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2024年大学入試:難関大を中心に志願者増加 「平均点」上昇で国立が人気に 国公立大「前後期」大学合格者高校別ランキング 東大、京大…16大学

「サンデー毎日4月7日増大号」表紙
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 大学入試速報・第6弾

 間もなく終わる2024年度(24年4月入学)の国公立大入試は、翌年に控えた新課程入試に左右されることなく、出願状況から受験生の安全志向は感じられなかった。24年度の国公立大入試について、振り返っていこう。

 24年度の国公立大一般選抜の志願者は、前年を80人上回る42万3260人だった(独自日程で選抜する国際教養大などの公立大を除く)。18歳人口が大きく減少すること、さらに、翌年に持ち越すと新課程入試になることから安全志向が働き、国公立大の志願者は減少が見込まれていた。しかし、ふたを開けてみると前年並み、国公立大志向の強さを印象付ける出願状況となった。

 国立大と公立大の志願者を分けて見ると、国立大が1410人増の29万9715人なのに対し、公立大は1330人減の12万3545人。国立大と公立大で対照的な出願状況になった要因について、駿台予備学校入試情報室部長の石原賢一氏が解説する。

「24年度は大学入学共通テストの平均点が上がり、目標点が取れた受験生が多かったことから安全志向は見られず、各地域トップの国立大に出願しやすかった。弱気にならず国立大に積極的に出願した受験生が多い分、公立大の志願者が減少したのでしょう」

 各地域の国立大の出願状況を見ると、志願者が500人以上増えている大学には、茨城大(6250人)▽鳥取大(4649人)▽長崎大(4597人)▽島根大(4236人)▽福井大(3395人)▽香川大(3348人)▽宇都宮大(2794人)―などがある。中でも福井大と鳥取大、島根大は1000人以上の志願者増だ。

 一方、志願者が500人以上減少している公立大には、高崎経済大(5377人)▽岡山県立大(1732人)▽山口東京理科大(1583人)▽高知工科大(1198人)▽埼玉県立大(520人)―などがある。

 受験生の安全志向が見られなかったことは、旧帝大に東京工業大、一橋大、神戸大を加えた、難関国立10大学の出願状況からもうかがえる。10大学合計の志願者数は7万549人で前年を893人上回っており、志願者が減少したのは、北海道大、大阪大、東京工業大の3大学のみだった。駿台の石原氏は言う。

「北海道大は北海道の18歳人口減の影響が大きいのでしょう。大阪大は同地域の京大と神戸大の間の難易度帯にあり、強気な受験生は京大で、慎重な受験生は神戸大と、志願者が両大学に引っ張られてしまう近畿の難関大特有の事情があります」

 「10兆円ファンド」で評価を高めた東北大

 東京工業大は前年の志願者増の反動があり、3大学いずれも安全志向とは離れて、志願者が減少する理由があった。

 出願状況が好調な大学が多い難関国立大の中でも、志願者が大きく増えたのは東北大。前期の出願状況を見ると志願者が増えている経済、理、医、薬、工に対し、減っているのは文、教育、法、歯、農。理系学部が増加傾向にあることが特徴だ。

「文部科学省が世界水準の研究大学をつくるために創設した、10兆円規模の大学ファンドの支援候補に東大や京大に先駆けて選ばれたことが大きいですね。もともと研究力を評価する受験生が多かったが、その背中を後押しすることになったのだと思います」(駿台の石原氏)

 次に、一般的な大学も含め、志願者が多かった大学について「国公立大志願者数ランキング」から見ていこう。国公立大全体の志願者が増えていることもあり、ベスト3は全て増加。上位10大学のうちで志願者が前年を下回っているのは3大学のみだ。

 ランキングの1位の大阪公立大は、22年度に大阪市立大と大阪府立大の統合により誕生した大学。国公立大の中で大阪大、東大につぐ定員規模の大きな大学になったこともあり、開学以来3年連続でトップを続けている。

 2位と3位は、前年の志願者減の反動で増加に転じた千葉大と神戸大。4位は北海道大で、ここまで後期を実施している大学が並ぶ一方、東大は前期のみの募集ながら5位に入っている。7位の京大の後期は法(20人)だけ、9位の大阪大も前期のみにもかかわらずベスト10入り。定員規模が大きいことが一因だが、人気の高さの証明でもあろう。

 6位には横浜国立大が入った。874人減と志願者の減少幅が大きいが、前年が2171人と大幅増だったので、人気は維持していると言える。横浜市の同大の最寄り駅に、東京から鉄道が乗り入れたことにより、東京や埼玉の受験生の利便性が上がったことが大きい。11位の東京都立大が前年に続き減少しているのは、横浜国立大が都内から通学しやすくなった影響もあるだろう。

 私立大入試も含め、現行課程最後の入試は混乱なく終わりそうだ。新課程組と旧課程組が入り交じる25年度入試はどうなるのか。目を凝らして見ていきたい。

 3月26日発売の「サンデー毎日4月7日増大号」には、ほかにも「田中均元外務審議官 政治と外交『総点検』 自民党政治が終わる」「2024年シーズンいよいよ開幕 プロ野球 今季の見どころはコレだ! 二宮清純」などの記事も掲載しています。

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