元教員として母として広めたい住宅
芝山さゆり ウェルネストホーム社長
ドイツの住宅をお手本に作った気密・断熱性が高いウェルネストホームの住宅。エアコン1台で快適な家は省エネで長寿命だという。(聞き手=加藤結花・編集部)»»これまでの「挑戦者2022」はこちら
子どもに残せる省エネ住宅
未来の子どもたちに残せる省エネで長持ちする家を広めたい。そのために、私たちが提案しているのが100年以上の寿命が珍しくないドイツの住宅に影響を受けた、高い気密・断熱性を誇る高性能住宅です。日本の家屋は、エアコンを何台も設置したり、床暖房や加湿器を活用する場合が多いと思いますが、それは気温が極端に上下したり、湿度が高くなり過ぎることに原因があります。
私たちが提供する住宅は、一般的な住宅と比較すると、屋根・天井には古紙を使用した断熱材(セルロースファイバー)の使用量が1.5倍以上、壁の断熱材の厚みは2倍以上。家の隙間(すきま)の面積は1戸全部集めて名刺サイズです。一般的な高気密住宅をうたっている他社の隙間面積(B3サイズ)と比べても圧倒的です。素材にもこだわっていて、標準仕様で床はムク、壁と天井は漆喰(しっくい)塗装。また、住宅寿命が縮む大きな原因であるシロアリ対策として、防蟻・防腐効果のある薬剤を加圧注入した柱を使用。理論上は100年以上の耐久性のある高寿命な家を実現しました。
家の良さを体験してもらうために、希望者にはモデルハウスで1泊過ごす「試住(しじゅう)」をできるようにしています。これが非常に好評で、利用した人の約8割がこの家を買いたい、と希望します。詳細な設計や緻密な建築方法のため、引き渡しまでは約1年かかることもあり、住宅価格は3000万~4000万円程度と一般的な住宅の1.5倍程度かかります。しかし、高い気密・断熱性によりエアコン1台で一年中快適に過ごすことができ、光熱費を抑えることができるので、ランニングコストを含めたトータルコストでみると経済的です。
安くない買い物ですが、口コミなどで右肩上がりの売り上げとなり、2021年度は売上高が50億円を突破しました。特に、コロナ禍で在宅勤務など、家で過ごす時間が増えたこともあり、快適な家に住みたいというニーズは高まったようで、これまで月120件程度だった問い合わせが、2倍以上増えました。
幼稚園や病院も
私は小学校教員として働いていましたが、結婚を機に退職、娘2人を育てる専業主婦でした。生活に不満はなかったのですが、娘が将来の夢を口にした時、「費用がかかることを理由に娘の夢をあきらめさせるようなことはしたくない」と思い、起業を意識するようになりました。自分ができること、多くの人が必要としていることを考え、2008年に人材育成・女性の起業支援を手掛ける会社を設立しました。
講演などに呼ばれるようになり、後にウェルネストホームを共に立ち上げることになる早田宏徳氏と起業家が登壇するセミナーで出会いました。早田氏はエネルギー先進国ドイツの住宅をモデルにした高性能な住宅を日本で広めたいとの思いがありました。早田氏の話を通して省エネで長寿命な住宅は、経済的で、家族の健康にとってもいいと理解し、家族の巣を守るお母さんの立場を大切に、よい家を届けようと決めました。
将来的には幼稚園、他にも病院や高齢者施設など、安全性と快適性が求められる施設で私たちの住宅を広めていきたいです。
企業概要
事業内容:住宅の設計・営業
本社所在地:愛知県長久手市
設立:2012年8月
資本金:9990万円
従業員数:65人
■人物略歴
しばやま・さゆり
1971年三重県生まれ。小学校教員として勤務した後、結婚を機に退職。2人の娘の子育てをしながら、2008年に人材育成・女性の起業支援を手掛ける会社を設立。12年に早田宏徳氏と共同起業し、17年4月に社名変更した。北海道ニセコ町の「ニセコミライ」構想事業では、省エネの高性能集合住宅の建築設計、施工などの面で協力。