継続的な価格転嫁で業績好調 米総合食品大手ゼネラル・ミルズ 岩田太郎
有料記事
General Mills 食品堅調でペット向けも2桁成長/47
米総合食品企業のゼネラル・ミルズは1856年に製粉で創業し歴史が長い。1928年の上場以降、有望な食品関連事業を次々と買収して事業を拡大している。一方、不採算部門はちゅうちょなく売却する柔軟な経営戦略が業績拡大につながっている。
現在の主要製品はスナック類、シリアル、冷凍ピザ、冷凍・冷蔵パン生地、缶詰スープ、高級アイスクリーム、自然食品を原料とする高級ペットフードなどで、100以上の食品ブランドを100カ国以上で展開している。
景気後退時でも食品の需要は必ずある。ゼネラル・ミルズは創業以来160年を超える歴史の中で、数々の不況を乗り越えてきた。足元では世界的な物価上昇局面で、消費者が食費の切り詰めを余儀なくされている。新型コロナウイルス流行を発端とする物流の混乱や労働力不足などで米物価上昇率は6月に一時9%を突破し、81年11月以来、約40年半ぶりの水準となった。ゼネラル・ミルズも原材料費が22年5月期の1年間で8%値上がりした。
物価上昇を受けて、スーパーマーケットなどでは多くの消費者がなじみの食品ブランドから、より安価なプライベートブランド(PB)へ乗り換えているとの報道が続いている。ゼネラル・ミルズでも高級ブランドの売上高は伸びているが、一般品の分野では割安な価格設定で支持を集めている他社のプライベート・ブランドに侵食され始めている。
増収増益で高配当
ゼネラル・ミルズの直近の四半期決算は好調だった。2022年3~5月期(第4四半期)の売上高は前年同期比8%増の49億ドル(約6860億円)、調整後営業利益は21%伸びて8.96億ドル(約1254億円)だった。同社は理由について、①外食を手控えた消費者が家庭での調理を増やし同社商品の需要が伸びたこと、②原材料費の上昇に対する値上げが消費者に受け入れられたこと、③社内でコスト削減を進めたこと、④新開発商品の好調な販売、などを挙げている。
株主還元にも意欲的だ。22年5月期は1株当たり当期純利益の52%が配当として支払われ、高配当銘柄として位置づけられている。ゼネラル・ミルズの配当支払額と自社株買いを合わせた株主還元額は、前年比5億ドル(約700億円)増加し、20億ドル(約280億円)に達した。
近年のゼネラル・ミルズの成長を支えている大きな柱のひとつは、自然食品を原材料とした高級ペットフードで、「ブルーバッファロー」のブランドで知られている。ゼネラル・ミルズのペットフード事業は前年比2桁の伸びが続いている。22年5月期には米食品大手タイソンフーズのペット用おやつ事業も買収した。買収の理由は、米国ではペットを家族として扱い、その食事に出費を惜しまない人が増え、コロナ禍による家庭滞在時間の増加で新たにペットを迎える世帯が増加したことだ。ゼネラル・ミルズの供給が旺盛な需要に追い付いていない状況になっている。
23年5月期の全商品の原材料費は、22年5月期と比較して14%の上昇と厳しい状況を見込んでいる。コスト増に対応した業績目標としては、23年5月期の売上高原価を3~4%低減させると同時に、継続的な商品値上げを行うことで、売上高を前年比4~5%伸ばし、調整後営業利益を最大で1%増加させる計画を公表した。
米株安でも上昇
また、利益の圧迫要因としては、インフレによるコスト増に加え、新たな事業の買収費用、同業他社との競争に敗れたヨーグルト部門の売却などを挙げている。
ゼネラル・ミルズは、事業買収・売却、経費削減やイノベーションを組み合わせ、相乗効果を出してきた。この経営方針は投資家に高く評価され、22年の年初から優良銘柄を集めたS&P500指標が18%下落したのに対し、同社の株価は11.75%上げている(9月6日終値)。
(岩田太郎・在米ジャ…
残り602文字(全文2202文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める