鈴木啓太 AuB代表取締役 健康は腸内細菌の管理から
浦和レッズ一筋の元プロサッカー選手が、経験を生かして、腸内細菌から人々の健康を追求する。
(聞き手=和田肇・編集部)
主にアスリートの腸内細菌リサーチとそれに関連したサプリメント(商品名AuB BASE、単品購入税込み5918円)やプロテイン(商品名AuB MAKE、同8629円)のオンライン販売を行っています。それらの商品には、酪酸菌を中心に約30種類の有用な菌を配合しており、これまで累計で1万個以上を売り上げました。また、腸内細菌の解析事業も行っています。(挑戦者2022)
私たちはオリンピック金メダリストやプロ野球選手、プロサッカー選手など33種の競技のトップアスリート約750人から、1700以上の検体(便)を採取していて、大学などと協力して、腸内細菌の集団(腸内フローラ)を解析しています。その結果から、ヒトの腸内の健康度合いは酪酸菌の多さと菌の多様性(種類の豊富さ)が重要だと考えています。新たな腸内細菌(ビフィズス菌の一種)も発見しました。2020年からは京セラと共同で、便の臭気から腸内環境の傾向を予測するシステムの研究も始めています。
私の母は調理師をしていて、子どもの頃から母に「腸が大切」と言われてきました。それでおなかに良いといわれる食事を多く取ってきた記憶があります。幼稚園からサッカーを始めて、小学校、中学、高校と続ける中で、それほど強く意識していたわけではありませんが、腸は大事という気持ちを常に持っていました。
スポーツ選手というと、関節の故障などのニュースが多く見られますが、私のプロ選手としての経験からすると、おなかのコンディションを維持することはすごく大事です。例えば、04年3月にアラブ首長国連邦で行われたアテネ五輪サッカーアジア最終予選では、自分は大丈夫でしたが、日本代表選手23人中18人が試合直前まで下痢で苦しむという状況でした。
昔は腸を強くすることを意識したスポーツの指導など、ほとんどなかったと思います。筋力を強くするとかが中心で、スポーツを本格的にやっている人が腸を意識することはほとんどない。ようやく最近になってからですね。腸の大切さも少し意識されてきた感じがします。でもまだまだだと思います。
腸の管理でパフォーマンス向上
プロのサッカー選手になってからも、常におなかのコンディションを意識していたので、アスリートが腸内環境を意識できれば、コンディションアップにつながると考えていました。そして、このことは一般の人の健康にも寄与できると思ったのが、この会社を立ち上げた契機です。まずはアスリートの腸内環境を研究したいと思い、知り合いの選手に検体の提供をお願いしてみました。その選手にしてみれば「えっ」という感じですよね。最初はそんな感じでしたが、次第にたくさんの検体が集まり、大学とも共同研究するようになりました。
しかし、4年ぐらいそんなことをしているうちに、自己資金と投資家から集めて設立した会社のお金が底を突きかけてきました。それで19年9月に、なんとか大正製薬、三菱UFJキャピタル、個人投資家の皆さんの協力で約3億円を調達し、今までの研究成果を注ぎ込んだサプリメントの開発・販売にこぎつけました。資金調達では、これまで100件以上は巡ったと思います。今後はサプリメントだけでなく、日常の食卓に並ぶような食品分野にも製品を広げていきたいですね。
企業概要
事業内容:腸内細菌関連の食品販売、腸内細菌解析、コンディショニングサポート
本社所在地:東京都中央区
設立:2015年10月
資本金:4億1348万円
従業員数:9人
■人物略歴
すずき・けいた
1981年静岡県生まれ。幼稚園からサッカーを始め、全日本少年サッカー大会準優勝。全国中学校サッカー大会優勝。2000年に東海大翔洋高校卒業後、Jリーグ浦和レッドダイヤモンズに入団。日本代表なども務める。15年現役引退。同年AuBを設立。40歳。