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2024年入試速報・第11弾 薬学部合格者高校別ランキング
2024年入試速報・第11弾 薬学部合格者高校別ランキング
コロナ収束で志願者減少も 人気集める薬学部の条件は
2月から続いてきた本誌恒例の大学合格者特集は、今回でいったん終了。最終回は、コロナ禍で注目度が上がった薬学部の入試動向と薬剤師国家試験の現状について、大学別の合格者数ランキングと共に見ていこう。
人気が高かった国際系や観光系が不人気になるなど、コロナ禍による行動制限は受験生の学部志望動向を変えた。そのような状況下で人気が上がったのは医療系学部。なかでも、薬学部はワクチンや治療薬の開発などがクローズアップされたことで志願者が増加した。その潮目が変わったのが、新型コロナの5類感染症移行後の実施となった2024年度入試(24年4月入学)。駿台予備学校入試情報室長の城田高士さんは言う。
「コロナ禍で注目され人気が高まった薬学部ですが、コロナの収束とともに落ち着きを見せています。23年度に志願者が増えた国公立大の24年度の志願者指数(前年を100とした時の数値)は96。23年度も志願者が減少した私立大は現時点で97です。順天堂大と国際医療福祉大が薬学部を新設しましたが、私立大の志願者減の歯止めにはなりませんでした」
医学部ほどではないが、志願者が減少傾向にあっても国公立大薬学部は難関に変わりはない。そんな薬学部に強い学校を一覧にしたのが81㌻左の「国公立大薬学部合格者数ランキング」。私立を中心に中高一貫校が並ぶ医学部ランキングとは異なり、3年制の公立校が大半を占めることが特徴だ。
ランキング1位の修猷館は、合格者22人すべてが九州大で、地元難関大に強さを見せる。2位タイの岐阜と熊本は、前者が地元の岐阜薬科大13人のほか、京大や東北大などに合格。後者は熊本大11人や九州大4人などの合格者がいる。3位以下も薬学部を持つ大学が地元にある学校を中心に、各県のトップ公立進学校がランクインしている。
私立大については、高校別合格者数を公表している大学のみの掲載となるが、82㌻からのランキングをご覧いただきたい。
ところで、コロナ禍で注目度が上がった薬学部だが、長い目で見れば人気は低迷している。その要因は薬剤師国家試験の合格率の低さ。81㌻右の「薬剤師国家試験」のグラフを見ると、合格率は16年をピークに下降傾向で、直近5年は7割を切っている。こうした状況について、代々木ゼミナール教育総合研究所主幹研究員の坂口幸世さんは次のように指摘する。
「平均合格率は低いですが、薬剤師国家試験は難関ではありません。新設が相次いだ歴史が浅い私立大薬学部の中には、入りやすい大学が少なくありません。その中には国家試験の合格率が低い大学もあり、全体の合格率を押し下げているのでしょう。また、数多く新設されて学生が増えているのに国家試験の受験者は増えていません。これは受験資格を得られない学生の多さを示しています」
薬学部は06年度に6年制となり5年次以降の実務実習が必須となったが、実習に出るためには、知識や技能・態度が一定レベルにあるかを測る薬学共用試験をクリアしなければならない。そのハードルを越えられない学生の影響で受験者が増えないようなのだ。
もちろん、歴史が浅い薬学部が全て合格率が低いわけではない。例えば、24年度に新設された国際医療福祉大・成田薬や順天堂大・薬は、優秀な受験生が集まる素地があり、安定した合格率が見込まれる。
「志願者が集まる薬学部の特徴は、医学部と付属病院を持っている大学であることと交通の便が良い立地。この2大学は条件がそろっています」(坂口さん)
東京理科大も、これらの条件をクリアしそうだ。同大薬学部は、25年度に千葉県野田市の野田キャンパスから、東京都葛飾区の葛飾キャンパスに移転する。移転による利便性の高まりとともに、都内の病院や薬局における実習がしやすくなるなど、教育・研究効果の向上が期待されるからだ。
さて、人気が落ち着いている薬学部入試だが、この状況は来年度以降の受験生にどのような影響をもたらすのか、駿台の城田さんに聞いた。
「高齢化社会が進むにつれ、薬剤師のニーズは高まると見られます。入試状況が落ち着いている今、薬学部志望者は希望をかなえやすい状況にあるといえます」
国家試験合格率が高い大学は数多くあり、薬学部全体の合格率を気にする必要はない。コロナ禍が明けて倍率が下がることで、薬剤師志望者にとって望ましい受験環境が巡ってきたよ
うだ。