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法務・税務 マンション管理必勝法

「マンション管理適正評価制度」高得点のコツとは? 荒木涼子(編集部)

 「マンション管理適正評価制度」への注目度が高まれば、中古価格も影響を受けかねない。どうしたら高評価を得られるのか。(マンション管理必勝法 ≪特集はこちら)

ここがポイント 五つ星狙ってセルフチェックも

 マンションの管理体制や管理組合の収支など、五つの分野で管理の状況を100点満点で評価し、0〜5の星(等級)で評価する「マンション管理適正評価制度」(図)。マンション管理業協会が今年4月にスタートさせた。協会の「評価サイト」のほか、不動産流通大手・東急リバブルの「中古マンションライブラリー」でも8月から評価結果が検索できる。中古市場での認知が広がれば、中古価格に影響を与えそうだ。

 また管理組合向けの火災保険を提供する損保ジャパンは10月1日以降、築年数のたったマンションとの契約時に課していたリスク評価を一部改定し、評価制度の結果のみで評価できるようにする。評価制度に登録していれば、「築古」というだけで断られていた保険加入にも道が開けるわけだ。

 評価制度と連携したサービスが増えれば、メリットが増えそうだ。では、評価制度で高得点を狙うにはどのようなポイントがあるのか。

ポイント1 まず手を付けやすい議事録、規約の整備

 定期的に開かれているはずの管理組合総会。評価制度では年1回の開催で4点だが、未開催だとマイナス5点だ。総会議事録の有無もチェックしたい。直近5年間分そろっているだろうか。一部でもなければマイナス5点となる。

 また「管理規約」と呼ばれるマンション住人にとってのルール。このお手本ともなるべき「標準管理規約」を、国土交通省が定期的に更新している。2016年には、災害時に迅速な復旧工事ができるようにする意思決定の方法や、暴力団の事務所としてマンションを使えなくするための規定が盛り込まれた。評価制度では主要8項目が更新されているか、状況によって0〜4点まで加点される。

 ただし、「住人にとって差し迫った困難があるわけでなく、規約更新のために逐次総会で議決を、とはなりにくい」(ある管理会社)こともあり、人が集まりにくいコロナ禍とも相まって、更新されていないところも多い。最悪のケースだと、新築分譲時のままかもしれない。定期更新はあるだろうか。

 また、消防訓練は年に1回以上開催されているだろうか。区分所有者名簿の有無も確認したい。これらは「整備されていて当然」で法令などで義務化されているものがないと、「マイナス5点」だ。一方変更しても管理費や修繕費アップといった「お金の問題」に直結はしにくく、見直しに向けた組合員の合意もとりやすいだろう。

 まずは「ハードルの低い」(同)項目で点数アップを稼ぎたいところだ。こうした更新を機に、住人にマンション管理の大切さを知ってもらうきっかけにも利用したい。

ポイント2 最難関は長期修繕 築30年で黒字に

 評価項目で最重要といえるのが長期修繕計画だ。国交省のガイドラインでは30年間の長期修繕計画における収支計画で、修繕積立金の累計額が推定の工事費の累計額を下回らないよう求めている。評価制度も準じており、工事計画と資金計画が30年時点で黒字となるような計画になっていれば、高得点が取れる仕組みになっている。

 修繕積立金は、新築分譲時は低めに設定されているところも少なくない。段階的な引き上げや、一時金でまかなう資金計画になっていたら、点数は低めになる。30年時点で本当に引き上げられるのか、その時本当に一時金を徴収できるのか、分からないからだ。

 このことから評価制度では、計画期間中の積み立てを事前に引き上げて一定額にし、工事費用を賄えるようにしている「均等積み立て方式」に配点を厚くしている。

 修繕積立金も含め、「管理組合収支」の分野は配点が40点分ある。老朽化したマンションの資産価値の維持は修繕にあるといっても過言ではない。評価制度作りの中心メンバーの前島英輝・協会調査部次長は「築年数のたったマンションにとって修繕計画の改善はまったなしの状況。収支含めて定期的に計画を見直すことは資産価値の向上につながる。中古市場や相続などを考えている区分所有者にも理解を広げたい」と話している。

ポイント3 耐震性の見える化 診断受けないと0点

 1981年6月1日以降に建てられた「新耐震基準」を満たしているマンションであれば特に問題なくクリアできる。同年5月31日以前に建てられた旧耐震基準のマンションでも、耐震診断を実施済みで、改修などで「耐震性に問題なし」とされていれば、新耐震基準の建物と同じ10点がもらえる。

 たとえ耐震診断で「耐震性に問題あり」と分かっても、改修の予定があり、総会で決議されていれば5点、改修予定がない(総会未決議)場合でも2点の配分がある。

 旧耐震基準のマンションは耐震補強していなければ耐震不足の場合がほとんどだ。ただし、耐震診断を受ければ結果を公表しなくてはならないため、診断をしたがらないマンションが少なくなかった。今回、耐震診断を受けていない場合は0点だ。前島次長は「耐震性の見える化を図った」としている。マンション購入を検討している人にとって耐震性を知るきっかけとなることを狙っている。

セルフチェックに利用

 評価制度は定期的なチェックで「健康診断」のように活用できる。協会が公開しているマニュアルで採点基準が解説されておりセルフチェックするのもありだ。前島次長は「管理が大事との機運を高めたい。情報公開によって、中古市場では適切な評価に、住人にとっても居住価値向上につながるのでは」と話す。

(荒木涼子・編集部)

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