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2022年大学入試:河合塾、駿台、東進、ベネッセ 難関大学科別最終難易度・国公立大編 法と社会を軸に文系が回復〈サンデー毎日〉

「サンデー毎日1月23日号」
「サンデー毎日1月23日号」

 難関と準難関で志望者が増

 2022年度(22年4月入学)の国公立大入試は、難関・準難関大の志望者が増え、学部志望状況を見ると文系の人気が戻ってきた。予想される大学と学部・学科の出願状況について、最新の模試の結果から探ってみた。

 難関国立大を目指す受験生は、自らの志望を貫き通す傾向が強く、大学入学共通テスト初年度の21年度入試でも、旧帝大に東京工業大、一橋大、神戸大を加えた難関国立10大学の出願状況は堅調だった。22年度は、共通テストの実像が分かり、その平均点が予想より高かったこともあり、21年度に増して難関国立10大学全体の志望者が増えている。河合塾教育情報部長の亀井俊輔氏は言う。

「人口減から難関大でも入試が緩和し、チャンスと捉える受験生が増えているのでしょう。ただ、共通テストの平均点が下がると、難関大にこだわりつつもその中で比較的難易度の低い学部・学科に志望変更する受験生が増えるなど、動向が変化するかもしれません」

 21年11月に実施の「駿台・ベネッセ共通テスト模試」によると、前年を100とした時の国公立大全体の志望者指数は110と増えている。この数値をベースに、「難関国立大の志望動向」を見ると、東大と名古屋大以外は、前年並みから増加傾向を示している。駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一氏が、まず志望者減の要因について解説する。

「東大は、無理をせず東京工業大や一橋大を目指す受験生が増えた影響。名古屋大は、関東や近畿の受験生の目が向いていないのでしょう」

 東大で志望者が増えているのは、文Ⅰと文Ⅲのみ。一方、京大は大学全体では前年並みだが、文や法、理、薬など半数以上の学部(学科)で前年を上回っている。

 一方、志望者が最も増えているのは北海道大。全国区の北海道大は、コロナ禍の移動を避けた受験生の影響で21年度は志願者が大きく減ったが、その反動で22年度は大幅に増えそうだ。

 難関国立10大学に続く難易レベルの準難関大の志望者も強気で、千葉大やお茶の水女子大、横浜国立大、金沢大、広島大など、志願者増が見込まれる大学が多い。中でも、出願状況に注意が必要な大学について、河合塾の亀井氏は、こう話す。

「準難関大の中でも、昨年大幅に志願者減となった横浜国立大は反動増が確実です。大阪公立大・工の中期日程は、難関大志望のハイレベルな受験生の出願が見込まれるので要注意です」

 学部志望状況は、私立大と同様に文系の志望者が戻ってきた。特に増えているのは、法と社会だ。駿台の石原氏は言う。

「法と社会ともに背景に資格志向があります。法は公務員志望が増えている影響。一般企業も視野に入れ、卒業後の進路のつぶしがきくこともあります。社会は主に社会福祉が増えているようです」

 難関国立10大学で、法学部の志望者が減っているのは大阪大のみ。東北大は前年並みだが、それ以外は全て志願者が増えそうだ。

 文系学部の志望者が増加傾向の中、2次試験で独自のスピーキングテストを実施することから、東京外国語大の大幅な志願者減が見込まれるなど、コロナ禍で人気が下がった国際関係や外国語の志望者は減少傾向。ただ、東進ハイスクール広報部長の市村秀二氏は、こんな指摘をする。

「今は停滞していても国際化の流れは止まりません。22年度入試で国際関係や外国語の人気は戻っていませんが、コロナ禍の先を見据え、グローバルに活躍したいという意識の高い受験生は少なくないと思います」

 難関国公立大を中心に国際関係や外国語の志望者は、気を引き締めた方がよさそうだ。

 理系学部人気は堅調で、農・水産は志望者の減少が底を打ち、工は前年並みで、理は増加。医療系も、全体として志望者が増加傾向にある。

「資格志向に加え、コロナ禍でニーズが高まる医療従事者として社会貢献できることも医療系人気の要因です。特に薬学の志望者が多く、医学科も堅調です。一方、看護の志望者はやや減少傾向です」(東進の市村氏)

 薬学は、コロナのワクチンや治療薬の開発に触発される受験生が多いことから、難関大が人気。難関国立10大学の薬学部は、全て前年の志望者を上回っている。

 医療系の中で薬学とともに注目される系統について、ベネッセコーポレーション学校カンパニー教育情報センター長の谷本祐一郎氏は、こう話す。

「放射線科を舞台にしたテレビドラマの影響もあり、放射線技術の志望者が増えています。金沢大や名古屋大、岡山大などの医学系学部の放射線技術に関する専攻が人気ですが、それ以外のどの大学でも志望者が増えている状況です」

 共通テストの平均点 前年反動でダウンか

 文理を横断する情報は相変わらず人気が高く、筑波大・情報や千葉大・工学部の総合工学科情報工学コース、横浜市立大・データサイエンスなど、大幅な志願者増が見込まれる大学も少なくない。

 志望者が増加傾向にある難関・準難関国公立大だが、気になるのは、21年度の共通テストの平均点が高かった反動で、22年度の平均点ダウンが見込まれていること。駿台の石原氏は言う。

「難関大は2次試験重視なので、共通テストで目標ラインに足りなくても、2次試験での挽回ラインを冷静に判断してください。むやみにレベルを下げると、みんなが同じことを考えて激戦になることもあります」

 ベネッセの谷本氏も、2次試験まで見据えた出願を勧める。

「21年度の東大入試では、10月の模試でC判定から合格するケースが増えました。浪人が減少し現役生中心の入試となる中、最後まで学力が伸びる現役生にとって、十分にチャンスがある入試状況ということを忘れないでください」

 浪人生も含め、2次試験までの学力の伸びを計算した上で、「国公立大 学科別最終難易度」で合格の可能性を探ってほしい。

 1月11日発売の「サンデー毎日1月23日号」には、「河合塾、駿台、東進、ベネッセ 国公立大学科別最終難易度」を掲載しています。

 他にも「誌上新春ライブ 永六輔、立川談志が目をかけた批判力 テレビNG芸人松元ヒロと岸田政権を笑い倒す」「感染爆発再び!? 飲み薬がコロナ治療をこう変える」「松田聖子と『女の時代』 スーパーアイドルが再び輝くとき 特別寄稿・中森明夫」などの記事も掲載しています。

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