投資・運用

23年こそNISAの始め時 制度拡充&もらえる利益2.5割増し 大山弘子

 運用益や配当、分配金が非課税となるNISA(少額投資非課税制度)は、景気悪化の懸念がある2023年が利用の好機だ。

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 2022年12月、自民・公明両党は、23年度税制改正大綱を決定。「資産所得倍増プラン」でNISA(少額投資非課税制度)を拡充、恒久化し、非課税投資期間を無期限化することを決めた。

利益2.5割増し

 NISAは、株式や投資信託などの投資で得られる運用益や配当金、分配金が非課税になる制度だ。

 通常(課税口座で投資した場合)、運用益や配当、分配金には20.315%の課税が行われる。仮に売却益が100万円の場合、手元に残るのは79万6850円になってしまう。だが、NISAを活用すれば、運用益を丸々享受できる。逆に79万6850円が100万円になると考えれば、利益は約2.5割も増える計算になる。

 現行のNISAは、株式や公募投資信託、ETF(上場投資信託)、リート(不動産投資信託)などに投資できる「一般NISA」と、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場投資信託(金融庁に届け出たもの)での積立投資専用の「つみたてNISA」がある。

 それぞれ非課税期間や毎年の非課税枠(新規投資額)が異なり、一般NISAは非課税期間が最長5年、非課税枠は年間120万円で、新規投資は23年までとなっている。つみたてNISAは、毎年の非課税枠は40万円だが、非課税期間が最長20年間あり、新規に投資できる期間は42年までだ。また、1人1口座しか開設できず、一般NISAかつみたてNISAかのどちらか一方を選択することになる。なお、1年に1回、金融機関や口座の種類の変更が可能だ。

 NISAは、メリットの大きい制度ではあるものの、期限付きの措置であることや、つみたてNISAの年間非課税枠が40万円と、一般NISAの3分の1であるうえ、12(カ月)で割り切れないこと(40÷12=3.333…と、割り切れず、毎月均等投資では枠を使い切れない)などへの不満が少なくなかった。

「資産所得倍増プラン」では、これらの不満に応える改正が行われた(図1)。

 NISA制度を恒久化し、非課税投資期間を無期限化する。つみたてNISA(つみたて投資枠)の年間非課税枠は3倍の年間120万円に広げられる。一般NISAは「成長投資枠(仮称)」となり、年間の非課税投資金額を2倍の240万円とする見込みだ。NISA制度全体としての生涯の非課税投資枠は1800万円となり、成長投資枠はこのうちの1200万円までとなる。

 なお、現行制度では、一般NISA、つみたてNISAのどちらか一方を選ぶことになっていたが、改正後は成長投資枠(一般NISA)とつみたてNISAの併用が可能になり、一つの口座で管理することになる。

 個人投資家の間では、「成長投資枠の生涯非課税投資額が1200万円で、年間の投資額が240万円だと、5年で使い終わってしまうのでは」といった声もある。現行制度には、非課税投資枠を再利用できず、保有銘柄の入れ替えやリバランス(保有資産の保有割合を当初のバランスに戻すこと)などができない不便さもあった。これも解消されるようだ。現行の非課税口座は23年末に買付を終了するが、新制度の非課税限度額の外枠で、現行の取り扱いを継続する。

 では、拡充されるNISAをどう活用するのがいいのか。それは運用益や配当、分配金が非課税になるというメリットを長期間、徹底的に享受することだ。

非課税を長く使い倒す

 例えば、つみたてNISAでは、信託報酬などのコストが安いインデックス投信をコツコツと積み立てることが考えられる。

 毎月3万円ずつ、40年間積み立て、想定利回り3%で運用できたと仮定しよう。非課税口座で積み立てた場合には2778万円を丸々享受できるが、課税口座だと2506万円になってしまう。その差は272万円だ。老後資金の準備などで、インデックス投信の積み立てを行う人は少なくない。その場合につみたてNISAを活用しないのは大損だ。

 成長投資枠では、安定的に高配当が期待できる銘柄や、連続増配を続ける個別銘柄への分散投資が考えられる。インターネット証券には、一般NISA口座で外国株にも投資できる会社がある。

 米国株では、S&P500構成銘柄で25年以上連続で増配を続ける「配当貴族銘柄」と呼ばれる銘柄がある。連続増配銘柄は利益が増え続けている可能性が高く、利益が減っても安定的に配当が払える仕組みができている場合も多い。そのため、増配を続ける間は安定した株価推移も期待できる。

 例えば、投資金額が240万円で配当利回り4%の銘柄を40年保有したとしよう。保有期間中、株価も配当利回りも変わらなかったとすると、非課税ならば384万円の配当金を得られる計算になる。課税口座の場合は、それが約306万円になってしまう。また、成長投資枠という名称の通りに、今後の高成長が期待される銘柄に投資する方法も考えられるだろう。

 なお、投資のリスクも、銘柄選びの困難さも、投資信託の積み立て→連続増配銘柄→成長株への投資の順番で高くなる。

 投資に興味はあっても一歩踏み出せない人のなかには、「株価水準が高すぎて、高値づかみしないか心配だ」という人もいる。23年は景気が悪化し、株価も下がる可能性があるいう識者も少なくない。もしそうなら、NISAを活用して優良な銘柄を安く買うチャンスがやってくる年となるかもしれない。

(大山弘子・マネーライター)


週刊エコノミスト2023年1月10日号掲載

2023投資のタネ NISA 制度拡充で今が始めどき 高配当を非課税で享受=大山弘子

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