2022年大学入試:河合塾、駿台・ベネッセ 共通テスト・全国177国公立大「合格」ボーダーライン 「38点ショック」でも「志望校貫徹」のワケ〈サンデー毎日〉
数ⅠAの平均点は「過去最低」37・96点
「やはり」と言うべきか。2022年度(22年4月入学)大学入学共通テストは難化した。数学ⅠAの平均点は前身の大学入試センター試験も含め過去最低の37・96点に。ただ「38点ショック」でも大切なのは、志を貫くことのようだ。
国公立大の一般選抜志願者は、3年連続の減少が見込まれている。共通テストの志願者減に見られる受験人口の減少に加え、平均点が大幅に下がったからだ。ベネッセコーポレーション学校カンパニー教育情報センター長の谷本祐一郎氏は、こう話す。
「自己採点時の(前年を100とした)国公立大志望指数は、旧七帝大に東京工業大、一橋大、神戸大を加えた難関国立10大学が95、千葉大や横浜国立大、岡山大、熊本大など準難関大が92、それ以外の大学が97です。志望者減は、共通テストの平均点ダウンの影響が大きく、特に準難関大で顕著です」
21年度の共通テストの平均点が高かったことから、22年度は下がるというのが、受験関係者の共通認識だった。それでも「共通テストの予想平均点」の5教科7科目での大幅な平均点ダウンは、予想外だったようだ。駿台教育研究所教育情報事業部長の石原賢一氏は言う。
「平均点の下がり幅は、予想をはるかに超えていました。前年、超高得点だった数学の点数が大幅に下がったためです。理系の受験生にとっては問題文が長く読解力が求められる問題が出たこと、文系は難易度の高さがネックとなり、厳しい結果になりました」
大学入試センターが1月21日に公表した中間集計の平均点は、数ⅠAが19・72点、数ⅡBが16・87点の大幅ダウン。数学以外も、英語と地歴・公民、理科の一部を除き軒並み下がっている。共通テストの難化はトップ層にも影響しており、「難関大志望者も高得点層が減っている」と話すのは、河合塾教育情報部長の亀井俊輔氏だ。
「例年なら旧七帝大クラスを目指す、5教科7科目の得点率が8割以上の受験生は、前年の3分の1強程度しかいません。7割台の受験生も減っていることから、難関国立10大学や医学部でも、ボーダーラインが大きく下がっています」
模試の段階で増えていた難関国立10大学前期の志望者は、平均点ダウンを受けて減少。現段階では、東大など3大学以外は前年を下回っている。それでも5ポイントの減少でとどまっているのは、難関大の中で入れる大学を探して志望しているからだ。駿台の石原氏は言う。
「東大なら理Ⅰより難易度が低い理Ⅱや、前年に志願者が減った文Ⅰの志願者が増えそうです。京大は数学の難化の影響から、共通テストの数学の成績が個別学力検査にカウントされない、総合人間や工の志願者が増えると見ています」
数学の難化から数学のウエートが低い大学(学部)を選ぶ傾向は強く、一橋大・社会なども志望者が増えている。共通テストで基準点をクリアしていれば、2次試験の成績だけで合否が決まる東京工業大や、このクラスの文系学部の中で難易度が最も低い大阪大・外国語も志望者が増えている。
準難関大も模試の段階では堅調に志望者が集まっていたが、谷本氏が指摘する通り減少幅が大きい。これは難易レベルを下げ、確実に合格を目指す受験生が増えているからだ。準難関大クラスの受験生の志望変更で地方国立大は志望者が増えており、レベルが上がり難化するかもしれない。その結果、地方国立大志望者が公立大や私立大に志望変更する「玉突き現象」が起こる可能性がある。
平均点が大幅ダウン 13年が成功のヒント
平均点ダウンは学部の志望動向にも影を落とす。模試の段階で多くの志望者が集まっていた情報系は、人気が上がって難化してきたことから敬遠傾向。医学部(医学科)も志望者が減少している。
「医学部志望者は大きく減っていませんが、歯学部や薬学部に志望変更する受験生の影響が見られます」(河合塾の亀井氏)
医学部志望者の流入もあり、薬学部の志望者が増加。文系では法学系が増えているが、安全志向の影響で、両学部ともに高難易度の大学では志望者が増えていない。
平均点ダウンの影響で安全志向が強まっている。この状況下で入試に臨む受験生に、駿台の石原氏は、こうアドバイスを送る。
「2次試験重視の難関大は、平均点ダウンで共通テストの割合が下がる分、2次の割合が上がるので、逆転の余地が大きくなることを忘れないでください。共通テストのウエートが高い一般的な大学の志望者は、ボーダーラインをしっかりと見ること。今回は50~60点下がっているケースも珍しくないので、『この大学はこのくらい』と決めつけないで、冷静に確認することが重要です」
大幅な平均点ダウンは、センター試験当時の13年度にもあった。5教科7科目の予想平均点は文系が40点、理系が35点ほど下がった。河合塾の亀井氏は、13年度の状況が22年度入試で成功するヒントになると語る。
「13年は安全志向が強まり、私立大の志願者が増え、(国公立大)後期を諦める受験生が増加しました。後期は前期で合格すると受験生が抜けて倍率が下がり、現時点のボーダーラインだけでは測りにくい。出願しないことには始まらないので、最後まで諦めずにしっかり出願してください」
ベネッセの谷本氏もこう話す。
「この年の国公立大入試で成功したのは、自分の立ち位置をしっかり分析して諦めなかった受験生です。勝負は個別試験までの頑張り次第で決まります」
共通テストの難化の影響が色濃く表れている22年度の国公立大入試だが、置かれた状況は誰も同じだ。共通テストの得点が低くても、全国順位は思ったより高いケースも少なくない。「全国177国公立大『合格』ボーダーライン」も参考に最良の出願大学を選択してほしい。