週刊エコノミスト Online2021年の経営者

半導体EUVマスク検査で先行し、高成長を期待=岡林理・レーザーテック社長

    Interviewer 秋本 裕子(本誌編集長) Photo 武市 公孝:神奈川県横浜市の本社で
    Interviewer 秋本 裕子(本誌編集長) Photo 武市 公孝:神奈川県横浜市の本社で

    半導体のマスク検査装置で独走 岡林理 レーザーテック社長

     Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

    ── 主力である半導体のマスク検査装置とはどんな製品ですか。

    岡林 半導体を作る際に、回路パターンをウエハー(集積回路を作る基板)に露光装置を使って転写します。その露光装置の中でフィルムカメラのフィルムに当たるものがフォトマスクです。マスク検査装置はそのフォトマスクに欠陥がないか、あるいはゴミが付着していないかを検査します。半導体の製造工程に欠かせません。(2021年の経営者)

    ── 今のところ最先端のEUV(極端紫外光)のマスク検査装置を製品化している唯一の会社ですが、競合が出てくる可能性は。

    岡林 EUVのマスク検査装置でも、DeepUV(ディープユーブイ)(深紫外光)光源を用いたものとEUV光源を用いたものがあり、当社は両方を手掛けています。実際の露光と同じ環境で検査できるEUV光源を用いたマスク検査装置は当社しか供給していません。

     先行して製品化した分、既に顧客企業からいろいろなフィードバックを受けています。競合製品が出てくる頃には、それをもとにより付加価値の高い装置に仕上げ、他社が簡単に参入できないよう参入障壁を作っていきたいと思っています。

    ── 他社に先行してEUVマスク検査装置を開発できた理由は。

    岡林 もともとNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が出資して作った官民のコンソーシアム(共同企業体)でEUV露光の周辺技術を開発していました。そこには世界中の半導体メーカーや関連メーカーが参加しており、2011年には、当社にEUVのマスクブランクス(フォトマスクの原版)の検査装置を発注してくれました。コンソーシアムの技術を生かして装置を開発し、さらに、顧客の要望を受けてEUVマスク検査装置の開発に乗り出しました。17年9月にはマスクブランクスの検査装置の成果を生かす形で開発に成功しました。

    ── 変動が激しい半導体市場で、検査装置の売り上げは。

    岡林 当社の検査装置は最先端領域向けのものが多いです。需要が旺盛な分、市場の変動を受けにくいという特長があります。当社の売り上げも堅調に伸びています。

    ── 事業の見通しは明るいということですね。

    岡林 EUV露光はまだ始まったばかりです。CPU(中央演算処理装置)に代表される「ロジックデバイス」では現在、回路の線幅が7ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリ)や5ナノの製品の量産でEUV露光が使われていますが、今後は3ナノ、2ナノといったより微細な回路を持つ半導体にも使われるようになるので、対応する検査装置の需要は増えていきます。

     さらに、ロジックだけでなくDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)の製造にもEUV露光が使われるようになりますので、EUV検査装置の市場は広がっていきます。

    ── 生産体制は拡充しますか。

    岡林 当社は生産設備をほとんど持たない「ファブライト」です。基本的には外部の協力会社に生産を委託しています。しかし、その生産装置を作り上げるのは当社のエンジニアなので、近年はエンジニアの採用を積極的に行っています。生産設備を持たない分、人材がそのまま会社の強さになります。半導体業界の技術者は世界的に取り合いになっていますが、当社の最先端の技術開発に魅力ややりがいを感じてくれる人材を採用できています。

    新事業で貢献領域拡大

    ── マスク検査装置以外の事業展開は。

    岡林 この10年、新規事業の種をまいてきました。その一つにSiC(炭化ケイ素)ウエハーの検査装置があります。SiCで作ったパワー半導体は省エネ特性に優れ、例えば電気自動車の航続距離を伸ばすことができます。脱炭素化の流れもあり、SiCウエハー検査装置は今後の成長が期待できます。

    ── 新規事業はEUV関連装置と並ぶ二枚看板になり得ますか。

    岡林 EUV関連装置は売り上げ規模が大きいので、新規事業がそこまで届くのは現状では難しいと思います。しかし、当社の強みを生かせる分野にはビジネスチャンスを見つけ、次の柱として成長させていきたいと思っています。

    ── 時価総額が19年初に比べて足元で20倍超に急上昇しており、株式市場から高く評価されています。今後、株主の期待にどう応えていきますか。

    岡林 当社の強みを発揮できて、世の中に貢献できる製品を提供していきます。具体的には、EUV関連装置のような既存製品の分野を拡大するほか、SiCウエハー検査装置など新しい分野の開拓にも力を入れていきます。その結果、世の中への貢献が大きくなれば、当社の売り上げや利益が伸び、結果的に時価総額や配当額も伸びて、株主にも喜んでもらえるようになると思っています。

    (構成=村田晋一郎・編集部)

    横顔

    Q これまで仕事でピンチだったことは

    A 社長就任1年目に赤字を計上し、2年目も赤字になりそうになったことです。決算締め日の夜11時過ぎに欧州の営業担当から「売り上げが立った」と電話があり、何とか黒字転換できました。

    Q 「感銘を受けた本」は

    A 川村隆氏の『ザ・ラストマン』やベン・ホロウィッツ氏の『ハード・シングス』です。経営者の覚悟を説いています。

    Q 休日の過ごし方は

    A 水泳したり、川沿いを散歩したりしています。


     ■人物略歴

    岡林理(おかばやし・おさむ)

     1958年生まれ、東京学芸大学付属高校卒業、82年早稲田大学理工学部卒業後、横河ヒューレット・パッカードなどを経て、2001年レーザーテック入社。05年米国法人社長、06年営業本部長、08年代表取締役副社長を経て、09年7月代表取締役社長に就任。東京都出身、63歳。


    事業内容:半導体関連装置、FPD関連装置、レーザー顕微鏡関連製品などの開発・製造・販売・サービス

    本社所在地:横浜市

    創業:1960年7月

    資本金:9億3100万円(2021年6月現在)

    従業員数:529人(21年6月現在、連結)

    業績(21年6月期、連結)

     売上高:702億4800万円

     営業利益:260億7400万円

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