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2023年中学入試:266学習塾アンケート 首都圏オススメ私立中学ランキング エキスパート「推す」学校は

「サンデー毎日10月9日増大号」表紙
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 中学入試の本格的な志望校選びの時期だ。大学合格実績や偏差値、通学時間などを考えるとなかなか決められないもの。そんな時に頼りにしたいのがエキスパートの意見だ。学習塾の塾長・教室長が勧める中高一貫校はどこか。

 首都圏の中学受験の志願者は8年連続で増加している。首都圏中学模試センターの集計では、2022年入試の受験者数は約5万1100人で、前年より約1050人増加した。受験率も16.9%から17.3%にアップしている。

 私立中人気は来年も続くのだろうか。本誌と大学通信は首都圏の学習塾の塾長・教室長に緊急アンケートを実施し、266学習塾から回答を得た。

 それを順に見ていこう。まずは来年入試の志願者数について聞いた。今年と比べて来年は「少し増える」が最も多くて61.7%、次が「変わらない」で25.2%、「大きく増える」が4.1%だった。「今年以上」という回答が9割を超えた。来年も中高一貫校の人気は引き続き高いと見られており、入試が厳しくなりそうだ。

 私立中人気の理由についても聞いた。トップは「私立の面倒見の良さ」で59.4%、次が「公立教育への不信」と「併設大学があること」で51.1%、「私立の施設・設備の優位性」45.1%、「大学合格実績が公立に勝っていること」44.0%の順だった。公立と比較して私立教育への信頼が高くなっている。コロナ禍で一斉休校となった時、私立校はいち早く対応して勉強を再開した。しかし、公立校は対応の遅れが目立ち、不安を感じる保護者が多かった。それが現在の中学入試人気につながっている。

 さらに、その中で項目別に学校を選んでもらった。5校連記で記してもらい、最初の一貫校を5ポイント、次を4ポイント……として集計した。

 まずは「オンライン授業で生徒・保護者から高評価を得た」を見ていこう。トップは青稜、次いで広尾学園、常総学院、駒込の順となった。いずれもICT(情報通信技術)教育に力を入れている学校だ。青稜の募集広報部部長の伊東充教諭はこう話す。「新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で一斉休校になった直後から、オンライン授業を取り入れて勉強を続けてきました。今は、対面授業を実施していますが、オンライン授業を望む生徒には、別撮りしたオンライン専用の授業で指導し、2種類の授業を併用しています。生徒には1人1台のタブレットを導入して、普段から学習アプリを活用した指導も行っています」

「面倒見が良い」を見ていこう。トップは13年連続で京華だ。2位は常総学院、3位は土浦日本大中教と帝京大、5位は国府台女子学院と駒込だった。京華は120年以上の伝統がある男子校で元々、面倒見の良さでは定評がある。学習塾の評価を見ても「生徒一人ひとりの学力に応じたフォロー体制を整えている」「先生と生徒の距離感が近く、生徒に対する先生の熱意を強く感じる」など。アットホームな校風の中、補習授業やチューター制度の導入などできめ細かく面倒を見ている。帝京大は、少人数教育で担当教員も多く、生徒に目が届く教育を実施。夏期講習も全て学校の教員が準備して行っている。

「生徒や保護者の入学後の満足度が高い」のトップも京華だ。2位が市川、3位が聖光学院、4位が常総学院、5位が渋谷教育学園幕張と続く。トップ上位校から中堅校まで幅広く学校が選ばれているのが特徴だ。安田教育研究所の安田理(おさむ)代表はこう見る。「表に多いのは、穏やかで生徒が自由にのびのび過ごしている校風の学校です。学力別のコース分けなどで、勉強にプレッシャーがかかるタイプの学校ではありません。生徒全員が同じように学ぶことで一体感が生まれ、団結力が強くなる雰囲気がある学校です」

「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い」のトップは常総学院だ。昨年までトップが続いていた京華は2位で、今年は常総学院が逆転した。3位は駒込、4位は横浜隼人、5位は昌平だった。いずれも近年合格実績が伸びている学校だ。

志望校選びで保護者 大学合格実績を重視

 常総学院の今春の大学合格実績を見ると、東大2人、東北大2人、茨城大26人、筑波大11人、早稲田大10人、慶應義塾大5人、東京理科大10人など。駒込は今春の実績が東大1人、北大2人、東工大1人、早稲田大16人、慶應義塾大6人、東京理科大16人、明治大23人など。10年前は早稲田大7人、慶應義塾大1人、東京理科大9人、明治大6人だったので伸びていることがわかる。また、安田さんは「順天や安田学園、佼成学園、横浜隼人など、堅実に伸びている学校が選ばれている」と話す。

 次に「最近、大学合格実績が伸びていると思われる」を見てみよう。トップは広尾学園、2位は大宮開成、3位は本郷、4位は東京都市大等々力と東京都市大付だった。広尾学園は国内難関大だけでなく、海外大の合格実績も伸ばしている。大宮開成と東京都市大等々力は、10年前と比較して難関大合格者の増加率が高い。21年から高校募集を停止して完全中高一貫校のカリキュラムになった本郷も期待が高い学校だ。

 東京都市大付は、今春の合格者が昨年と比較して東大が7人→12人、京大が3人→4人、東工大が4人→7人、一橋大が5人→7人などで、難関国立大の合格者が増えた。6位の洗足学園も今春東大に20人が合格した。

「グローバル教育に力を入れている」だ。トップは八雲学園、2位は広尾学園、3位は三田国際学園、4位は土浦日本大中教、5位は郁文館だった。英語教育や国際理解教育に力を入れている学校が多い。しかし20年度以降、コロナ禍で海外研修を実施できなくなっていた。八雲学園の横山孝治副校長がこのように話す。

「今年の夏休みに、3年ぶりに米国の八雲学園の研修センターで海外研修を実施し、高2と高1の全員が参加しました。本来は中3の2月に実施している研修です。ようやく米国へ行くことができて、生徒たちは大きな感動体験を重ねたようです。今後は状況を見ながら、今までと同様の海外研修を実施していく予定です」

「理数教育に力を入れている」だ。トップは芝浦工業大柏、2位は広尾学園、3位は豊島岡女子学園、4位は宝仙学園(理数インター)、5位は芝浦工業大付だった。安田さんが話す。

「芝浦工業大柏にはグローバル・サイエンスクラス、広尾学園には医進・サイエンスコースがあります。このような名称のコースは何を学ぶかはっきり伝わり、注目が集まりやすいですね」

 また、昨年は女子校が豊島岡女子学園と鷗友学園女子の2校のみだったが、今年は山脇学園と文京学院大女子もランクインし4校に増えた。山脇学園には本格的な実験装置などがそろった施設のサイエンスアイランドがあり、中1から実験や観察の探究授業が行われている。文京学院大女子はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の実績から開発された科学探究プログラムを実践している。男女に関係なく理系進学志望者が増える傾向にあり、今後も理数教育に力を入れる学校は増えそうだ。

「保護者に人気がある」のトップは市川だ。2位は茗溪学園と渋谷教育学園幕張、4位は中央大付、5位は法政大第二だった。市川は自主的で能動的な学びを重視し、アカデミックな教養教育も盛んだ。「生徒が元気で、自分がやりたいことをのびのびと実践している」と塾関係者は言う。

 聖光学院や海城、女子学院など上位進学校の他に、早慶やMARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の系列校を中心に大学付属校が10校も見られるのも特徴だ。

「元々、中学入試では大学付属校の人気が高くなっています。保護者にしてみれば、中学入試で経験した苦労を、この先何回も繰り返したくないというのが本音かもしれません」と安田さん。だが、高人気から付属校が難化して入りにくくなっている。そのため、最近は進学校を選択する保護者も増えた。以前のように志望校を大学付属校のみ、進学校のみと決めるのではなく、両方を選択肢に加える保護者が増えているという。

「生徒や保護者に勧めたい」のトップは常総学院、2位は京華、3位は駒込、4位は城北、5位はトキワ松学園だった。以前は、上位難関校が多く見られたが、最近は面倒見の良い中堅校が増えている。塾の先生がいろいろな学校に注目しているからだろう。

 次に志望校選びで重視している項目を聞いたものだ。重視しているのは、「大学合格(進学)実績(付属校を含む)」で85.3%、次いで「通学の交通の便」65.0%、「偏差値」59.4%だ。以下は「教育方針」「校風」「塾の先生の意見」「社会的イメージ・ブランド力」「立地環境」の順となった。さらに保護者が最も重視する項目でも、トップは「大学合格実績」だった。進学校であれ大学付属校であれ、どの学校に進学しても、将来の進学先は気になるようだ。

 安田さんがこう指摘する。

「男子校・女子校・共学校の項目を重視する人が少ないのに驚きました。今は男子校や女子校の別学校が減り、共学校が増えています。男子の場合、志望校を男子校だけでそろえるのは難度的に難しいケースもあります。実際に志望校として選択された学校を見ると、別学校と共学校が混在していることが多くあります。学校を選ぶ際に、別学・共学にこだわらない保護者が増えているようです」

「伸びる生徒の保護者の共通点」を聞いたものだ。トップは「塾(教師)を信頼し、聞く耳を持っている」の45.9%、次いで「子どもとのコミュニケーションがよくとれている」43.2%、「子どものことをよく見て、適性や能力を把握している」と「しつけ・生活習慣・食事の管理をしっかりしている」は34.6%だった。中学受験では、子どもを冷静に客観的な目で見つめて、志望校を決めていくことが大切だ。

 来年も中学入試の人気は高く、厳しい競争が予想される。確実に合格を得るために、エキスパートの意見を参考にして、子どもに合った学校を見つけてほしい。

 ※「オンライン授業で生徒・保護者から高評価を得た」「面倒見が良い」「生徒や保護者の入学後の満足度が高い」「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い」「最近、大学合格実績が伸びていると思われる」「グローバル教育に力を入れている」「理数教育に力を入れている」「保護者に人気がある」「生徒や保護者に勧めたい」の各ランキングが掲載されています。

 9月27日発売の「サンデー毎日10月9日増大号」には、ほかにも「東京五輪汚職 コレが腐食の構図だ!特捜部が狙う本丸 『バブル』『スポーツ』に巣くった高橋兄弟の血脈」「“爆笑”役立ち対談 ぶっちゃけ『鎌倉殿』 東大史料編纂所教授・本郷和人×時代劇研究科・ペリー荻野」「ワンマン宰相へ『100人の弔辞』 1967年・吉田茂元首相国葬 サンデー毎日が見た100年のスキャンダル」などの記事も掲載しています。

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