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週刊エコノミスト Online 挑戦者2022

薬事承認もエビデンスもあるアプリ

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

佐竹晃太 CureApp代表取締役社長

 病気は薬を服用したり、外科的処置を行って治療するが、これらに加えて「治療用アプリ」を使った治療手法も注目されている。(聞き手=和田肇・編集部)»»これまでの「挑戦者2022」はこちら

保険適用の治療用アプリ

 医師が患者さんに薬を処方するのと同じように、医師が患者さんに治療用アプリケーション(以下治療用アプリ)を処方して、病気を治すという新しい治療手法に使われる、その治療用アプリを開発しています。現在、2020年に厚生労働省の薬事承認を取得したニコチン依存症禁煙補助アプリと、22年4月に同じく薬事承認を取得した高血圧症治療支援アプリの二つを上市しています。

治療用アプリの画面 CureApp 提供
治療用アプリの画面 CureApp 提供

 高血圧症治療アプリは、患者さんが日々の血圧測定値や食事内容、運動状況などをアプリに入力すると、アプリのアルゴリズム機能により、その患者さんの症状度合いやその日の状態などに応じて、適切な生活習慣の指導メッセージや動画配信などがされる仕組みです。

 具体的な使い方は、まず患者さんはアップルストアなどから、当社の治療用アプリを自分のスマートフォンにダウンロードします。このダウンロード自体は、患者さんでなくても誰でもできます。患者さんは自分のスマホにダウンロードした後、それにログインして使えるようにするには、医師から「処方コード」と呼ばれるパスワードを受け取る必要があります。

 薬を服用する場合は、医師が処方箋を紙で渡してくれて、患者さんは薬局などで薬をもらい(買い)ますよね。治療用アプリも同じように、医師が処方コードを処方箋として、紙で患者さんに渡すわけです。ですから、病院側も薬と同じように治療用アプリの医療保険適用の算定をするわけです。

 世の中にはすでに、ダイエットアプリや睡眠アプリなどが多数販売されていますが、それらと当社の治療用アプリの違いは、まず搭載されているアルゴリズム機能などは、全て専門の医師が見て信頼のおけるものになっています。医学会のガイドラインや最新の医学論文、専門の医学書などに基づき、効果のエビデンスがあるものをアプリにインプットしています。

 また、医薬品と同じように臨床試験を行って効果を確認しており、国の薬事承認を取得。保険適用の対象となっています。これらがダイエットアプリなどとの違いです。

幅広い疾患分野に開発広げる

 大学の医学部を卒業した後、呼吸器内科の医師として病院に10年ぐらい勤めていました。その後、米国のジョンズ・ホプキンス大学に留学して医療情報科学の研究をしました。その時に米国では治療用アプリという、新しい治療手法が使われ始めていることを知りました。それで留学から帰ってきた14年にこの会社を設立しました。当時、日本には治療用アプリなど全くなく、それを医療保険の適用対象にするといった考え方も全くありませんでした。留学から帰ってきた時に、ちょうど総務省のベンチャー企業支援制度が始まり、それに採択されたので、資金調達面で非常に助かりました。

 現在、アルコール依存症や肝臓の慢性疾患関係、慢性心不全、乳がんなどに関する治療用アプリの開発を進めています。いろいろな病気にいろいろな薬があるように、多くの分野で使われる治療用アプリを開発していきたいと考えています。


企業概要

事業内容:医療保険適用治療用アプリの開発、販売

本社所在地:東京都中央区

設立:2014年7月

資本金:1億円

従業員数:189人(22年9月現在)


 ■人物略歴

さたけ・こうた

 1982年東京都生まれ。慶応義塾大学医学部卒業後、医師として北海道と東京の日本赤十字医療センターに約10年勤務。その後、米ジョンズ・ホプキンス大学に留学し、治療用アプリを知る。帰国した2014年にCureAppを設立。40歳。

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