週刊エコノミスト Online サンデー毎日
〝ヒマラヤ大聖者〟相川圭子氏新刊刊行記念インタビュー 「人間関係に悩む全ての人へ伝えたい叡智」
女性として史上はじめてヨガの奥義をきわめ、 「ヒマラヤ大聖者」として崇敬を集める相川圭子氏。昨年11月に小社から刊行した最新刊が大手書店で新刊ランキング入りするなど評判となっている。コロナ禍を経て変容した人間関係に悩む現代人に送るメッセージとは。
――今回の著書が、人間関係にフォーカスしたものとなった理由とは。
相川圭子 いろいろなご相談を聞く際に、親子で折り合いが悪いとか、夫婦仲が険悪だとか、そういう話を聞くことが多かったんです。私自身は人間関係で悩んだことはないんですが、周りの人に聞いてもみんな人間関係を難しいととらえているのですね。そんな時にちょうど執筆のお話をいただいたということです。
――ただの不仲だけでなく、ハラスメントなどのトラブルに陥ったり、孤独を感じたりする人も多いです。
相川 もろもろの葛藤や孤独を感じて、自己防衛でいろいろな依存先を求める、これらのこだわりを、瞑想(めいそう)という心を整理整頓する行で取り除くとよいのですよ。そういう、私の経験や考えと、私が修めたヒマラヤ秘教の教えとを融合させて、人間関係に悩む人のお役に立てたらと思ったんです。そこでのご相談への解答が「ヒマラヤ瞑想を実践しましょう」みたいな本格的なお話だけでは、なかなかみなさんの生活の中で役に立ちきれないと思うので、日々の生活の中でどうしたらいいかもちゃんと示していこうということも心がけました。
自分の「思い込み」を外すことができると、相手の立場も理解でき、恐れる心がなくなって、こわばった関係をよくすることもできるんです。ただ、生きていくうちにしみついてしまった思い込みって、なかなか外せないんですね。勉強でもスポーツでも、一生懸命打ち込むことでよい結果を得られますが、同時に消耗しストレスも発生しています。そういう世間的な結果を出す努力をしながらも、「本当の成長」も果たしていただきたいなと思います。
――しかし、毎日生活する中でそうしたことを意識しようという考えは、持ちづらい人も多いのでは。
相川 見えにくいことですからね。だからみんな見えるところ、つまり他の人や周りと自分とを比較して、自分はあれを持っていない、人生がキラキラしていないと落ち込む。最近は〝個人の自由〟とよく言うのですが、そのことにとらわれてかえって不自由になっている人が多いと思います。ネットの上でキラキラを夢中になって演出して、みんなから「いいね」をもらうことへの依存をしています。個性重視とかオンリーワンという言葉に踊らされて競い合い、心のエネルギーが枯渇していくんです。
――どうしたらそういう執着から抜け出せますか。
相川 人にほめられなくても充実できるものを見つけることでしょうね。そして、他人に期待しないこと。みんな、他人に期待しすぎますね。ほめられたい、認められたいと。でも実際、ずっとほめられっぱなしみたいな才能を持っている人なんてそうそういないわけです。そうではなく、「見えないところ」に気づくことです。自分の裏と表を知ってこそ、完全な人間なんです。人から見えている表側だけでキラキラしようとするのでなく、その裏の、根源的なところにつながっていかないといけない。また、よく見られたいというエゴから離れるためには、謙虚さや、他人への尊敬を持つことです。地位をひけらかしていると見えても、その人自身はそれに気づかない。瞑想などの修行で気づきが増し、エゴが落ちて初めて変わるんですよ。
あなたの中の「輝き」に気づいて
――でも「今日から心を入れ替えていい人になるぞ」って思ってなれる人は、なかなかいないですよね。
相川 とってつけたみたいになって、かえって皮肉を言われたり、ぎくしゃくしてしまうとかね。だから難しいんですよね、人間関係って。ただ、そうした中でも相手のいいところを見て、許してといったことを、徐々にやっていく。以前お世話になったことなどを思い返したりして、一つ一つ感謝に変えていくようなことができればいいですね。もちろん、私のところのように真理を目指して修行すると、こだわりが取れて楽になり、内側から満ちるので最高に満足しますが、私の本を読んでいただくだけでも変わります。実際、私の本を読んで心持ちが変わったという人は多いんです。
――やはり、相川さん独特の言葉や教えがあるから。
相川 いえ、言っていること自体はそんなに難しい話ではないんです。でも、たとえば人に感謝しなさいとか、過ぎたことにとらわれないようになんてことは、みなさん親や学校の先生などからいくらでも言われてきたはずなんです。それと同じことでも、私が言うことで、「ヒマラヤの聖者が言うなら」と感じるわけです。私は究極のサマディと呼ばれる修行を成就して、心身を浄化して変容し、創造の源の存在と一体になったんですね。そうした存在は人の意識を祝福で変えられるんです。インドではヒマラヤ聖者は祝福をする希有(けう)な存在です。それで私の話やエネルギーでみなさんの苦しみが取れるというわけなんです。それと私の本では、サマディの叡智(えいち)からの言葉を使っていて、また読んでいてつっかかるような難しい言葉は使わず、できるだけ平易な言葉で書くようにしているので、そこもありますね。
そうやって私が一番お伝えしたいのが、あなたの中に宝物がある、輝く自分がいるんですよということ。あなたがまだ知らない「愛」の力につながることができれば、そんなにつっぱらなくても、自然体で楽に生きていけるんです、と。
――「愛」といっても、恋愛感情などとはまったく違うものですよね。
相川 「愛」というと、日本だと恋愛のことかと思われるのですね。私は「宇宙的な愛」と言っているんです。感情の愛や肉体の愛は、とらわれの愛、消耗の愛、あるいは奪う愛です。自分が寂しいから愛するとか愛してほしいとかでなく、他人を生かすためのサポートをしてあげる。執着でない、無償の愛です。それは心というものを超えたところにある愛です。それを目覚めさせることで、あなたはいつも内側が満ちるということを、多くの方に伝えていければと思います。
(構成/本誌・中西庸、撮影/伊藤聖和)
『ヒマラヤ大聖者が伝える 心と心をつなぐ言葉』(毎日新聞出版)定価 1650円
あいかわ・けいこ
1945年、山梨県生まれ。10代の頃からヨガや瞑想を実践し、5000年の伝統を有するヒマラヤ秘教の正統を継承、「ヨグマタ(ヨガの母)」とたたえられる。インド政府の要請で、国連本部でのイベントで主賓としてスピーチを行うなど、グローバルに活動