建設工事に不可欠ですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響は。

氏家 同じ建設機械でも、ショベルカーなどの掘削機械は泥や岩で摩耗するので5~7年で買い替えるのが普通です。また、景気悪化からの需要回復は早いです。しかし重い荷をつり上げるクレーンは、タイヤやエンジンフィルターなどを除いて部材の多くが摩耗しないので10年以上使うことも可能です。更に、景気悪化局面ではオーナーは買い控える傾向にあります。その影響を受け、2021年3月期の売上高は前年比18・4%減の1860億円にとどまりました。

海外比率は8割目標

── 22年3月期は売上高2150億円を見込んでいます。回復への手応えは。

氏家 掘削機械に比べてクレーンの需要回復は遅く、新車需要が出るのは中古車価格が上昇する時です。レンタル会社が中古車を一斉に売って新車に買い替えるためです。このような市場特性の下では掘削機械に比べて需要の落ち込みが激しい分、回復後のピークも高くなり、適正な生産設備と人員の見極めが難しいのです。

 この点で言えば、19年7月に買収したドイツのデマーグ社は、過剰人員を抱えていたことが判明し、現地で事業再生法に基づく手続きを進めています。ただ、同社は当社では開発できなかった大型クレーンを製造しており、今後の成長に寄与するはずです。今年度から3カ年の中期経営計画では24年3月期売上高目標を2750億円に設定していますが、コロナ前の実力値を基準にすれば決して背伸びしているわけではありません。

── 海外の売上高比率が高いですね。

氏家 22年3月期予想は58・5%ですが、長期では80%を目指します。国内市場の爆発的な成長は見込めない中、必然的に海外比率が高まります。主要市場は米国、欧州、東南アジア、中東、豪州です。

── 国内で高いシェアを持っていますね。

氏家 製品ごとに異なりますが、主力の建設用クレーンの国内シェアは55%、海外では15%程度です。車両搭載型は国内で50%程度と見ています。

── 強みは何ですか。

氏家 細かい機能面でも差別化要素はありますが、一番差を付けたいのはサービスです。機械にはトラブルとメンテナンスがつきもの。維持管理を手掛けるグループ会社で、専門エンジニアがすぐに対応できるようにしています。指定サービス工場もあり、ネットワークの綿密さでは国内随一と自負しています。

── 今後の成長分野はどこでしょうか。

氏家 需要が拡大する風力発電機の工事関連です。洋上風力発電機の基礎やブレードを港湾施設から船に積み込む工程、あるいはこれらを製造する製鉄所などでクレーン需要が見込めます。基礎やブレードは一つ一つが重く、大型のクレーンが必要になりますが、買収したデマーグは400~3200トンのつり上げ能力があるクローラクレーンを製造しています。風力発電機設置での船積みに対応できるクレーンを製造しているのは、世界で当社とリープヘル(独)ぐらい。しかもデマーグ製品の方がつり上げ能力は高いです。デマーグを買収してから日が浅いためにまだ実績はありませんが、風力発電関連には売り込みをかけていきます。

(構成=種市房子・編集部)

横顔

Q 30代ではどのようなビジネスパーソンでしたか

A 丸紅勤務時代に欧州に駐在した際、現地の課長が「君がおかしいと思ったことはおかしいのだから、きちんと口に出して指摘するべきだ」と助言してくれました。タダノに“よそ者”として入社した後も、おかしいと思ったことは論理的に指摘するようにしています。

Q 「感銘を受けた本」は

A 本も読みますが、本よりむしろ人の話を直接聞いて感銘を受けたいという気持ちが強いです。

Q 休日の過ごし方は

A 妻と、散歩や庭の草刈りをしています。


 ■人物略歴

氏家俊明(うじいえ・としあき)

 1961年生まれ、東京都出身。慶応義塾高校、慶応義塾大学経済学部卒業。84年丸紅入社、経営企画部長、常務執行役員・輸送機グループCEO(最高経営責任者)を歴任。2019年タダノ入社、専務、副社長を経て21年4月から現職。60歳。


事業内容:クレーン、高所作業車の製造・販売

本社所在地:高松市

設立:1948年8月

資本金:130億円

従業員数:5074人(2021年3月末、連結)

業績(21年3月期、連結)

 売上高:1860億円

 営業損益:41億円の損失

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