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経済・企業 挑戦者2023

長生きも悪くないと思える社会に――桑原静さん

くわはら・しずか 1974年埼玉県生まれ。日本大学芸術学部卒。ウェブコミュニティーの企画運営に携わった後、NPO法人「コミュニティビジネスサポートセンター」に勤務。2011年に「シゴトラボ合同会社」を設立し、「BABA lab(ババラボ)さいたま工房」を開設。22年、社名を「合同会社ババラボ」(通称「BABA lab」)に変更。写真右端が桑原さん。「BABA lab さいたま工房」のスタッフと(撮影 武市公孝)
くわはら・しずか 1974年埼玉県生まれ。日本大学芸術学部卒。ウェブコミュニティーの企画運営に携わった後、NPO法人「コミュニティビジネスサポートセンター」に勤務。2011年に「シゴトラボ合同会社」を設立し、「BABA lab(ババラボ)さいたま工房」を開設。22年、社名を「合同会社ババラボ」(通称「BABA lab」)に変更。写真右端が桑原さん。「BABA lab さいたま工房」のスタッフと(撮影 武市公孝)

合同会社ババラボ代表 桑原静

 超高齢社会。心配の種は多いが、どうせ長生きするなら「それも悪くない」と思いたい。笑顔のためのアイデアを探り続ける。(聞き手=位川一郎・編集部)

>>連載「挑戦者2023」はこちら

 NPO法人でコミュニティービジネスの支援をしていましたが、自分自身も運営をしたい気持ちが強くなり、2011年に起業し空き家を借りて「BABA lab さいたま工房」を始めました。コンセプトは「100歳まで働けるものづくりの職場」。イメージしたのは(徳島県上勝町の)「葉っぱビジネス」です。サポートされる側だと思っていたおばあちゃんたちが元気に働いていて、すごくいいな、と。私はおばあちゃん子だったので、シニアの働き方や生き方にもともと興味がありました。

手作りの布ぞうりも販売している
手作りの布ぞうりも販売している

 最初3年くらい大苦戦しましたが、シニアの経験やアイデアを生かした「孫育てグッズ」を作ると、これが結構売れて。特に、赤ちゃんを寝かしつけやすい「抱っこふとん」は当時日本で普及しておらず、話題になりました。いま、工房併設のショップでは手作りの雑貨なども販売しています。なかでも布ぞうり(税込み3300円と3850円の2種類)は人気で、オンラインショップでも扱っています。

 ものづくりのスタッフは現在、40~90代の女性約20人。作業にはカットいくらとか縫うといくらとかのメニュー表があって、どんなに少額でも報酬を支払います。お金は社会参加している記号にもなりますから。

 工房をやっていくうちに、企業や行政から声がかかるようになりました。さいたま市からの委託で高齢者の生涯学習の場を運営していて、年間1000人ぐらいが通っています。シニア向け冊子の制作もします。企業がシニア向け事業を新規開拓したりリニューアルしたりする際の支援などもしています。

シニアの「ホンネ」を集める

 今の会社のキャッチフレーズは「『長生きするのも悪くない』と思える仕組みをつくる」。これまでものづくりの職場としてやってきましたが、一段ギアを上げて、みんなでこの超高齢社会に必要なサービスや仕組みを考えませんか?というスタンスです。

 そのために、シニアに集まってもらって本音を聞く「ホンネ会議」をやったり、シニアユーチューバーになろうという講座をオンラインでやったりもしています。いろんな楽しいイベントを通してシニアの声を聞いて、結果のデータを企業や行政に渡す。それに応じて商品やサービスを変えていってほしいと思っています。

 シニアの情報発信量は若者に比べて圧倒的に少ないんです。AI学習データにも入ってこない。すると、若い人にはシニアの実態が分からない。世の中の仕組みをつくる若い人たちがシニアのことを知らないのは由々しき問題です。

 ババラボは「ラボ」なので、在野の研究所みたいな感じ。超高齢社会といえばババラボに聞いてみようとか、ほかで解決しなかったのでババラボに駆け込みたいとか、そういう方向に会社を伸ばしたいですね。

 工房の方は、ものを作って売るのに加えて、おばあちゃんたちが手芸を子どもに教えるとか、お母さんたちと一緒に手仕事するとか、地域のみんながもっと集まれるコミュニティーにしたいと考えています。


企業概要

事業内容:超高齢社会に必要なサービス・商品づくり、シニア世代の就労や学習の場のコーディネート、調査研究、教材開発など

本社所在地:さいたま市南区

設立:2011年12月

資本金:500万円

従業員数:8人


週刊エコノミスト2023年11月14日号掲載

桑原静 合同会社ババラボ代表 長生きも悪くないと思える社会に

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