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経済・企業 2021年の経営者

ガンダムプロジェクトで世界を攻める 川口勝・バンダイナムコホールディングス社長

Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市公孝、東京都港区の本社で
Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市公孝、東京都港区の本社で

ガンダムプロジェクトで世界を攻める

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

── 新型コロナの経営への影響は。

川口 アミューズメント施設の運営事業はコロナの大きな影響を受けました。一方「巣ごもり」需要で、ゲームやガンプラ(ガンダムのプラモデル)などの売り上げは大きく伸びました。事業のポートフォリオの多様性が発揮できたといえます。売上高、営業利益ともに過去最高を更新しました。(2021年の経営者)

── アニメ「機動戦士ガンダム」関連の商品が好調です。

川口 ガンダム関連の売り上げは過去最高の950億円に達しました。ここ4~5年は右肩上がりです。入社したときからガンダムに携わってきましたが、ここまで人気が続くとは思っていませんでした。ガンダムは特に海外が好調です。プラモデルの海外売上比率は5割を超えました。これまではプラモデルが売れないと考えられてきた北米でも、ハイターゲット(大人層)を中心に人気が広がっています。

── どのようにファン層を拡大しますか。

川口 いろいろな世代のファンがいるので、話題喚起のためにさまざまなアプローチを試みています。横浜市には「動くガンダム」、中国・上海には実物大(高さ約18メートル)のガンダムを展示しています。米ハリウッドで実写化も決定し、公開中の映画「閃光のハサウェイ」も大ヒットしています。

── 「チーフガンダムオフィサー(CGO)」という他社にない役職もあります。

川口 それぞれの事業を横軸で統括する「ガンダムプロジェクト」を今年立ち上げました。その責任者がCGOです。これまではユニット(部門)が独自に事業を展開していた面がありました。これからはガンダムのIP(キャラクター)の価値を最大化するために、グループ全体での取り組みが必要です。2025年度までにガンダム関連の売り上げを1500億円にする目標があります。ゲームやホビーだけではなく、すべて事業が一体となり達成を目指します。

── ガンダム以外で伸びているキャラクターは。

川口 「ドラゴンボール」関連の売り上げが一番大きいです。スマートフォン向けゲームなどが世界的に大ヒットしているためです。「鬼滅の刃」もキャラクターカードが入った菓子が飛ぶように売れました。主人公・竈門炭治郎の武器を再現した刀は、日本おもちゃ大賞で「ヒット・セールス賞」を受賞しました。スピード感を持って商品化できたので、かなりの売り上げを確保できました。

── 新しいキャラクターを生み出さないと将来厳しいのでは。

川口 自社オリジナルのIPを創出することは、長年の課題といえます。新しいIPのアクションロールプレーイングゲーム(RPG)「スカーレットネクサス」は好調です。ハイターゲット向けに、世界展開を念頭に置いて仕掛けた作品です。ゲームやアニメの人気が広がれば、フィギュアなどさまざまな分野での商品展開を仕掛けることができます。

── プラモデルを高額で転売することが問題となっています。

川口 商品を買えない、買いにくい状況が生まれてしまうことは大変不本意です。昨年、生産工場を増床するなどの改善を行い、フル生産している状況です。今後も生産体制を強化し、より多くの商品をお届けできるよう努力します。

「ゲーセン」立て直し

── ゲーム事業はスマートフォン向けが中心ですか。

川口 家庭用も作っていますが、スマホ向けが売り上げ、利益ともに大きな比重を占めています。スマホ向けは利用者に課金しながらゲームを楽しんでもらうビジネスモデルです。無料でも遊べますが、課金して「アイテム」を手に入れることでゲームを有利に進めるようになる仕組みです。主に大人向けで、一定の年齢以下の利用者には無尽蔵に課金ができないように制限しています。

── ゲームセンターは苦戦しています。セガサミーホールディングスは撤退を決めました。

川口 前年は特別損失を117億円計上しました。次につなげるために事業基盤をしっかり見直しをしました。顧客と直接ふれあえる場としてアミューズメント施設は非常に重要です。国内ではしっかりと事業を継続していきます。

── どう差別化しますか。

川口 他の部門との連携がカギになります。東京・池袋には約3000台の「ガシャポン(カプセル玩具)」を置いた施設があり、多くの利用者が集まっています。我々の得意とするIPを前面に出し、ほかの施設とは違った取り組みができれば可能性はあります。

── 海外で重視する地域はありますか。

川口 海外売上比率は2割強です。まだまだ伸ばす余地があり、中国と北米に重点を置いています。ここでしっかり伸ばせるかが次の展開のカギになります。

(構成=神崎修一・編集部)

横顔

Q これまでの仕事でピンチだったことは

A 米アップルと提携して製作したゲーム機「ピピンアットマーク」の営業責任者でした。思うように売れずに大きな損失を出しました。時代が早すぎたのかもしれません。

Q 「好きな本」は

A 歴史関係の本が好きで、山岡荘八の『徳川家康』は面白かったです。

Q 休日の過ごし方

A 飲食店の「名店探し」をしながら散歩をします。


 ■人物略歴

川口勝(かわぐち・まさる)

 1960年生まれ、神奈川県立西湘高校、駒澤大学経済学部卒業、83年バンダイ入社、同社専務取締役トイ事業政策担当、同社社長、バンダイナムコホールディングス副社長などを経て、2021年4月より現職。神奈川県出身、60歳。


事業内容:玩具・模型などの製造販売、ゲームの製作販売、アミューズメント施設の運営など

本社所在地:東京都港区

設立:2005年9月

資本金:100億円

従業員数:9550人(21年3月末、連結)

業績(21年3月期、連結)

 売上高:7409億円

 営業利益:846億円

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