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国際・政治 東奔政走

自民・公明・国民民主の連携進める岸田首相 安倍・菅氏と維新は「反岸田ライン」で対抗か=人羅格

蜜月をアピールする国民民主党の玉木雄一郎代表(左)と岸田文雄首相
蜜月をアピールする国民民主党の玉木雄一郎代表(左)と岸田文雄首相

「自公国」路線進める首相 反岸田ライン形成の動きも=人羅格

 夏の参院選が近づく中、後半国会の焦点はウクライナ情勢への対応と経済対策に移っている。岸田政権が野党・国民民主党を抱き込み「自公国」路線が定着する一方で、さきの衆院選で旋風を起こした日本維新の会の勢いに、かげりが生じつつある。

維新の勢いにかげり

 各党とも、一地方選を超えた関心を寄せた審判だった。

 3月27日投開票された兵庫県西宮市長選は、現職の無所属、石井登志郎氏(50)が再選され、日本維新の会が公認した元県議らを下した。

 大阪で無敵状態の維新が公認候補を擁立し、勢力拡大を図る試金石とみられていた。石井氏には、自民県連や立憲民主党議員らが実質支援に動いた。芦屋、尼崎、宝塚市長がそろい踏みで応援するなど、維新への警戒感を浮き彫りにした。一方、維新も吉村洋文大阪府知事がテコ入れするなど政党色を前面に出し激戦模様だった。

 だが、フタを開けると4万票近い大差がついた。

 昨年の衆院選で躍進した維新は参院選で改選6議席の倍増や、比例代表で立憲民主党を上回ることなど強気な目標を掲げる。大阪地盤から「全国区」政党への飛躍を狙う。各種世論調査の政党支持率はおおむね立憲を上回っており、過大な目標ではなかろう。

 だが、勢いには頭打ち感がある。毎日新聞の3月世論調査で維新の支持率は12%で前回(2月)比4ポイント下落した。NHK調査では4・5%で昨年12月の7・3%から3ポイント近く下がっている。そうした中での西宮市長選だった。

 国会も、維新の戦略に微妙な誤算が生じている。是々非々路線で与党に影響力を行使する役割が、国民民主党に奪われている。

 2022年度本予算に賛成した国民民主の対応は、野党放棄宣言に等しい。原油高対策を巡る自民、公明、国民民主3党による協議は「自公国」路線の出現を印象づけている。

 国会開会中に野党が与党に急接近した例は過去にもあったが、たいていは連立参加に向かっていた。国民民主の場合「野党」を強調しつつ、本予算賛成で与野党の垣根を越えるという使い分けが分かりにくさを生んでいる。

旧「自公民」と重なる

 本予算賛成にまでは至っていないが、あえて類似例を挙げると、1970~90年代の自民、公明、旧民社3党による「自公民路線」かもしれない。公明、旧民社は野党だったが、国会で自民と気脈を通じていた。

 90年、自衛隊の海外派遣に道を開く国連平和維持活動(PKO)協力に向けた「3党合意」は、これを具現化した。当時の小沢一郎・自民党幹事長、市川雄一・公明党書記長、米沢隆・旧民社党書記長の結束は特殊なものがあり、自民党分裂による非自民の細川護熙政権誕生(93年)、旧新進党結成(94年)と政界再編にまで連動していく。

 旧民社党の支持団体は国民民主と同じ、同盟系労組だ。「連合」はいま芳野友子会長の下、政権への協調路線を鮮明にしている。「自公国」とかつての「自公民」には共通の底流がある。

「自民党入りが玉木雄一郎・国民民主党代表のゴールではないか」との観測も政界にくすぶる。玉木氏と、首相の率いる自民党岸田派(宏池会)が近い関係にあるためだ。

 玉木氏は香川県出身で、財務省OB。同郷の財務省(旧大蔵省)先輩で、宏池会の領袖(りょうしゅう)だった故・大平正芳元首相を政治の師と仰ぐ。衆院香川2区に自民の現職議員がおり、野党から政界入りした。「大平氏」は首相と玉木氏をつなぐかすがいである。

 首相にとって、国民民主の接近は渡りに舟だ。同党と事前調整を済ませておけば、野党軽視批判をかわすことができる。

 一方で、維新は「自公国」路線に反発し、政権との距離を広げている。原油高対策でガソリン税率を一時的に引き下げる「トリガー条項」発動を巡り玉木氏は当初、維新と連携を模索した。それが頭越しに、与党に急接近してしまった。国会で改革派をアピールしつつ、改憲や安全保障問題で与党に影響力を行使する維新優位の構図はなかなか出現しない。

 首相にとって、維新との関係は微妙である。是々非々路線の維新が参院選で野党票を分散させること自体は、好都合だろう。

 しかし、「1人区」で立憲など野党の候補調整は遅れており、現時点で与党を脅かす勢いは感じられない。むしろ「首相がダメージを受けるのは保守票が大きく維新に流れ、自民の議席を食う場合だ」と岸田派議員は警戒する。

 そもそも競争重視・タカ派の維新の路線は、分配重視・ハト派志向の岸田政権とソリが合いにくい。自公国路線を巡る確執は、それを浮き彫りにしたといえる。

「核」を背景にしたロシアの恫喝(どうかつ)を巡り安倍晋三元首相が「核共有」の検討論議を提起したことに維新はいち早く同調した。菅義偉前首相とも維新は関係が深い。

 首相は自公国路線に加え、自民党内で旧宏池会勢力を再結集させる「大宏池会構想」を探っている。首相と距離を広げる安倍氏、菅氏、維新による「反岸田ライン」が形成されれば、政界に新たなミシン目が入ることになる。

(人羅格・毎日新聞論説委員)

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