服を土に還して野菜に戻す 究極の循環システムで業界の廃棄問題に挑む=園部皓志・クレサヴァ代表インタビュー
園部皓志 クレサヴァ代表 「土に還る服」で野菜も作る
世界では年間に約3000億着の衣類が廃棄されている。この問題を解決するために、生分解性に優れた和紙の繊維を使い、「衣」から「食」への循環システムを作ろうとしている。
(聞き手=白鳥達哉・編集部)
独自開発の和紙100%繊維を使い、自社ブランド「aloof home」で衣から食の還元が可能な服を作って販売しています。(挑戦者2021)
和紙は生分解性に非常に優れており、土の中にいる微生物が好んで分解する特性を持っています。同じ天然素材であるコットン100%の服を土の中に埋めた場合、Tシャツとロングパンツが分解されるまで半年くらいかかりますが、和紙だと1.5~3カ月程度で分解が可能になります。
世界では年間に約3000億着、重さにして9200万トンの衣類が廃棄されており、日本だけでも100万トンに上ります。この問題を解決できるような手法を考え、思いついたのが衣類を微生物で分解して土に還すことでした。
販売・古着回収のシステムにも工夫を取り入れています。購入時に「何日着るか」を決めてもらい、それに応じて定価から割引を行います。1年間を基準に120日、180日、365日の三つのプランがあり、それぞれ65%、50%、10%割り引かれます。さらに購入時と回収時に独自のポイントに還元し、そのポイントを使って、当社でセレクトした自然に優しい雑貨と交換が可能です。ポイントも長く着るほど多く還元されます。
現在は、私たちのEC(電子商取引)サイトと、都内の南青山の店舗で販売しています。
また、当社が所有している京都府南丹市美山町の農園で野菜を育てています。美山は、自然が豊かで水もきれい、土壌には豊富な微生物がいて、そこで育てた野菜もおいしいのが特徴です。回収した古着は農園の土で分解し、野菜に形を変えて、また消費者の元に戻す。これが私の目指す循環の形です。
大量生産・大量消費に疑問
起業を意識したのは、高校3年生の頃、この先10年間の計画を練った際です。ファッションデザイナーになるという目標があったのですが、一方で10年後もその立場を続けているとも思えなかった。そこで28歳までに、自分が経営する会社を作るという目標を掲げました。その後、ファーストリテイリング(ユニクロ)で、デザインや生地の開発などを担当していたのですが、その頃から「大量生産・大量消費」のモデルに疑問を覚えるようになりました。そこで立ち上げたのがいまの会社です。
創業仲間にはインテリアデザイナーや1級建築士など、さまざまな立場から意見を出せる人間がそろっていました。そこで、企業のサステナブル(持続可能)事業のコンサルティングやプロデュースを行いながら、開発資金を捻出して足場を整えていきました。南青山の店舗では、服の販売だけでなく、農園で収穫した野菜を実際に味わってもらうこともできるようになっています。
現在、ファッションの廃棄問題を解決するために、衣類を土に還すだけではなく肥料として使えるようにするためのコンポストマシン(ゴミ処理機)を協力企業とともに開発しています。他のアパレル企業が販売している衣類も我々が回収し、それを肥料にしてゴミをなくそうという試みです。
また、この他にもホテル業界への参入や、和紙繊維を使った中綿開発なども計画しており、2025年のIPO(新規株式公開)を目標に、これらの事業を進めていきます。
企業概要
事業内容:和紙由来の洋服製品の開発・販売、サステナブル事業のプロデュース・コンサルティング
本社所在地:東京都港区
設立:2017年3月
資本金:4800万円
従業員数:16人
■人物略歴
そのべ・ひろし
1990年東京都生まれ。英ロンドン芸術大学ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション卒業。E.V.I inc、ファーストリテイリングを経て、17年クレサヴァを設立。30歳。