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ポンプ大手、半導体製造装置が好調 浅見正男 荏原製作所社長

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)Photo 武市公孝 東京都大田区の同社本社で。浅見氏に後方にあるのが、1916年に東京市浅草田町ポンプ場(現在の東京都日本堤ポンプ場)から受注した同社製造の大型ポンプ。
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)Photo 武市公孝 東京都大田区の同社本社で。浅見氏に後方にあるのが、1916年に東京市浅草田町ポンプ場(現在の東京都日本堤ポンプ場)から受注した同社製造の大型ポンプ。

ポンプ大手、半導体製造装置が好調

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── 新型コロナウイルス禍の中でも業績好調です。要因は何でしょうか。

浅見 コロナの感染が広がった昨年春時点で、主要3事業のうち一番心配だったのはポンプでした。ビルなどの建築物向け以外に、都市の排水に使うインフラ用、石油・ガスの生産施設で使われる専用ポンプもあります。昨年春に原油価格が急落して、プラント建設の計画の多くが先延ばしになりましたが、既存設備を維持する投資は落ちませんでした。その結果、昨年度(2020年12月期)はポンプや、化学プラントで使われるコンプレッサー(圧縮機)などの「風水力事業」の売上高(日本会計基準)は前年比で落ちましたが、営業利益は増えました。設備の維持管理の強化など従来の収益強化策が功を奏しました。(2021年の経営者)

── 今年度(21年12月期)は営業利益が560億円と過去最高を予想しています。

浅見 ゴミ処理場など「環境事業」は顧客が自治体なので、コロナの影響は受けていません。もう一つの柱の半導体製造装置などの「精密・電子事業」は需要拡大が続いています。顧客である半導体メーカーの増産計画に遅れることなく装置を供給しています。今年度の業績予想のうち売り上げ収益(今年度から国際会計基準)は風水力の3260億円に対して、精密・電子は1910億円と1・7倍ほどの差がありますが、営業利益でみると連結予想560億円のうち風水力が250億円、精密・電子が245億円と同水準です。

── 半導体の市場が拡大し需給が逼迫(ひっぱく)しています。この状況はしばらく続くでしょうか。

浅見 来年(22年)は今年以上に半導体への投資が行われると予想していますが、23年には需要は下がるかもしれません。短期的な需給の波はあるでしょうが、30年に向けては市場は右肩上がりで拡大していくとみています。

── 半導体製造工程で必要になる真空の空間を作るためのドライ真空ポンプと、シリコンウエハーを平らにするためのCMP装置が事業の2本柱です。

浅見 当社が半導体分野に進出したのは1980年代です。当時は油を使って真空を作る油回転ポンプというものが製造工程で使われていましたが、ポンプに使われる油がウエハーを加工する空間に逆流してウエハーの上に降りかかってしまう問題がありました。回路の線幅が太かった頃はまだ良かったのですが、微細化が進むにつれて細かい油滴が問題になりました。そこで、油を使わない真空ポンプを製造していた当社に半導体メーカーから声がかかり、半導体製造用途の真空ポンプを開発するようになりました。

 CMP装置でウエハーを平坦(へいたん)にする技術の難易度を表現すると、JR山手線の内側の面積に相当する敷地を5ミリの精度で平らにすることを求められるレベルです。顧客の半導体メーカーはグローバルで事業展開していますが、当社の強みは世界各地に工場があり、どこの工場でも24時間サポートできる体力と安定感があると認められていることです。CMP装置の世界シェアは、米アプライドマテリアルズ(AMAT)に次いで2位です。

水害から都市を守る

── ポンプはあらゆるところに使われています。どんな役割がありますか。

浅見 日本では4階以上のビルやマンションには必ずポンプが付いており、当社は国内でシェア3割を取っています。ほかに農業のかんがい用や、トンネル内の送風用、大雨が降った際の水害を防ぐ排水用などもあります。東京の地下には「首都圏外郭放水路」という、洪水を防ぐ目的で整備された神殿のような施設があり、そこにも荏原のポンプが使われています。

── ゴミ焼却施設の事業では新しい技術を取り入れて販売する計画だと聞きます。

浅見 AI(人工知能)による画像認識を用いて、焼却炉で燃えやすいもの、そうでないものを仕分けする機能を取り入れました。従来は、燃えやすいもの、燃えにくいものを人間の肉眼で区別して分別していました。遠隔で操作して、人が現場にいなくても作業できるようになります。

── 昨年2月に策定した長期の経営計画で、30年までに売り上げ収益(21年度予想5915億円)を1兆円に引き上げる計画を公表しました。どのように達成しますか。

浅見 精密・電子は30年まで拡大する可能性が高いうえに、風水力事業も市場が小さくなるわけではありません。石油・ガス市場のうち、燃料系は縮小する一方、石油化学系は伸びていくと見ており、専用ポンプやコンプレッサーの売り上げが増えることで、既存事業で8000億~9000億円には届くという想定です。そのうえで、今後注力する水素関連の事業などの新規事業を含めて1兆円を目指します。

(構成=浜田健太郎・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 米国に7年半駐在して、年に40回以上、米国内を出張していました。拙い英語で最初は大変でしたが楽しかったですね。

Q 「私を変えた本」は

A 『なぜ人と組織は変われないのか』(ロバート・キーガンら著、邦訳は英治出版)です。社長就任前のトレーニングでコーチから勧められました。

Q 休日の過ごし方

A 朝から3時間ほどゴルフの打ちっぱなしで練習し、1時間歩き、食事してビールを飲みます。


 ■人物略歴

浅見正男(あさみ・まさお)

 1960年生まれ。東京都立小石川高校、横浜国立大学工学部卒業。86年荏原製作所入社。2010年4月に同社執行役員を経て19年3月から現職。東京都出身。61歳。


事業内容:ポンプ、半導体製造装置などの製造販売、ゴミ焼却場の工事、運営など

本社所在地:東京都大田区

創業:1912年11月

資本金:794億円(2020年12月末)

従業員数:1万7480人(20年12月末、連結)

業績(20年12月期、連結)

 売上高:5237億円

 営業利益:378億7900万円

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