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2024年大学入試:東大で聖光学院「3桁」「トップ3入り」の衝撃 京大は首都圏校の増加で進む「全国区」化 超詳報「東大」「京大」合格者高校別ランキング
大学入試速報・第5弾
本誌は「東大号60th」を記念し、1月から6号にわたって「東大合格者高校別ランキング・ベスト20史」を連載してきた。2024年度入試(24年4月入学)は、その東大合格者ランキング史に、新たなページを刻む結果になりそうだ。
24年度の東大合格者数ランキングの1位は43年連続の開成だったが、背後に聖光学院が迫っている。卒業生に占める現役合格者数の割合では、開成の29・1%に対し、聖光学院が37・5%と上回る。
24年度の聖光学院の合格者数は100人。3桁の東大合格者を出した学校は、本誌が調査を始めた1964年以降で筑波大付、筑波大付駒場、学芸大付、西、日比谷、戸山、麻布、開成、桐蔭学園、灘、ラ・サールの11校のみ。そこに聖光学院が新たに名を連ねた。昨年87人で2位の筑波大付駒場の合格者数がまだ明らかになっていないが、聖光学院の「トップ3入り」は確実な状況だ。安田教育研究所代表の安田理氏は言う。
「横浜に大手予備校がなかった時代から、優秀な教員が集まり塾に頼らない指導をしてきた。今回に関しては、コロナ禍以前からIT環境が整っており、他校に先駆けて授業を再開できたアドバンテージが大きかったようです。また、高校3年生用の自習室があり、夕食も提供するなど、東大など難関大合格に向けた環境が学内で完結する強みがあるようです」
学園祭や宿泊研修などの行事を早くから再開し、コロナ禍で下がりがちな生徒のモチベーションを高め、生徒も信頼してついてきたことも大きな要因だという。
24年度の東大の女子合格状況を見ると、志願者が前年とほぼ同じの2096人(4人増)に対し、合格者は71人減の582人だった。23年度は女子の合格者が増え、その割合は一般選抜で過去最高の21・8%だったが、24年度は男子が巻き返し。男子校である聖光学院の躍進は、その象徴的な出来事となった。なぜ男子が増えたのか。駿台予備学校入試情報室部長の石原賢一氏に聞いた。
「ここ数年、東大の2次試験は理科類の数学が極端に難しく、数学が得意な男子もあまり得点できなかった。今年は数学が易しくなり、数学が得意な男子が高得点をとることでアドバンテージを得たことが一因でしょう」
一方、女子校ながら前年の3人から13人に急増したのは鷗友学園女子だ。前出の安田氏は言う。
「何が何でも東大というわけではなく、生徒の意思を尊重する進路指導を行う学校なので、今年は東大志望者が多かったということのようです。生徒の進路実現に熱心な教員が多く、30年分の東大の過去問を解いて研究した国語教諭もいたと聞いています」
前出の2校以外の合格者が伸びた学校を見ると、10人以上合格者が増えている学校には東大寺学園、市川、仙台第二、宇都宮、船橋・県立、北野がある。
京大の合格者数ランキングの上位は、18年度に北野が1位に復活して以降、大きな動きはない。24年度も1位北野、2位洛南、3位東大寺学園の3校が、昨年と同じ順位で並んでいる。4位タイの天王寺と灘は、ともに合格者を上積みしている。
合格者の増加に注目すると、東大のような大幅増はなく、最も増えたのは10人増の浦和・県立。洛星が9人増、西京、洛南、灘が各8人増で、札幌北、日比谷、開成、四天王寺、米子東などが各7人増で続く。浦和・県立、日比谷、開成といった首都圏のトップ校の合格者が増えていることが特徴で、いずれも00年以降で2番目に合格者が多くなった。
なお、3校ともこれまでの合格者数最多は22年度だった。駿台の石原氏は「22年度の大学入学共通テストは数学が極端に難化し、大幅な平均点ダウンとなった。第1段階選抜で東大に不合格になるのを避けようと、京大に志望変更した受験生が多かったのでしょう」
こうした特殊事情を除くと、近年最多の合格者というのは、首都圏での京大人気の盛り上がりを意味しそうだ。首都圏一極集中に苦慮する東大に比べ、「全国区」の京大だが、その傾向がさらに強まるのか。東大の動きとともに注目したい。