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2023年大学入試:コロナでも進学を諦めない 全国有名293大学・返済不要!奨学金一覧

「サンデー毎日9月25日・10月2日合併号」表紙
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 各校で整備が進む「給付型」

 本格的に志望校を固める時期になり、学費に不安を感じる受験生もいるだろう。そういう時は、大学独自の返済不要の奨学金をチェックしたい。中には、事前予約をしておけば、合格と同時に給付が決まるものもある。

 大学で学ぶにはお金がかかる。大学通信がまとめた、私立大の初年度納入金の平均は法・政治系が127万円、理工系が166万円、医学部が744万円などとなっている。国立大は全学部が約82万円だが、文系間の比較では、私立大とそれほど大きな差はない。

 高額な学費が必要なところに、近年はコロナ禍が影を落としている。奨学金アドバイザーの久米忠史氏はこう言う。

「JASSO(日本学生支援機構)によると、2021年度の災害や疾病などによる経済困窮者に対する奨学金の減額返還制度の適用者のうち、返還月額を2分の1にする人は横ばいですが、3分の1に減らす人が増えています。コロナ禍で経済状況が厳しくなった人が増えたのでしょう。21年度の奨学金利用者は、貸与型の新規採用が減少する一方、給付型の予約採用が増えています」

 JASSOには貸与型と給付型の2種類の奨学金がある。大学による授業料減免と給付型奨学金を2本柱とする高等教育の修学支援新制度の対象となるのは、住民税非課税及び準ずる世帯で収入380万円未満の家庭。貸与型に比べると給付基準のハードルが高い給付型が増えているのは、コロナ禍で困窮する家庭が増えているということだ。修学支援新制度について、前出の久米氏は、こう話す。

「世帯収入のハードルが高すぎるという意見もありますが、家計が厳しい家庭にとって有意義な制度です。県民所得が低い沖縄の進学校の教諭は『県外の私立大進学者数が県内の進学者数を逆転した』と言います。これは修学支援新制度ができたからです」

 修学支援新制度は、大学入学後でも申請できるが、進学前に受給が約束される予約採用は既に締め切られている。これから活用できるものには、入試と連動して成績優秀者に奨学金給付や授業料の減免などを行う、大学独自の奨学金制度となる。

 こうした奨学金の多くは入試の成績優秀者を対象としているため、第1志望校で給付の対象となるのは難しい。駿台予備学校進学情報事業部長の石原賢一氏は言う。

「経済状況が厳しいのなら、第1志望校の奨学金にチャレンジするといいでしょう。特待生には学費の減免以外にもさまざまなプログラムが用意され、充実した学生生活が送れます。そうした環境下で学び、有名企業に就職する学生もいるので、第2志望以下の大学でも、活用していいと思います」

 前出の久米氏もこう話す。

「大学院まで視野に入れているなら、大学のランクを下げて特待生になり、上位大学の大学院に進学する道もあります」

「全国有名293大学 返済不要!奨学金一覧」には、入試と連動した奨学金制度を持つ大学を掲載した。国立大では、北見工業大やお茶の水女子大、東大、東京工業大、新潟大、広島大、九州大などがある。

 全国の主要私立大も多くが実施している。北海道から関東では、北海学園大や東北学院大、国際基督教大、芝浦工業大、上智大、中央大、津田塾大、東京女子大、日本大、明治大など。中部から近畿では、金沢工業大や愛知大、愛知学院大、京都産業大、大阪学院大、大阪工業大、関西大、近畿大など。中四国・九州では広島工業大や松山大、九州産業大、福岡工業大、立命館アジア太平洋大などがある。授業料が高額な医学部でも、順天堂大や東京医科大などが学費減免制度を設けている。

 受験方法や出身校で変わる免除や給付額

 一般入試と連動したものに加え、特待生選抜のための入試を行う大学も多い。そうした大学の草分けは、1933年から給費生試験を行っている神奈川大。入学金と4年間の授業料の合計額を上回る奨学金を給付。自宅外の学生に対する年間70万円の生活援助金を合わせると、最高で880万円が給付される。

 白鷗大は対象者が多く、定員の約3分の1を学費が国立大並みになる学業特待入試で選抜する。専修大はスカラシップ入試の合格者に4年間の授業料と施設費を免除。東京工科大は定員103人の奨学生入試を実施し、合格者に対し130万円の奨学金を最長4年間給付する。東洋英和女学院大もスカラシップ特別入試を行っており、スカラシップ生は2年間の授業料など214万円(22年度実績)を免除され、学業成績が一定基準に達していれば、最長4年間継続される。

 入試の成績とは関係なく、合格と同時に給付が決まる方式もある。入学者の地元占有率が年々高くなっている首都圏の有名大では、1都3県以外の学校出身者を対象として、家計などの給付条件を満たしていれば合格と同時に給付される、事前予約型の奨学金を実施する大学が数多くある。

「試験の成績は関係なく合格が条件なので、第1志望校で給付を受けながら学べる可能性が高い。対象地域の受験生は活用するといいでしょう」(予備校関係者)

 早稲田大の「めざせ!都の西北奨学金」は、採用候補者を約1200人としている。家計などの採用条件を満たせば、評定平均値は問わず、学部により、45万~70万円が給付される。慶應義塾大の「学問のすゝめ奨学金」の採用候補者は550人以上で、評定平均値は問わずに学部により60万~90万円が給付される。

 MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)は全大学が実施。明治大の「おゝ明治奨学金」は、世帯給与水準の上限を低めに設定した上で、1都3県の学校出身者も対象としている。

 関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)では、立命館大が2府4県外の学校出身者を対象とした、近畿圏外からの入学者を支援する奨学金制度を設けている。関西大の「『学(がく)の実化(じつげ)』入学前予約採用型給付奨学金」は全国の学校が対象で、2府4県からも給与収入の基準を低くして募集。関西学院大の「ランバス支給奨学金」は地域制限がない。

 家計の事情で大学進学を諦めるのは不幸なこと。「全国有名293大学 返済不要!奨学金一覧」をご覧いただき、志望校が実施しているのなら、ホームページなどで詳細を確認してほしい。

 9月13日発売の「サンデー毎日9月25日・10月2日合併号」には、「全国有名293大学 返済不要!奨学金一覧」を掲載しています。ほかにも「田原総一朗が徹底追及 渦中の荻生田光一を直撃 旧統一教会との『蜜月』を糺す」「渾身インタビュー 私が病で『得たもの』『捨てたもの』 出口治明」などの記事も掲載しています。

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