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週刊エコノミスト Online 挑戦者2023

三輪で移動の楽しさを届ける――森庸太朗さん

もり・ようたろう 1980年、東京生まれ。2004年東京工業大学大学院機械物理工学専攻修了後、本田技術研究所入社。同研究所2輪R&D部門にてレース用自転車、自立する二輪車の研究などに従事。11年東京工業大学大学院理工学研究科制御システム工学専攻博士課程修了。21年8月ストリーモ設立。(撮影 武市公孝)
もり・ようたろう 1980年、東京生まれ。2004年東京工業大学大学院機械物理工学専攻修了後、本田技術研究所入社。同研究所2輪R&D部門にてレース用自転車、自立する二輪車の研究などに従事。11年東京工業大学大学院理工学研究科制御システム工学専攻博士課程修了。21年8月ストリーモ設立。(撮影 武市公孝)

ストリーモ代表取締役CEO 森庸太朗

 幅広い年代の人が安心して楽しく乗ることのできるモビリティーを届ける。(聞き手=永野原梨香・ライター)

>>連載「挑戦者2023」はこちら

 長年、自転車ほどのスピードで移動でき、立ち止まって人と会話できたり、体を左右に動かして周りを見渡せたりできる乗り物が欲しいと思っていました。これを具現化したのが、電動立ち乗り三輪モビリティー「ストリーモ」。

折りたたんで持ち運び可能
折りたたんで持ち運び可能

 タイプは二つ。第1種原動機付き自転車モデル「ストリーモS01JG」(税込み30万5000円)と特定小型原動機付き自転車モデル「ストリーモS01JT」(ミラーなしで税込み30万円)です。S01JGはいわゆる50㏄のバイクで原付き免許とヘルメット着用が必須です。当初はこのタイプのみを開発していました。しかし、7月の道路交通法改正で最高時速20キロメートル以下などの基準を満たす電動キックスケーターなどは「特定小型原動機付き自転車」となり、16歳以上は免許不要で乗ることができるようになりました。そこで、急ぎS01JTも開発しました。最高速度を時速6キロメートルに制限し、最高速度表示灯(緑色のランプ)を点滅させれば自転車が走行可能な歩道も走れます。

 ストリーモは一般的な二輪の電動キックスケーターとは安定感が違います。車輪は前に一つ、後ろに二つ。これがポイントです。安定して停止するには3点が必要です。でこぼこ道を走る際も左右に曲がる際も、車体は安定しています。発進時はハンドル中央付近のスタートボタンを押すだけ。自転車と同じくブレーキレバーを引くと停車します。停車時は、中央のボードに足を載せたままで大丈夫です。

 昨年と今年の2回、300台限定で抽選販売をしたところ1200件ずつ、計2400件の応募がありました。最近は、企業や自治体からの引き合いも増えています。例えば北九州市でのケースでは、北九州市立響灘(ひびきなだ)緑地という大きな公園で職員の移動に使ってもらい、業務の効率化などへの効果を測定する実験をしています。そのほか、物流、テーマパーク、建設業界との話も進んでいます。

フランスで発売予定が……

 2019年ごろ、異動でモノづくりの現場から離れていた私は、休みのたびに自宅ガレージでがらくたの山を作り、ストリームの原型を作りました。これを本田技研工業の新事業創成プログラム「IGNITION」に応募したところ選出され、一気にカーブアウト(会社分割の一種)へと動きました。カーブアウトなので、ホンダからの出資比率が多いわけではありません。

 本社のある墨田区ではスタートアップを支援する体制が整っています。例えば、緊急回避のテストを校庭だった場所でさせてもらったり、ご高齢の方の意見を聞くためにシルバー人材センターの方などに試乗してもらったりしました。部品作りや加工でお世話になったのは同区の浜野製作所です。一般的に、削りや溶接など会社ごとに得意、不得意があるものですが、浜野製作所は強いネットワークがあって、どんなものでもそのなかで作ってくれました。

 実は当初、フランスから発売する予定でした。石畳で滑りやすく坂道も多いなどの理由から三輪のオートバイが普及しています。コロナによるパンデミックやウクライナとロシアの戦闘で物の運搬が難しくなったことなどから先に日本で販売しました。時期をみて進出したい。


企業概要

事業内容:電動パーソナルモビリティー等の車両の開発、製造、販売

本社所在地:東京都墨田区

設立:2021年8月

資本金:1億円

従業員数:15人


週刊エコノミスト2023年11月21・28日合併号掲載

森庸太朗 ストリーモ代表取締役CEO 三輪で移動の楽しさを届ける

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