教養・歴史アートな時間

沖縄本土復帰から半世紀 よみがえる不屈の魂=濱田元子

阪本正邦撮影
阪本正邦撮影

舞台 劇団文化座「命(ぬち)どぅ宝」 沖縄本土復帰から半世紀 よみがえる不屈の魂=濱田元子

 今年は沖縄が日本本土に復帰して50年となる。

 太平洋戦争末期の沖縄戦では、地上戦の戦場となり、県民の4人に1人が亡くなったとも言われる。戦後も27年間にわたって米軍の統治下に置かれた。

 その沖縄で、戦後復興と祖国復帰のために闘った阿波根昌鴻(あはごんしょうこう)(1901~2002年)と瀬長亀次郎(せながかめじろう)(1907~2001年)。この「命(ぬち)どぅ宝」(杉浦久幸作、鵜山仁演出)は50~60年代の沖縄を舞台に、2人を軸にして民衆の思いをつづっていくドラマだ。

 伊江島で農業を営んでいた阿波根昌鴻は、いわゆる「銃剣とブルドーザー」と呼ばれた米軍による土地強制収用に抵抗。非暴力主義を貫き、不当性を訴える活動は、後の「島ぐるみ闘争」へとつながっていく。

 瀬長亀次郎は沖縄人民党の書記長として本土復帰運動を主導。その不屈の闘いは、米政府から恐れられ、投獄や被選挙権はく奪の憂き目に遭いながらも政治活動を続けた。

 米軍基地から朝鮮戦争、またベトナム戦争の戦場へと飛び立っていく爆撃機の轟音(ごうおん)が響く。そんな状況下で、「沖縄の90万市民が声をそろえて叫んだならば、その声は太平洋の荒波を超えて、ワシントン政府を動かすことができます」と訴える亀次郎、「剣を持つ者は剣にて亡ぶと、叫び続けることが沖縄の闘いなんです」という昌鴻の言葉が胸をえぐる。

 今年創立80年の文化座は、復帰前の56年「ちぎられた縄」(火野葦平作)に始まり、多くの沖縄関連作品を上演してきた。5年前には、代表の佐々木愛の思いから本作を創作初演した。

 昌鴻役の白幡大介と共に、初演に続いて亀次郎役をつとめる藤原章寛は、演じるにあたって沖縄を訪ね、本を読み、歴史や亀次郎のことを調べたという。役作りでも支えになったのが「ムシルヌ アヤヌ トゥーイ」という言葉だ。「むしろのあやの通り、真っすぐに生きなさいという意味らしいです。亀次郎さんはお母さんに言われた言葉をずっと心に留めていた。正義感もそうだし、真っすぐに生きなくちゃいけないということで、米軍に対してもそれを貫いたんだと思います」。

 復帰から半世紀たったが、全国の米軍専用施設の約7割が集中する。だが、沖縄の若い世代は亀次郎のことを知らない人もいるという。「また今回できるということで、若い人たちにも見てほしいですし、歴史を知ることが大事だと思います。芝居がその一助になれば。当時の沖縄の人たちがどうやって苦難を乗り越えようとしたのか、その感情や思いを伝えていきたいです」。

(濱田元子・毎日新聞論説室兼学芸部)

日時 1月27日(木)~30日(日)(26日の東京公演は中止)

会場 亀戸文化センター(東京都江東区亀戸2-19-1 カメリアプラザ3階)

料金 一般5500円、25歳以下4000円、高校生以下3000円

問い合わせ 劇団文化座03ー3828ー2216(日・祝日のぞく 10~18時)

※沖縄公演あり。2月10・11日に那覇・琉球新報ホール、同13日に名護市民会館大ホール


 新型コロナウイルスの影響で、映画や舞台の延期、中止が相次いでいます。本欄はいずれも事前情報に基づくもので、本誌発売時に変更になっている可能性があることをご了承ください。

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