企業のDXを「一緒に」目指す インタビュー・石井大智STANDARD会長
石井大智 STANDARD(スタンダード)代表取締役会長 企業のDXを「一緒に」目指す
人材教育、戦略コンサル、技術支援の3ステップで企業のデジタル変革を支援するのが、AI(人工知能)エンジニアの代表が率いる「STANDARD(スタンダード)」だ。
(聞き手=加藤結花・編集部)
自動車メーカーや製薬企業など約530社のデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援を行ってきました。多くの日本企業はデジタル技術の活用の重要性を認識していますが、肝心のDXの知識や技術が不足しています。そういった企業に、単にツールを販売したり技術を提供するだけでなく、DXに関するリテラシーを身に付けてもらう「教育」からスタートし、業務改善にとどまらない新しい価値や利益をもたらすDXの新規事業の開発を一緒に目指すというのが私たちのスタンスです。(挑戦者2022)
相談を受けるのは大手企業のDX推進部や経営企画部、新規事業担当部などですが、ほとんどが「DXの定義が分からず、何から手をつけてよいか分からない」という状態です。なかには、「コンサル会社にDXテーマ選定を依頼したが、自社に合わずプロジェクトが進まなかった」というケースもあります。
当社のDXリテラシー講座はオンラインで受講でき、DXに関する知識や意識を高めることができます。また、受講修了者にDXで取り組むべきアイデアの提出をお願いすることで、回答からその社特有の事情やニーズを把握。有望なアイデアを抽出します。その後は、投資すべき案件を絞り込み、実装に向けたコンサルティング、技術支援などを提案します。DX教育から新規事業開発・イノベーション創出まで一気通貫で行うDXコンサルが強みです。
技術支援では、AI・機械学習を学ぶ学生主体のコミュニティー「東大人工知能開発団体HAIT(ハイト)Lab」を運営し、高精度なAIモデルの構築を支援することが可能です。ハイトは私が早稲田大学の1年生だった2016年に友人と立ち上げた団体で、これまでに累計1100人程度の若手AIエンジニアが所属してきました。現在も200~300人のエンジニアが所属していて、当社の案件ごとに最適なメンバーに参画してもらっています。AIに詳しい人材が引っ張りだこの現状で、多くの優秀なエンジニアとの太いパイプがあることが当社の大きな強みになっています。
自作のAI教材が話題に
数人で作ったハイトは、1年でエンジニアが60人くらいまで増えました。独学とインターンによる「武者修行」が活動の基本で、机上の勉強ではなく現場を通して技術を高めていきました。ただし、ストイックに活動していたこともあり脱落してしまう人がいたため、AIの知識を学べる初学者向けの教材を自作しました。
インターン先でこの教材で学んだメンバーが優秀だと話題になり、企業から教材を売ってほしいという話になりました。その教材を販売するために17年8月、当社を起業したのが設立の経緯です。当社は設立初年度に営業黒字を達成するなど、恵まれた環境にあると思います。
性格は飽き性で、子どもの頃は親や先生からよく怒られました。同じことの繰り返しが嫌いで、危機意識さえ感じますが、新しいものが好きな性格は、今の仕事に向いているのかもしれません。
企業概要
事業内容:法人向けのデジタルトランスフォーメーション支援事業
本社所在地:東京都千代田区
設立:2017年8月
資本金:1000万円
従業員数:78人(業務委託契約を含む)
■人物略歴
いしい・だいち
1995年千葉県生まれ。2016年、東京大学の学生メンバーとともにAI(人工知能)・機械学習を学ぶ東大人工知能開発団体「HAIT(ハイト)」を設立。ハイトの学生AIエンジニアがインターン先の大手企業などから高い評価を受けたことなどをきっかけに17年8月、STANDARDを設立。早稲田大学創造理工学部在学中。26歳。