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苦境のパチンコ業界 大手「ガイア」やはり破綻 森山玄将
大手パチンコホール経営業者「ガイア」が10月30日、民事再生法の適用を申請した。グループの負債総額(単純合計)は約1800億円に上った。国内有数のパチンコホールだったガイアは、なぜ破綻したのか。
ガイアは1984年に設立され、同年12月に1号店をオープン。以降店舗を拡大し、ピークとなる2006年5月期には年売上高約5853億500万円を計上していた。その後は、急速な店舗拡大の反動で不採算店舗を閉店したことから、わずか4年後の10年5月期には4000億円を割り込むなど厳しい状況が続いていた。
さらに追い打ちをかけるように11年に当時の代表が覚せい剤取締法違反で逮捕。また、翌12年にはメディアより所得隠しに関する報道がなされる事態となっていた。00年代前半からパチンコ・パチスロの射幸性の高さが問題視され、パチンコ業界のコンプライアンス(法令順守)やガバナンス(統治)体制に対する社会の目が厳しくなるなか、相次ぐ問題の発覚でガイアの事業環境は同業他社より一層悪化することとなる。
さらに18年ごろには、ガイアに関する怪文書が流出。当時から「内容はほぼ間違いないだろう」(情報通)といわれるほど説得力の高い内容で、金融機関や関係先はガイアに対する不信感を強めていった。
こうしたなか、追い打ちとなったのが20年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大だ。緊急事態宣言の発令により約2カ月間の店舗休業を余儀なくされ、この間「約100億円の粗利益を喪失した」といわれるなど、急速に資金繰りが悪化。その後、感染状況がいったん落ち着き営業を再開することになるが、客足は戻らず、20年6月には金融債務を中心に支払いが遅延し、翌7月には金融機関などへ支払いの延期を要請することとなった。
その後も、収束の糸口が見えないコロナ禍や22年1月末を期限としたパチスロ機種「5号機」の完全撤去による資金負担などガイアにとって厳しい状況が続いた。しかし、メインバンクによる手厚い支援や不採算店舗の撤退、店舗売却などで危機を乗り越えてきた。また、昨年11月に導入開始となったスマートスロットはガイアも多く導入するなど、業界内では「店舗売却で資金繰りが改善した」ともうわさされていた。
だが、実際は違った。ガイアの民事再生の申立書によれば「競合他社が積極的に遊技機への投資を進めたことから、遊技機投資を余儀なくされ、投資額が大幅に膨らむこととなった(一部省略)」とあり、顧客獲得のためやむを得ない策であったようだ。新台導入により資金繰りが悪化したガイアは、関係各所より資金を集め支払いを続けていたが、9月末には金融債務の支払いが遅延するほか、10月2日期日の手形も決済不履行となるなど厳しい資金繰りを露呈。その後約1カ月間、資金繰りに奔走したが奏功せず、これまで手厚い支援を行ってきた金融機関も支えきれなかった。
苦境にあえぐパチンコ業界。22年の老舗メーカー高尾の民事再生のほか、今年には老舗メーカーの西陣が廃業したことも厳しさを物語る。パチンコ業界の課題は集客の改善といわれて久しいが、問題は果たしてそれだけか。今、業界として岐路に立たされているのは間違いない。
(森山玄将・帝国データバンク情報統括部)
週刊エコノミスト2023年11月21・28日合併号掲載
FOCUS 「ガイア」破綻 最大手の末路が示すパチンコ業界の苦境=森山玄将