経済・企業挑戦者2022

高重正彦 RoomClip代表 「住生活」の創造性を応援する

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 実際に人が住んでいる住空間の写真を集めたソーシャルプラットフォームが、女性を中心に人気を集めている。

(聞き手=斎藤信世・編集部)

 ユーザーが投稿する「住生活の実例写真」を集めたソーシャルプラットフォーム「RoomClip(ルームクリップ)」を運営しています。サービスの特徴は、利用者が自宅の写真を投稿し、嗜好(しこう)が似ている利用者同士でつながれる点です。自宅でどんな物を使っていて、どんな家具の配置をしているかなどを写真で発信・閲覧できるサービスです。これまでに500万枚ほどの実際に人が住んでいる家の写真が集まりました。(挑戦者2022)

 利用者の大半は、引っ越しや模様替えの際に、「他者の住まいはどうなっているのだろう」と、インスピレーションを得るために使っているようです。今では月間の利用者は600万人に上ります。その8割が女性で、一番浸透しているのは30代の女性ですね。

「人と人、人と企業がつながる住生活の新しい産業と文化を創っていく」
「人と人、人と企業がつながる住生活の新しい産業と文化を創っていく」

 最近では企業との連携も深めています。利用者のデータ履歴が70億件ほど集まっているので、住生活領域の企業約300社がマーケティングの用途でルームクリップに参加してくれています。2021年3月からは、メーカーやブランドがルームクリップ上で家具や家電、日用品などを利用者に直接販売できる「ルームクリップショッピング」も開始しました。

大震災をきっかけに

 起業したのは11年の東日本大震災がきっかけです。

 実家が福島県のいわき市で、原発からは約50キロメートルの距離にありました。幸いなことに、家屋が損傷するなどの被害はありませんでしたが、「このままここで生活を続けるのは大変だよね」ということになり、同年の夏に実家が引っ越しをしました。

 人生で一番長い時間を過ごした実家がなくなってしまい、「今後新しく知り合う人には、自分が育った空間を伝えることができないんだな」と、さみしさを感じました。

 一方で、5年後、10年後には、「家」という場所における人の営みに、さまざまな人がネットを通じてアクセスできる世界が来ると思いました。その着想がルームクリップの基になっています。

 大学ではネットワークサイエンスを研究しました。企業が持っているSNSなどソーシャルメディアのデータを借りて、特定の人と人がつながる確率をシミュレーションしたりしていました。

 大学生の時、趣味や関心ごとにユーザーが集うSNS「mixi(ミクシィ)」が人気になりましたが、私自身はSNSが苦手でした。趣味嗜好が似ている人同士が集まり所属意識を持つようになると、世の中が排他的になっていくのではないかと思いました。

「人と人のつながり方ってそんなに単純なのかな」と疑問を持ちました。その時に興味を持ったネットワークサイエンスという研究分野が、今の仕事につながっています。

 当社は今後、人と人、人と企業がつながる住生活の新しい産業と文化を創っていきたいと考えています。20年代中には、住生活産業と文化を築くプラットフォーム上で、年間1000億円ほどを流通させるのが目標ですね。


企業概要

事業内容:住生活領域に特化したソーシャルプラットフォームの開発・運営

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2011年11月

資本金:1億円

従業員数:80人


 ■人物略歴

たかしげ・まさひこ

 1983年福島県いわき市生まれ。2007年に東京大学工学部を卒業し、09年に同大学院工学系研究科を修了。11年11月にTunnel(現ルームクリップ)を設立。38歳。

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