「ラジオの面白さ」を再構築――井上佳央里さん
Radiotalk代表取締役 井上佳央里
YouTubeのように自分で発信をしたいけど顔は出したくない。新たなニーズに応える「音声専門」のプラットフォームで、次なるブームを巻き起こす。(聞き手=白鳥達哉・編集部)
スマートフォンやタブレットを使って音声配信ができるプラットフォーム、「ラジオトーク」の開発、運営を行っています。
YouTubeやTikTokなどの動画配信プラットフォーム、そして配信者という職業がメジャーになっているなかで、「顔出しはしたくないけど自分も配信してみたい」という人も数多くいます。ラジオトークは専用のスマホアプリを無料で誰でも使うことができ、ボタン一つですぐにラジオの生配信を始められます。生配信の他に収録機能も備えており、あらかじめ音声を収録し、音量調整や余分な音声の切り取りなどの編集を行ってからラジオトーク上に公開することも可能です。
リスナー側は配信番組を聴いたり、番組中にコメントを出したりなどは無料でできるほか、専用のコインを購入し、配信画面上に絵文字のスタンプを流して番組を盛り上げる演出を行うこともできます。また、ラジオトークではこのような番組の「盛り上がり度」を独自の計算方法で算出しています。特に盛り上がっている番組を作っている配信者には、盛り上がり度に応じて報酬という形で収益を分配しているので、配信者側にもメリットがあります。
現在、アプリのダウンロード数は80万を超え、一般の方でも有名配信者が続々と生まれています。
諦めた道に飛び込んだ
高校生の頃にあるラジオ番組と出会い、いつしかラジオ番組制作にかかわってみたいと思うようになりました。しかし、就職の時期に差し掛かったとき、ラジオのビジネスモデルは広告がつきづらくなっていて、市場も縮小傾向にあるという課題に直面します。
結局、伸びている産業に行きたいという思いもあったため、インターネット関連企業であるエキサイトに入社。ただ、同時にラジオのビジネスモデルを変えることはできないかという思いもありました。
転機になったのはスマートスピーカーの発売です。音声で操作する機器が世に出てきたということは、「聴く」ということに対して新たなプラットフォームも生まれてくるはず、と考えました。タイミングも良く社内ベンチャー事業の募集が始まっていたこともあって、インターネットを使った新しいラジオのマネタイズの仕組みを考え、応募したところ、無事に採択されたのが会社設立の経緯です。
昨年は年間の収益が1000万円を超える配信者も出てくるようになりました。
今後はそのような人をもっと増やせるよう、配信者が稼げるモデルを多層化していきたいと考えています。たとえば、グッズなど別のコンテンツを販売したり、オフラインでのイベントを開いてチケットで収益を上げる、そこに私たちも積極的にかかわっていくような取り組みを考えています。
ラジオトークの中でも、スタンプを送る以外で番組を盛り上げるような仕組みをどんどん増やしていく予定です。
企業概要
事業内容:音声配信プラットフォームの開発、運営
本社所在地:東京都港区
設立:2019年3月
資本金:1億円(23年1月現在)
従業員数:25人(業務委託など含む)
週刊エコノミスト2023年2月7日号掲載
井上佳央里 Radiotalk代表取締役 「ラジオの面白さ」を再構築