週刊エコノミスト Online2021年の経営者

損保の顧客基盤を生かし契約倍増 加治資朗 三井住友海上あいおい生命社長

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 武市公孝 :東京都中央区の本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 武市公孝 :東京都中央区の本社で

    損保の顧客基盤を生かし契約倍増

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 2生保の合併から10月で10年となりました。この間、契約件数が倍増したそうですね。

    加治 契約件数が200万件から400万件、預かり資産は1・8兆円から2・5倍の4・5兆円となりました。10年前に合併したのは「三井住友海上きらめき生命保険」と「あいおい生命」です。両社のルーツである「住友」「三井」と「大東京」「千代田」の4損害保険会社が生保事業に進出して25年という節目でもあります。

     生命保険の販売は新規顧客を増やすために、どこに営業するか悩ましいところですが、損保系生保は自動車保険や火災保険などで顧客基盤がしっかりあり、拡大することができました。代理店の皆さんには本当に感謝しています。(2021年の経営者)

    ── 損保代理店が販売するのですから、最初は生保のことが分からず大変だったのでは。

    加治 手前みそですが「教育と研修のMSA(三井、住友、あいおいの頭文字)生命」と言われたほどです。ポイントは、代理店(現在1万6000店)の皆さんが顧客一人ひとりのニーズ、日常生活での不安をくみ上げることです。オーダーメードに近いイメージで、顧客のライフプランに応じた提案を心がけてもらいました。

    ── 商品として魅力は。

    加治 生保参入の後発組であるがゆえに、エッジの利いた(個性的な)ものを出していかないといけないという思いが強くあります。顧客の要望を積極的に取り入れ、ここ十数年は商品開発に力を入れており、商品に絶対の自信を持っています。

     2006年にいち早く「先進医療特約」を世に出しました。最近は介護や就労不能といった領域の保障に着目し、19年に「くらしの応援ほけん」を発売しました。今年度第1四半期末で累計4万件で、大ヒットといえると思います。要介護、障害、就労不能になったら年金を支払うという商品で、要介護認定基準は通常、公的介護と連動していますが、当社はそれに加えて独自基準を設けて幅広くしています。

    ── 昨年6月にセブン-イレブンでがん保険の募集を始めました。年間6万件が目標ということでした。

    加治 業界初の取り組みですが、件数は目標に届いておらずまだまだです。ただ、店頭に貼ってあるポスターを見て加入する人もいて、セブン-イレブンが広告、手続きの媒体となっています。店舗だと手続きに15分程度かかかりますが、店舗で手続きをしている人は4割弱で、残りはスマホなどネットで必要な手続きをして保険料だけ払いにセブンの窓口に行きます。保険には入りたいが、営業職員とは会いたくないという人もいるので、いろいろな加入方法を用意することで顧客の獲得につなげたいと思っています。

    コロナで「みなし入院」

    ── 新型コロナウイルスへの保険対応は。

    加治 今年7月末時点で9250件の保険金・給付金請求が寄せられ、ほとんどが入院給付金です。コロナ感染が拡大した昨年3月に「見なし入院」を導入しました。本来入院しないと支払えませんが、入院したくてもできない場合や自宅療養でも入院と見なして支払うもので、他社に先駆けました。

     20年度のコロナ関連の保険金・給付金支払額は6億8000万円で全体支払額の1%でした。21年度はそれより増えると思いますが、コロナ以外での請求が減っていることもあるので、全体としてほとんど影響はないと見ています。

    ── コロナが落ち着いたとしても、在宅勤務が増え、営業の仕方も変わるのでは。

    加治 大胆に変えていかないといけません。来年1月以降、個人客向けのリモート募集手続き、職域客向けでもインターネットで完結する募集手続きを始める予定です。いずれも非対面、ペーパーレスです。新たな顧客層の開拓や効率的な営業活動につなげたいと思っています。

    ── 今後の商品戦略は。

    加治 生保会社は従来、万一のときの「保障」を商品として提供してきましたが、これからは「予防」に力を入れていきたいと思います。保険会社に集まるビッグデータを活用し、病気になる前に察知して防ぐようなサービスです。高齢化で増えることが予想される認知症や介護などでも同様です。

    ── 損保代理店のネットワークを活用していますが、日本生命が関係の深いあいおいニッセイ同和損害保険の代理店に対して、日生の子会社「はなさく生命」の保険も売るよう働きかけています。競合しますね。

    加治 確かに競争は激化していて、はなさく生命の商品を扱う代理店もあります。しかし、そちらに流れているということはありません。商品力に加え、代理店との密着度合いが違います。引き続きうちを選んでもらっていると思っています。

    (構成=中園敦二・編集部)

    横顔

    Q これまで仕事でピンチだったことは

    A 損保にいたときに、火災保険で注意物件を引き受けてしまい、支店長からえらく怒られました。

    Q 「好きな本」は

    A 松下幸之助の『道をひらく』を毎日読んでいます。人としての温かさもあれば、ドライな経営者としてのマインドもある。経営の神様はさすがです。

    Q 休日の過ごし方は

    A コロナ以前は月3本は映画を見に行きました。ドライブも好きですが、今は控えています。


    事業内容:生命保険販売

    本社所在地:東京都中央区

    設立:1996年8月

    資本金:855億円

    従業員数:2523人

    業績:(2021年3月期)

     保険料等収入:5131億円

     経常利益:256億円

     当期利益:119億円


     ■人物略歴

    加治資朗(かじ・しろう)

     1960年生まれ、福岡県出身。八幡大学付属高校(現九州国際大付属中学校・高等学校)卒業、西南学院大学経済学部卒業。83年大正海上火災保険入社。2014年三井住友海上火災保険執行役員関東甲信越本部長、16年三井住友海上あいおい生命保険取締役専務執行役員を経て、21年4月から現職。61歳。

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