週刊エコノミスト Online サンデー毎日
2024年大学入試速報:この10年で合格実績を伸ばした学校の「共通点」は? 東京都市大等々力、広尾学園、頌栄女子学院、須磨学園、箕面自由学園、尼崎稲園…
大学入試速報・第7弾
2024年度入試(24年4月入学)が終了した。その総括として、今週号から進学校の合格実績を紹介していく。第1回は難関大合格者数が伸びた学校とともに、2409高校の合格実績について見ていく。
中高一貫校の中学や高校選びの基準は、校風やさまざまな活動の支援体制、交通の便などいろいろあるが、高校生活の先にある大学の合格実績は決め手の一つ。ただ、合格実績を見る際に気をつけたいのは、現在の合格状況が安定した結果なのか、もしくは増加または減少傾向にあるのか。今回は、24年度と14年度を比較して難関大の合格者が増えている「この10年で伸びた学校」を東日本と西日本に分けて一覧表にしてみた。
難関大の合格実績が自然に伸びることはまずなく、そこには必ず理由がある。そうした視点で東西の最も伸びている学校を見ると、面倒見の良さというキーワードが浮かんできた。東日本の東京都市大等々力は、14年度の合格実績と比較すると613人増で、旧帝大は0人から10人になった。その背景について安田教育研究所代表の安田理氏は、こう話す。
「放課後の学習を計画的に行う体制の構築や長期休暇時の進学対策講座など、面倒見の良さが特徴の学校です。生徒本位で学力を伸ばすために力を入れていることが、合格実績となって表れているのでしょう」
西日本トップの須磨学園は526人増。旧帝大は49人から84人。そのうち東大が10人で、合格者が2桁になったのは同校史上初。東大合格者が増えた背景について、同校の堀井雅幸校長は言う。
「成績上位層も含め、弱点克服のための徹底した個別指導と演習を行いました。生徒のひたむきな努力とともに、学年の垣根を越えて学校全体で教員が個別対応を行った結果、東大に現役合格した生徒は全員が塾を利用せず合格しています」
この2校には難関大合格に向けたコース制などを採用している共通点があり、これは表の他の多くの私立校でも見られる動きだ。東日本で2番の広尾学園には、医学部や理系学部を目指す「医進・サイエンスコース」があり、栄東は東大や医学部を目指す「東医」クラス、朋優学院は東大や京大を目指す「国公立TG」など進路希望に合わせた四つのコースがある。開智や安田学園なども進路実現のためのコースを持つ。前出の安田氏は開智に注目して、こう話す。
「創造的学力の育成のために創立当初から探究学習を続けており、思考力や表現力が問われる、難関大入試に対応できる生徒が育っています。優秀な教員が集まり、塾に通うことなく、難関大合格に向けた学習が校内で完結することが特徴です」
西日本で2番目に多い箕面自由学園は、「スーパー特進コース」や「文理探究コース」を設置して成果を上げ、常翔学園や三田学園も難関大合格に向けたコースを設置している。
公立校の動きも見ておこう。東日本の浦和・市立と南、西日本の西京と守山は併設中学を持ち、一貫教育で成果を出している。ちなみに表にはないが、難関大合格実績が高い西日本の刈谷(愛知)は、25年度に併設中学が開設予定だ。
一方、高校募集のみだからこそ合格実績が伸びているのは船橋・県立だ。
「船橋・県立とともに千葉の公立御三家の千葉・県立と東葛飾は併設中学があり、高校から入学すると学力面で馴染(なじ)みにくい。そのため、併設中学がない船橋・県立を目指す優秀な中学生が多くなるのです」(前出の安田氏)
船橋・県立は千葉県から進学指導重点校に指定されていることも大きく、他都県では、湘南と川和が神奈川から学力向上進学重点校、新宿は東京都から進学指導特別推進校に指定されている。
西日本の公立校に目を移すと、尼崎稲園は日本で初めての公立の単位制高校で、課程に縛られない、生徒それぞれの進路に沿った科目設定ができる強みがある。西宮・市立は全県から出願できる理数系教育に特化したグローバル・サイエンス科があり、西宮東は数理・科学コースと人文・社会科学コースを設置している。
大阪府の学校では、難関大進学に力を入れる学校として府教委が選定するグローバルリーダーズハイスクール(GLHS)指定校の高津が入っている。非GLHSでは、1911(明治44)年設立と長い歴史を持つ春日丘や三島が合格実績を大きく伸ばしている。
ここまでは難関大合格実績の向上が特に顕著な学校について取り上げた。ここに出てこなかった進学校の実績については、「全国主要2409高校 有名110大学合格者数」をご覧いただきたい。