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2024年大学入試:全国645進学校アンケート「オススメ大学」ランキング 志願者数と倍率は減少傾向 エキスパート「推し」大学は!?
大学入学共通テストの受験案内の配布が始まり、2024年度入試(24年4月入学)に向けて志望校固めの時期となった。まだ、決まっていない受験生は、エキスパートである進路指導教諭の意見を参考にしてみてはどうだろうか。
18歳人口の減少と連動して、国公立大と私立大ともに一般選抜の志願者が減少し、倍率が下がり続けている。入試が緩和に向かう傾向は、最新の進学校の進路指導教諭へのアンケート結果からもうかがえる。
本誌と大学通信は毎年、受験生の動向を最も近い場所から見ている進学校の進路指導教諭を対象に、翌春の大学入試の傾向や大学の評価に関するアンケートを行っている。今回は来春24年度入試に向けて約2000校に送付し、645校から回答をいただいた。
アンケートでは、「24年度の一般選抜の入試動向」について聞いている。その集計結果によると、国公立大の志望状況について「人気は今年とあまり変わらない」との回答が50・4%で、「人気は少しダウンする」が19・5%。7割の教諭が、国公立大志願者は、23年度並みから下がると見ている。私立大に関しても「今年より少し減る(5%未満)」が36・7%で、「今年と変わらない」が36・3%となり、今春並みから減るとの見方が7割を超えている。
18歳人口が4万人と大幅に減少する外的要因。それに高校教諭の見立てを合わせて見ると、24年度入試の一般選抜は、これまで以上に緩和が見込まれそうだ。
受験生には歓迎すべき状況だが、普段から接している生徒から強気の感触は得られていないようだ。「24年度の大学選びの傾向」について聞いたところ、「現役での進学志向がさらに強くなる」が、前回の60・1%から今回は75・8%にアップ。「安全志向がさらに強まる」は、39・4%から65・1%に大きく上がっているのだ。「翌年(25年度入試)から新課程入試に切り替わるのを前に、24年度入試で入学したいという受験生意識を如実に示す数値ですね」(予備校関係者)
24年度の一般選抜全体の動きを押さえた上で、どのような大学を選べばいいのか。進路指導教諭オススメの大学を参考にしていただきたい。ポイントは、各項目別に進路指導教諭オススメの大学を5校連記で記入してもらい、最初にあった大学を5ポイント、次を4ポイント……として計算して集計した。
まずは「面倒見が良い大学」から見ていこう。1位は19年連続の金沢工業大だ。その要因について、同大企画部次長の志鷹英男氏に聞いてみた。
「入学した学生に意欲目標を持たせ、学生が持つ力を引き出し、更に向上への気づきを促し、『学力×人間力=総合力』との考えのもと、学生を最大限成長させることを組織的に行っています。近年はこれまで蓄積した学生の動向に関するビッグデータをAIで分析して、個々の学生に適した学習プログラムを提供するなど、学生支援をさらに進化させています」
「就職力」明治が独走 「教育力」は3強態勢
面倒見が良い大学について、その理由も聞いている。2位の東北大については「新入生のサポート、学問への導きが個別化されていて手厚い」(青森・公立校)、「教員と学生の距離が近く、丁寧な指導が行われている」(大阪・私立校)などのコメントが寄せられた。3位の武蔵大について評価する点は「1年次からゼミがはじまるきめ細やかな指導体制」(東京・公立校)、「教授陣が教育に関して当事者意識が高い感覚がある」(東京・私立校)などだ。
1位の金沢工業大を含め、5位東京理科大▽6位福岡工業大▽11位千葉工業大▽13位九州工業大▽19位高知工科大――と工科系大学が数多いこともランキングの特徴だ。教育ジャーナリストの小林哲夫氏は言う。
「工科系大学は、研究などで教職員と学生の距離が近い分、卒業生を通して面倒見の良さを実感する教員が多いのでしょう」
「就職に力を入れている大学」の1位は明治大で、ポイント数で2位以下を大きく引き離す。進路指導担当教諭が評価するポイントは「キャリア形成に対する支援や就職サポートの充実」(埼玉・公立校)、「卒業生とのつながりが強く就職に有利に働いている」(神奈川・公立校)など。
2位は金沢工業大で、上位2校は昨年と同じ順位。両大学は全国的に就職に力を入れている大学として認知されており、高校の所在地別に集計した地域別ランキングでは、6地域中5地域でランクインしている。全国ランキングの3位には、昨年の5位から上がった早稲田大が入った。
アンケートに回答した高校の所在地から地域別に順位をつけると、「北海道・東北」の高校では上位を明治大、金沢工業大、法政大などの地域外の大学が占め、当地のトップは5位の東北大となっている。「関東・甲信越」は明治大、早稲田大、金沢工業大で、「北陸・東海」は金沢工業大、中京大、福井大、名城大と当地の大学が順当にランクイン。「近畿」は大阪工業大、立命館大に次いで同ポイントで明治大と近畿大が3位を分け合った。「中国・四国」は九州工業大、高知工科大、広島大。「九州・沖縄」は福岡工業大、九州工業大についで金沢工業大と九州産業大が3位で並んだ。
「教育力が高い大学」の東大、東北大、京大は昨年と同じ順位で、3校がポイントで抜けている。私立大最上位の東京理科大は昨年の5位から4位に順位を上げた。東京理科大の教育力の評価として、「一定の単位を取得できなければ進級できない関門制度を設けるなど、きちんと学生を育てている」(千葉・私立校)という意見が寄せられた。
地域別に見ると、東大が強く、「北海道・東北」と「近畿」以外で1位。「北海道・東北」では北海道大に大きくポイント差をつけた東北大が1位。「近畿」では、京大が2位の東北大と僅差ながら1位。各地域で難関大がランクインする中、「北陸・東海」では名古屋商科大が5位に入っている。予備校関係者は言う。
「日本の大学で数少ない、国際認証を受けたビジネススクールを持つことなどが評価の要因」
女子の社会科学志向で変容する「満足度」
「グローバル教育に力を入れている大学」は1位が国際教養大で以下、国際基督教大▽立命館アジア太平洋大(APU)▽上智大▽東京外国語大▽早稲田大▽東大▽立教大――などで、日本のグローバル化を牽引(けんいん)するスーパーグローバル大学(SGU)が並ぶ。
ランキング上位には、SGUの中でも規模が小さな大学が入っている。この要因について、前出の小林氏は留学状況に注目する。
「国際教養大は日本人学生が全員留学。APUは全学生の半数が海外から受け入れた留学生という点が、高評価につながっている。留学ということでは、千葉大(11位)は20年度から全員留学を打ち出していますが、初年度からコロナ禍で留学に出られませんでした。コロナがなければもっと上位に入っていたかもしれません」
意外なことに、SGUの中で最難関大の一つである慶應義塾大はランキングに入っていない。経済学部などで英語のみで学位取得が可能なプログラムを持つなど、SGUらしいプログラムを展開する大学だが、高校教諭には届いていないようだ。グローバル系学部を持っていないことも評価につながらなかったのかもしれない。
「改革力が高い大学」は、1位早稲田大、2位東北大、3位近畿大、4位東大、5位立命館大まで昨年と同じ順位。6位には昨年の28位から大きく順位を上げた東京工業大が入った。24年秋に東京医科歯科大と統合し、東京科学大となる計画が進んでいることから、改革力が高い大学として教員の認知が進んだようだ。
「小規模だが評価できる大学」は国際教養大、武蔵大、国際基督教大の順。4位以下は比較的ポイントが近く会津大、一橋大、金沢工業大、都留文科大、産業能率大の順で並ぶ。産業能率大入試企画部長の林巧樹氏は、小規模大学のメリットについて、このように話す。
「自己のキャリア構想を基に課題解決のプレゼンテーションを行うなど、厳しい課題を課す総合型選抜を導入しており、その入試をクリアした学生は自己肯定感が上がり、積極的に勉学に取り組みます。そうした意識の高い学生に触発されて、一般選抜で入学した学生も学ぶ意欲が高まるのは、小規模大学の良さだと思います」
「入学後、生徒を伸ばしてくれる大学」の1位は東北大。総合型選抜で3割の学生が入学する大学であり、高校との関係性が強いことから、生徒の成長が見えやすいことも高評価の要因だろう。2位以下は、東大から6位の国際教養大まで昨年と同じ順位だ。
「入学後、生徒の満足度が高い大学」は東大、東北大、京大の順で並ぶ。もっとも厳しいレベルの受験勉強を経てこそ入学できる第1志望度の高い大学は、入学後の満足度も高いということのようだ。私立大では4位に最難関の早稲田大が入るが、比肩する慶應義塾大は9位。その間に割って入った明治大について、小林氏は、こう話す。
「社会科学系を目指す女子が増え、そうした女子が第1志望に考えるようになったことが、明治大が満足度が高い大学として認知されている要因。同じことは法政大などにも言えます」
歓迎される「改革」は受験費用の負担軽減
「生徒に人気がある大学」では、最難関の東大が6位で京大が7位と順位が上がらない。目指したくても、高得点が求められる共通テストと難関な2次試験の壁は大きく、人気が上がらない。トップ3は明治大、早稲田大、立教大と私立総合大学が並んでいる。学部構成がバラエティーに富んでいて、多様な生徒が志望しやすいことも要因となっている。
「偏差値や地理的条件、親の資力などの制約がない場合、生徒に勧めたい大学」の国公立大は、東大、京大、東北大、大阪大……と、上位はほぼ昨年と同じで、おおよそ科研費の獲得額順に並んでいる。そうした中で、公立の国際教養大が7位に入っているのも昨年と同じ。秋田県にある公立大学ながら、全国の進路指導教諭が勧めたいと考えている。
地域別に見ると、「関東・甲信越」は東大、東北大、京大。「近畿」は京大、東大、大阪大。両地域から支持されているのは、東大、京大、東北大の3大学だ。
私立大も早稲田大、慶應義塾大、東京理科大といった最難関大が上位。「関東・甲信越」、「近畿」ともに早稲田大がトップとなる中で注目されるのは、両地域でランクインしている国際基督教大だ。小規模大学ながら、全国の教諭から認知されているということだ。
ここまで見てきた進路指導教諭が勧める各項目の上位大学は、長年にわたって順位が固定化されている。その意味について、小林氏が解説する。
「私立校は、決まった先生が進路指導を続けることもあるが、公立校は教員の異動が頻繁に行われるので、評価者が変わる。そうした中で常に高いポイントを獲得し続けている大学は、その評価に普遍性があるといえます」
次に受験生の入試に関する意識について見ていこう。まず「生徒に人気のある大学」について聞いてみたところ、他の項目を圧倒したのは「自分のしたい勉強ができる大学」で77・7%。次いで59・7%の「知名度が高い大学」、58・9%の「社会的評価・イメージが良い大学」と昨年と同じ結果となった。この3項目の結果を読み解くと、現在の難関大人気が見えてくる。また、就活における大学生の売り手市場が続く中でも「就職に有利な大学」が51・0%で、「資格が取得できる大学」が46・7%と受験生が重視する項目になっている。
「受験生に受け入れられる改革」では、入試に関するものが上位で、「学校推薦型選抜・総合型選抜の充実」が46・8%で、「1回の受験料で複数回受験が可能」が40・3%。後者に関しては、24・0%の「地方試験の実施」などとともに、受験に関する費用が家計の負担になっていることを示す結果となった。
最後に「人気になりそうな学部・学科系統」について聞くと、情報系が63・4%と昨年に続き最も人気が高い。データサイエンス系も42・0%と高く、人材が払底しているIT人材を目指す高校生が多くなっている。社会科学系では、経済系(39・7%)と経営系(37・2%)が安定している一方で、商学系(14・4%)と法学系(12・9%)の人気がない。
25年度の新課程入試を控えて安全志向の強まりを感じる高校教諭は多い。しかし、翌年の入試を意識しすぎるあまり、妥協してミスマッチを起こしてしまっては元も子もない。受験のエキスパートの進路指導教諭の見立てを参考に、行きたい大学・学部への進学を優先に志望校選びをしてほしい。