バイデン政権の「食は医なり」キャンペーンは日本の得意分野 小林知代
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米ホワイトハウスは先月(9月28日)、飢餓の撲滅や、食に関連した慢性疾患を減らすことを狙いとする対策会議「食・栄養・健康サミット」を開催した。前回の会議はニクソン政権時代の1969年というから、なんと50年ぶりの開催である。
会議では、無料の学校給食の提供や生活困窮者へのフードスタンプ(無料の食事クーポン)拡大、栄養情報を記す食品ラベルの改善など多様な施策が提言された。グーグルや出前サービスのドアダッシュ、ヨーグルトのチョバニ、全米レストラン協会など、60以上の団体が寄付や助成金、新たな研究事業開始を表明し、健康改善につながる取り組みをアピールした。
4人に1人が肥満
今回の目玉事業の一つに「食は医なり」キャンペーンがある。ロックフェラー財団と米国心臓協会は、スーパーマーケット大手のクローガーや保険大手のカイザーと共に、いわゆるジャンクフードを排除し、一人でも多くの米市民が栄養価の高い食品を食べられるようなプログラム作りを行う。医療の観点に立った献立による食事が公的保険でカバーできる実証プログラムなども展開する。
なぜ、この時期に「栄養サミット」が開催されたのか。それはバイデン政権の三つの優先課題を表しているのではないだろうか。
まず、糖尿病とその合併症による医療コストの削減である。米国では、4人に1人が肥満、3人に1人は糖尿病予備軍といわれている。糖尿病は全米9位の死因になっているだけでなく、全米医療費に占める割合は、がんや心臓病関連と比べ、群を抜いて上昇している。今回のサミット開催では、最先端の医療体制を持ちながら、一方で2004年にNPOから「肥満白書」が発行されるほどの肥満国家であることについて、汚名返上への本気度がうかがわれる。
第二に、食を通じてのマイノリティー対…
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週刊エコノミスト
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