底なしの旧統一教会問題 「やぶれかぶれ解散」の臆測も=人羅格
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内閣支持率の下落とともに、岸田文雄首相の政権運営に焦りがにじんでいる。
このまま下落が続くと、来年春の統一地方選を前に政権が「死に体」化していく可能性がある。野党側には、衆院の早期解散で首相が「リセット」を図ることへの警戒感が漂い始めた。
よほど、あわてたのだろう。首相が新型コロナウイルス療養明けに急きょ行った8月末の記者会見は、参院選圧勝からの政界景色の様変わりを如実に反映した。
「政治への国民の信頼が揺らいでいる」と冒頭から認め、旧統一教会問題を巡り国民に「率直なおわび」を表明した。毎日新聞の8月の世論調査で内閣支持率は36%と、7月調査から16ポイントも急落した。衝撃は、さすがに大きかった。
①旧統一教会問題、②安倍晋三元首相の「国葬」への反発、③コロナ第7波、の3課題が政権への逆風3点セットといわれる。いずれも参院選勝利の緩みからか、世論の反応や対策を甘く見ていた。
とりわけ、旧統一教会問題を巡る当初の腰の引けた政権の対応は世論のいらだちを呼んだ。茂木敏充幹事長に至っては8月初め「(教団と党が)一切関係がないことが確認できた」とすら公言していた。
解明に安倍派の壁
遅まきながら教団と「関係を絶つ」と断言し、党所属全国会議員を対象とする調査を実施した。だが、首相が本当に「自民と教団」の関係にメスを入れられるとみる向きは少ない。最大派閥、安倍派への配慮があるためだ。
安倍氏銃撃にまで波及した自民党と旧統一教会を巡る問題は、岸信介元首相を淵源(えんげん)とする安倍派と教団や関連団体との関係に行き当たる。他派議員とは明らかに密接さのレベルが異なる。
改造人事で首相は「安倍派対策」に腐心した。後見役の安倍氏を失った無派閥の高市早苗氏を政調会長から外し、安倍派から萩生田光一氏を後任に起用した。同派の後継問題に手出しこそしないが、西村康稔経済産業相、世耕弘成参院幹事長らに比べ、萩生田氏に微妙にアドバンテージをつけた人事と目されていた。
だが、教団問題は、首相の思惑を吹き飛ばした。萩生田氏は説明を重ねるたびに教団や関連団体との関係が発覚し、深手を負った。今や政権のアキレスけんだ。
最大派閥の巻き添えで政権が失速したケースには1992年、首相の派閥「宏池会」の先輩である宮沢喜一首相(当時)の例がある。政界は当時、竹下派支配だった。そこに東京佐川急便事件が起き同派のドン、金丸信副総裁が辞任と議員辞職に追い込まれた。
ところが、宮沢氏は竹下派への配慮から、事件へのコメントを拒否するなど解明への消極姿勢に終始した。こうした言動が世論の批判と支持率低下を招き、翌93年の自民党分裂に伴う衆院解散で宮沢政権は退陣に追い込まれた。
首相が支持率を無視できないのは来春の統一地方選はもちろん、再来年秋の自民党総裁選の続投戦略を直撃しかねないためだ。次期衆院選や参院選を前に首相が「選挙の…
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週刊エコノミスト
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