資産所得倍増プラン NISAの恒久化を検討=大山弘子
岸田文雄政権の「骨太の方針」では、個人の資産所得強化が盛り込まれた。
iDeCoは70歳まで延長か
岸田文雄政権の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022」では、「新しい資本主義に向けた改革」の一つとして「『貯蓄から投資』のための『資産所得倍増プラン』」が盛り込まれた。中でも注目されるのが、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充と、高齢者に向けたiDeCo(個人型確定拠出年金制度)やDC(企業型確定拠出年金制度)の制度改革だ。どのような変更が行われそうなのかを見ていこう。(今こそ仕込む日本株 特集はこちら)
NISAとは、「NISA口座」で毎年一定金額の範囲内で株式や投資信託などの金融商品に投資した場合に、通常ならば利益(譲渡益や配当、分配金)にかかる税金20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が、非課税になる制度だ(表)。年間非課税枠が120万円(2024年からは1階部分20万円、2階部分102万円)あり、株式などにも投資できる「一般NISA」と、少額からの長期・積立・分散投資を行う「つみたてNISA」のどちらか一方を選んで利用する。
金融庁のウェブサイトによると、NISAは英国のISA(個人貯蓄口座)をモデルとしている。日本証券業協会が2016年に発表した「英国における個人の中長期的・自助努力による資産形成のための投資優遇税制等の実態調査」報告書には、「ISAは当初10年間という期限が設定されていたが、2008年に恒久化されISAが使えなくなるという懸念がなくなったことにより、ISAの利用は一層拡大した」とある。
NISAについては、期限付きの措置であることや、つみたてNISAの年間非課税枠が40万円と一般NISAの3分の1であること、40万円なので12カ月で割り切れないことなどに不満を口にする個人投資家は少なくない。
非課税枠拡大にも言及
今回示された方針では、NISAを恒久化するとともに、つみたてNISAの年間非課税枠の拡大と非課税保有期間の拡充について言及されている。また、NISAを利用した資産形成ができるよう、事業主が役職員に奨励金などを支給して支援する「職場つみたてNISA」については、奨励金に税制措置を設けるとしている。
公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度であるiDeCoやDCについては、会社員や公務員を中心に、「掛け金が少ない」との批判があった。これについても「拠出限度額の引き上げを目指すべき」とされている。
iDeCoは今年5月から加入可能期間(掛け金拠出期間)が、それまでの「60歳になるまで」から「65歳になるまで」に引き上げられた。ただし、「国民年金被保険者」であることが要件となる。継続雇用などで国民年金第2号被保険者(厚生年金と国民年金に加入)であり続ける会社員や公務員は65歳になるまでiDeCoにも加入できる。
だが、国民年金の加入期間は20歳から60歳になるまでの40年間(納付月数480カ月)だ。国民年金のみに加入する個人事業主やフリーランスなどは、加入月数が480カ月に満たない場合に、それを満たすまで(かつ65歳になるまで)加入する「任意加入制度」を利用しない限り、60歳以降はiDeCoに加入できなかった。
今回の方針では、65歳以降も働く人が増えていることもあり、iDeCoの加入可能期間をDC同様、70歳になるまでに延長することが示唆されている。なお、今年末には「資産所得倍増プラン」が策定される模様だ。
(大山弘子・マネーライター)