米REITのエクイティ・レジデンシャル、大都市部の賃貸住宅に特化する強み 岩田太郎
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Equity Residential 需要拡大が続く米国賃貸住宅/61
エクイティ・レジデンシャルは米国の不動産投資信託(REIT、リート)で、米国都市部の高級住宅地を対象に富裕層向けの賃貸集合住宅(マンション)の開発と投資運用を行っている。創業は1969年。90年代初頭に同社はREITとして上場を果たすと同時に、競合買収による急成長路線に乗る。そして2001年には優良企業上位500社で構成されるS&P500に加えられた。
米国では富裕層は雇用や収入が比較的安定し、賃貸住宅のニーズは景気に左右されにくい。そのため、エクイティ・レジデンシャルのここ数年の平均入居率は96%以上と好調で、経営陣は景気後退が予想される23年12月期も引き続き好業績を予想している。背景には米国が慢性的な住宅不足であり、安定的な住宅市場の成長が見込まれることが挙げられる。
エクイティ・レジデンシャルが事業を展開するニューヨーク、ボストン、首都ワシントン、サンフランシスコやサンディエゴなどの大都市は人気の一戸建て住宅の供給が圧倒的に不足している。一方で、高収入の専門職の求人が増加している。そのため、「つなぎ」としての賃貸住宅への需要は旺盛だ。エクイティ・レジデンシャルは21年12月期末で全米に810の物件を持ち、8万戸以上の賃貸住宅を提供している。
REITが賃料収入からどれだけのキャッシュを獲得しているかを表す指標のFFO(純利益に減価償却費と不動産の売買損益を加え算出)において、エクイティ・レジデンシャルは22年7~9月期に前年同期比で1株当たり19.5%増と好成績を収めた。これは、入居率が96.6%と良好であったことと、家賃値上げも順調であったことが理由だ。経営陣は、23年12月期もFFOの継続的な伸びを予想する。
家賃は下がりにくい
家賃も一時の下落から改善した。新型コロナウイルスの感染拡大と景気の落ち込みを受けて、エクイティ・レジデンシャルは20~21年に月額平均500ドル(約6万7500円)の値引きをしたが、22年の契約更新時には平均600ドル(約8万1000円)以上と値引きを上回…
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週刊エコノミスト
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