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2023年大学入試:一般選抜の受験者が減少 難関大は「強気出願」継続か 全国313私立大入試スケジュール
2023年度入試(23年4月入学)に向けた私立大一般選抜のスケジュールが固まった。22年度は全体的な志願者数が伸び悩み、厳しい入試とはならなかった一方で、上位大を狙う動きも見られた。来春入試の動向を探ってみよう。
私立大の一般選抜志願者数は減少傾向が続いている。今春実施された22年度入試の志願者数は、前年度からほぼ横ばいか若干の減少となる見込み。浪人生の減少とコロナ禍の影響で、戦後最大の減少幅となった21年度入試での減少分を取り戻すことはなかった。
25年度からの新課程入試を控え、入試を大きく変える動きは見られない。また、18歳人口は2年前と比べ5万人近く減っており、今後も減少が続く。来春の23年度入試でも志願者数が大きく増えることは考えにくく、全体としては受験生にとって志望校にチャレンジしやすい環境となりそうだ。
一方で注目しておきたいのが、より上位の大学を目指す受験生の動きだ。難易度レベル別のグループで22年度入試の志願者数を見ると、早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大)、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)といった難関大から、日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)、産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)などの難関大に次ぐ上位校まで、どのグループも小幅ながら志願者数が増加。多くの受験生が上位の大学に挑んでいた。全体の志願者数の伸び悩みは、中堅以下の大学が志願者を減らした影響が大きかったようだ。
こうした状況は受験人口が減少を続けた1990年代中盤に似ている、と代々木ゼミナール教育総合研究所の主幹研究員、坂口幸世(ゆきとし)氏は指摘する。
「90年代も受験生は上位大へ流れ、中堅以下の大学が波状的に志願者数を減らしました。受験人口が減れば入試難易度は易しくなると予測でき、強気出願で難関大を狙うからです。今春入試では志願者を増やした難関大でも志願倍率が上がっておらず、難化したとまでは言えません。そのため、来年度も同様の動きが予想されます」
中堅以下の大学で志願者数が伸び悩むのは、年内に行われる総合型選抜や学校推薦型選抜の合格者が増えたことも一因。学力中位層を中心に進学先を早めに決定する受験生が増えており、一般選抜の受験者の減少につながっている。
このように全体の志願者数は増えそうもない状況だが、個別に見ていくと人気を集めそうな大学・学部はある。次に、各大学の23年度の動きを見ていこう。
22年度入試で多くの志願者を集めた理工系学部は人気が続きそうだ。中でも注目なのが、データサイエンス系の学部や学科。AIやIoTの社会への浸透もあって受験生のデータサイエンス分野への関心は高く、今春入試でも厳しい競争となった学部が多かった。23年度は亜細亜大・経営(データサイエンス学科)、北里大・未来工(データサイエンス学科)、東京都市大・デザイン・データ科、明星大・データサイエンス、神奈川大・情報など多くの新設が予定されており、志願者を集めそうだ。
理系人気の高まりの中、文系学部が多い女子大は22年度に志願者を減らしたが、近年は理系や情報系の学部を新設する動きも目立つ。23年度は共立女子大・建築・デザイン、京都女子大・データサイエンス、武庫川女子大・社会情報などが新設予定。女子大に志願者が戻るか注目だ。
法学部が「都心移転」 中央大は志願者増か
キャンパス移転により人気が高まりそうなのが中央大・法。東京西部の多摩キャンパス(東京都八王子市)から、都心の茗荷谷キャンパス(同文京区)へと移転する。1年生から利便性の高いキャンパスで学べるようになり、志願者が増えそうだ。東洋大は赤羽台キャンパス(同北区)に新設学部を開設する。
新キャンパスの開設を予定する大学は他にもある。東北学院大は仙台駅近くに五橋キャンパス(仙台市)を開設。全ての学生が仙台中心部で学ぶことになる。東京国際大も23年9月に池袋キャンパス(東京都豊島区)を開設する。
私立大の最難関学部の一つである早稲田大・政治経済は、大学入学共通テストと独自試験の総合問題を併用する新たな入試方式を導入した後、2年連続で志願者減となっている。23年度はどうなるか。前出の坂口氏の見立てはこうだ。
「特殊な問題ではないものの、総合問題には対策が必要です。過去問が少ないため、対応できる高校とできない高校が分かれやすい。入試の傾向が明らかとなった22年度でも志願者が戻ることはなかったので、23年度も大きく増えることはないでしょう」
私立大で一般的な3教科型入試とは形式が異なるため、受験できる層は限られる。対策が十分にできる受験生にとっては引き続き狙い目となりそうだ。
早稲田大は23年度に、教育学部でも共通テストと個別試験を組み合わせるC方式、D方式を開始する。これに伴い、募集人員は560→650人にアップ。ただし複数方式の併願ができないため、志願者の増加は限定的だろう。
他には上智大も、新たな方式として共通テスト利用方式(3教科型)を開始する。今春の志願者数は前年比約14%減の大幅減だったが、共通テスト利用方式を中心に志願者が戻りそうだ。
関西の難関大は、志願倍率が低くなっている学部に注意したい。たとえば同志社大は、文、経済、文化情報、理工、生命医科の各学部で、22年度に志願倍率が3倍を下回った。こうした学部は競争率の低さから、チャレンジする受験生が増えるかもしれない。「全国313私立大入試スケジュール」を掲載した。入試に向けた基礎学力を固めつつ、年末にかけて志望校を選んでいく際の参考にしてほしい。