週刊エコノミスト Online2021年の経営者

相互会社の強み生かし契約者に還元 永島英器 明治安田生命保険社長

    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝:東京都千代田区の本社で
    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝:東京都千代田区の本社で

    相互会社の強み生かし契約者に還元

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 新型コロナウイルスの感染拡大で、対面営業が難しくなっています。どう対応していますか。

    永島 デジタルの活用を進めており、非対面によるお客様とのアクセス(接点)数は2020年度に19年度より3倍に増えました。毎年行っている顧客満足度調査では20年度の満足度が過去最高になり、既に保険に入っている人の継続率も上がりました。ただ、新規のお客様との出会いは難しい面があります。(2021年の経営者)

    ── その中で営業職員を増やすそうですね。リスクはないですか。

    永島 新型コロナはいつか収束するはずです。営業職員は現在、約3万7000人いますが、10年間で4万人に増やそうと考えています。

     人工知能(AI)やロボットなどの最新技術が普及してデジタル化が進むほど人間にしかできないことの価値が輝きを増すと考えており、私は「最後は人間力だ」と言っています。一方で、デジタルを活用しないと勝負の土俵に乗れなくなっているのも事実なので、人とデジタルの両方を生かします。

    ── 営業職員の給与を22年度から固定給にする方針です。生保業界では、営業成績に応じて毎月変動するのが一般的なので異例です。

    永島 毎月の成績で翌月の給与が決まる制度だと、例えば月単位の締め日までに契約を結んでもらおうと、営業姿勢が強引になってしまうこともありえます。それではお客様本位の営業とは言えません。もっと長い目で見て、1年間の実績で翌年の給与を決める制度にします。総合職と同じです。

    「健康増進」商品に注力

    ── 歩合給が多いので頑張る職員もいるのでは。業績に影響しませんか。

    永島 現在は、固定部分が7割、比例部分が3割になっています。新制度では、毎月の給与は固定化しますが、新契約でがんばった人が報われるよう、これまでの比例部分については年4回の賞与で応えるようにします。

     また、地域への貢献も重視し、営業職員が地域社会やお客様のためにどのように尽くしているかという所属長評価も取り入れます。その活動が評価され、会社や営業職員の評判が上がることで契約が増えればという考えに基づいています。

    ── 6月には、健康診断の数値が悪化して通院した場合に給付金を支払う、業界初の「早期発見」の特約を発売しました。

    永島 「早期発見・治療支援特約」は、血圧や脂質、肝機能など5項目について、当社が決めた健康診断の判定区分に沿って、前年度より一つでも判定が悪化し、かつ治療や精密検査が必要な区分になった場合に、一定期間内の通院や入院に対し給付金2万円を支払うものです。

     狙いは、健康診断や人間ドックの受診を後押しすることです。都市部の会社員は定期的に健康診断を受けている人が多いのですが、地方在住の人や自営業の人はそうとは言えないので、少しでも受診を後押しできればという考えです。健康になったり、病気を早期発見できることは、お客様、保険会社、社会それぞれに良いことだと思います。

    ── 主力商品の「ベストスタイル」は、死亡、病気・がん、介護などあらゆるリスクに対応できるのが特徴です。一方で、自分に合った保険を個別に契約した方がいいのでは、という指摘もあります。

    永島 ベストスタイルは、必要な保障を必要な分だけ組み合わせる総合保障保険です。結婚、出産、先進医療など、人生のステージや環境の変化に応じて柔軟に保障を変えられるのが特徴です。

     別々の保険会社で自分に合ったものを個別に契約するという考えもありますが、選ぶのは大変ですし、自分がどの保険に入っているか把握しきれないこともありえます。保険会社によっては売りっぱなしということもあるでしょう。当社は営業職員がお客様のニーズを把握して、相談に乗りながら定期的な見直し、最適な提案ができるのが強みだと思います。

    ── 新たな配当を始めるそうですね。

    永島 内部留保の積み立てに貢献してくれた契約者に還元するものです。業界初の試みで、10月から始めます。21年度は契約から20年超のものも対象とするため支払い総額は249億円になる予定です。

    ── 狙いは何ですか。

    永島 相互会社であることや、そのメリットを理解してもらうということです。これまで株式会社との違いを積極的に説明してこなかったという反省があります。株式会社は剰余金が出た場合に株主配当を出しますが、相互会社は剰余金が増えれば契約者に還元するという考え方です。契約者が会社の所有者である相互会社だから実現できることです。

    (構成=秋本裕子・編集部)

    横顔

    Q これまで仕事でピンチだったことは

    A 群馬県桐生市で営業所長をしていた2005年、保険金不払い問題で会社が金融庁から行政処分を受けました。営業職員とおわび行脚をしましたが、ある顧客企業ではすべての契約が解約になりました。会社とお客様の常識の乖離(かいり)を痛感した、忘れられない原点です。

    Q 「好きな本」は

    A ユヴァル・ノア・ハラリの3部作『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21Lessons』です。社員にも勧めています。

    Q 休日の過ごし方

    A 健康のため1時間ほど歩きながら瞑想(めいそう)します。


     ■人物略歴

    永島英器(ながしま・ひでき)

     1963年生まれ。私立桐朋高校、東京大学法学部卒業。86年明治生命保険(現・明治安田生命保険)入社。2015年執行役企画部長、執行役員人事部長、常務執行役を経て、21年7月から現職。東京都出身。58歳。


    事業内容:生命保険業

    本社所在地:東京都千代田区

    創業:1881年7月

    基金総額:9800億円 (2021年3月末)

    従業員数:4万6928人(21年3月末)

    業績(20年度、連結)

     保険料等収入:2兆6693億円

     基礎利益:5798億円

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