経済・企業2021年の経営者

ゲームやプロ野球だけじゃない 居心地の良さでライブ配信が急成長=ディー・エヌ・エー岡村信悟社長

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都渋谷区の本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都渋谷区の本社で

    居心地の良さでライブ配信が急成長

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── ゲームサイト「Mobage(モバゲー)」で会社の売り上げを伸ばしましたが、近年はゲーム事業が落ち込んでいる印象です。

    岡村 収益の大きな部分をゲーム事業に頼っているのは事実です。コロナ禍による「巣ごもり需要」もあり、前年度のゲーム事業は好調でした。ただ、ゲーム市場は成熟し、ヒット作を出すことが難しい状況です。我々が得意なことは、イベントの開催などでプレーヤー間のコミュニティーを作り、盛り上げることです。新タイトルを成功させることも必要です。年に3~5本は新作を出します。(2021年の経営者)

    ── 8月に新しいゲームをリリースしました。

    岡村 音楽ゲームの「東方ダンマクカグラ」です。音楽に合わせてスマートフォンを操作すると、キャラクターがリズムに合わせて動くゲームです。出だしの感触はとてもいいです。ゲームに登場する「東方Project」(神社のみこや魔法使いなどの女性キャラクターが若者に人気)のファンたちの期待を集めたと思います。

    ── ゲーム事業の課題は。

    岡村 中国ではバスケットボールアニメ「スラムダンク」のゲームがヒットしています。日本は市場が成熟していますが、中国はまだ伸びています。中国・上海の拠点で、日本のキャラクターを使ってゲームを作っていきます。

    ── ライブストリーミング事業の「Pococha(ポコチャ)」が好調です。どんなサービスですか。

    岡村 ライブストリーミングは今この瞬間に、話をしたり、演じたりしている様子がリアルタイムで見られるアプリです。配信者である「ライバー」と視聴者である「リスナー」が、どこでも配信したり視聴したりできます。ギフティング(投げ銭)をして、ライバーを応援できる仕組みです。これがぐっと伸びて、ビジネスとして成立しています。アプリのダウンロード数は290万です(6月現在)。

    スポーツで課題解決

    ── 人気の理由は。

    岡村 ライバーは事務所に所属するタレントだけでなく、一般の会社員や学生、主婦などが多いのも特徴です。ライバーとリスナーが双方向でやりとりができ、居心地の良い場所と感じてもらっているようです。文化として定着するように、運営していきます。

    ── 南場智子会長に誘われて総務省の官僚から転職しました。4月の社長就任以降は、社会課題の解決を経営方針に掲げています。

    岡村 市場や世間からはゲームの会社と思われているかもしれません。ゲームやライブストリーミングといったエンタメ領域だけでなく、スポーツやヘルスケアなど社会課題領域へも挑戦します。外から見ていて、失敗はするが割と生真面目で、強い「個」が集まっているという印象でした。だから選びました。

    ── 2012年からプロ野球「横浜DeNAベイスターズ」を運営しています。コロナ前は観客動員数を大幅に伸ばすなど目覚ましい成功を収めています。

    岡村 ネットのエンタメは得意でしたが、リアルのエンタメであるプロ野球へ参入し、ここまでは成功していると言えます。地域との結びつきに新たな可能性が出ています。スポーツ事業の収益は、コロナ禍でかなり打撃を受けました。しかし新たな分野の取り組みも出ています。バーチャル空間に横浜スタジアムを作ってファンがさまざまな体験ができるサービスなどはその例です。

    ── ファンを楽しませることに力を入れていますね。

    岡村 他のチームから強い選手を連れてきて、勝てばいいというわけではありません。試合だけでなく、カードやグッズなど楽しみ方はいろいろあります。我々も地域の子どもたちに帽子を配ったりしています。スポーツは地域づくりや都市空間づくり。「ソフトインフラ」として考えています。

    ── ベイスターズ以外にもスポーツチームを。

    岡村 バスケットボールの川崎ブレイブサンダースも運営し、サッカーJ2のSC相模原にも参画しています。プロスポーツチームを持ち、アリーナやスタジアムを使い、街に「にぎわい」をつくりたいのです。スタジアムの外である街にはみ出していきます。

    ── 横浜市では市庁舎跡地の再開発にも参画しています。

    岡村 スポーツを文化として楽しんでほしい。その考えの延長線で参画しました。我々は人を引きつける仕掛けを置くことが得意です。市庁舎では子供たちがテクノロジーやスポーツを学びながら楽しめる施設などを担当します。野球の試合がある70日だけではなく、人の流れが365日できるような仕掛けを、都市空間の中でやろうと思っています。スポーツ事業は一見エンタメ領域にみえますが、地域のにぎわいづくりであり、我々は社会課題の解決ととらえています。

    (構成=神崎修一・編集部)

    横顔

    Q これまでの仕事でピンチだったことは

    A 総務省で郵政事業を担当していたころに政権交代がありました。政権によって政策の振り幅があまりにも大きく、なすすべもなく、政治に翻弄(ほんろう)されました。

    Q 「好きな本」は

    A 平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」シリーズを愛読しています。

    Q 休日の過ごし方

    A 散歩に行くこと、本を読むことです。


     ■人物略歴

    岡村信悟(おかむら・しんご)

     1970年生まれ、筑波大学付属駒場高校、東京大学文学部、同大学院人文科学研究科修了、1995年郵政省(現総務省)入省。2016年ディー・エヌ・エー入社、横浜スタジアム社長、横浜DeNAベイスターズ社長などを経て、21年4月より現職。東京都出身、51歳。


    事業内容:ゲーム事業、スポーツ事業、ライブストリーミング事業、ヘルスケア事業など

    本社所在地:東京都渋谷区

    設立:1999年3月

    資本金:103億円

    従業員数:2100人(2021年3月末、連結)

    業績(21年3月期〈IFRS〉、連結)

     売上収益:1369億円

     営業利益:224億円

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