「トイレにナプキン」が当たり前の社会にしたい! 小村大一・オイテル代表の起業のきっかけとは
小村大一 オイテル代表取締役 「生理の貧困」をビジネスで解決
生理用品の無料配布サービスを展開するオイテル。ビジネスを通じ、女性特有の健康課題の解決を目指している。
(聞き手=斎藤信世・編集部)
企業や学校、商業施設などの女性用トイレで、生理用ナプキンを無料で提供するサービス「OiTr(オイテル)」を展開しています。(挑戦者2022)
個室内に設置された専用機器に、オイテルの無料アプリをダウンロードしたスマートフォンを近づけることでナプキンを1枚取り出せる仕組みです。1人につき2時間に1枚受け取りが可能で、25日間で7枚まで利用可能となっています。
専用機器の画面で広告を流すことで企業から広告費をもらい、それをナプキンや装置などの維持費としています。個室トイレを利用している際は手持ち無沙汰になるので、広告との相性が良いんです。実際に利用した人からは、「急に生理が来た際に利用し、便利だった」「経済的負担が減るので助かる」という声が寄せられています。
一方、女性用トイレに導入した企業側からは、CSR(企業の社会的責任)の一環として採用したとの声も聞かれます。現在までに、イオンモールや三井ショッピングパークなどの商業施設のほか、自治体や大学など65カ所で約1000台を導入しました。今後は、2025年度までに全国で2万5000台の設置を目指しています。
「トイレにナプキン」当たり前に
高校ではカナダに留学し、帰国後は大学受験も考えましたが、そのままアパレル企業で働き、高校は中退しました。その後、20歳の時にファッション関係の会社を起業。アパレルは女性が多い業界なので、生理が女性にとって大きな負担になっていることをこの頃に知りました。
オイテルは、仕事を通じて知り合った飯崎俊彦COO(最高執行責任者)などと男女5人で立ち上げました。「社会問題をビジネスで解決する」というミッションを掲げ、さまざまな事業内容を模索しました。ある時、「トイレにはトイレットペーパーは常備されているのに、なぜ生理用ナプキンは置いていないのだろう」という疑問が湧いたのです。それがオイテル誕生のきっかけでした。
OiTrは「ワン・イン・ザ・レストルーム」の頭文字で、「トイレにあるべき大切な一つ」という意味が込められています。トイレットペーパー同様に、どこのトイレにも当たり前にナプキンが置いてある世の中が早く実現するといいなと思っています。我々のサービスも、現在はスマホを持っていないと利用できない仕組みなので、今後はスマホを持たない人でも使える仕様に改善していく方針です。
コロナ禍で、生理用品を購入できない「生理の貧困」が社会問題化したこともあり、最近では自治体がナプキンを無償提供する動きも増えています。オイテルとしては今後も、ジェンダーギャップ不均等の軽減を目指し、ビジネスを通じた解決策を提供していきます。
企業概要
事業内容:生理用ナプキンを無料で提供するサービス「OiTr」などのウエルネス事業
本社所在地:東京都港区
設立:2016年11月
資本金:8100万円
従業員数:8人
■人物略歴
おむら・たいち
1986年東京都生まれ。高校在学中からアパレル企業で働き、その後ファッション関係の会社を起業。「ビジネスで社会問題を解決したい」という思いから、2016年にオイテルを立ち上げた。35歳。