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2024年大学入試:一貫校優位続く難関大入試 〝現役志向〟で公立校も健闘 難関9国立大 現役合格者占有率トップ30 灘、筑波大付駒場、聖光学院、札幌南、札幌北…
大学入試第8弾
東大や京大などの旧帝大に東京工業大と一橋大を加えた、最難関大学群に高い割合で現役合格者を出す学校はどこなのか。卒業生に対する現役合格者の占有率を見ると、当たり前のように合格者を送り出す学校が見えてきた。
卒業式で周りを見渡すと、同級生の多くは難関国立大への進学が決まっている。「難関9国立大現役合格者占有率トップ30」では、1位の灘と2位の筑波大付駒場は、卒業生のおよそ2人に1人が東大や京大を中心とした難関9国立大に現役合格。表中で現役合格者占有率が30%以上の学校は14校に上る。
もっとも、24年度と14年度の数値を比較すると、学校によって占有率は増減していることが分かる。1位の灘は、東大の現役合格者が5人減少しているが京大は20人増加し、10年前の占有率を4・1ポイント上回っている。
一方、2位の筑波大付駒場は、東大の現役合格者が13人減少した影響が大きく、占有率は9・5ポイント下がっている。24年度が結果的に現役合格者が少ない年だった可能性は高いが、「大学選択の多様化の影響も考えられる」と話すのは、安田教育研究所代表の安田理さんだ。
「筑波大付駒場と渋谷教育学園渋谷(29位)の両方に合格して、後者を選ぶ家庭も出てきました。一因として考えられるのは、海外大進学実績の高さ。渋谷教育学園渋谷は東大合格実績も上がっており、東大と海外大の両方を視野に入れられる強みがあります」
大学の選択で、東大一択ではなく海外大を視野に入れる家庭が出てきている。優秀な生徒の選択が多様化すると、東大合格校の地図が変わるのかもしれない。渋谷教育学園渋谷の難関9国立大の占有率は、先行して設立された姉妹校である渋谷教育学園幕張(25・2%)を上回っている。
3位の聖光学院は、占有率は3・5ポイント増と、大きく増えていないが、合格校のレベルが上がっている。東京工業大と一橋大の現役合格者が計12人減少する一方、東大は29人増加しているのだ。
占有率の伸び幅という点で見ると、表中最も大きいのは19・6ポイントアップした西京(18位)だ。
「付属中学からの一貫教育の効果が大きいでしょう。総合型選抜や学校推薦型選抜などで行われる京大の特色入試に強いことも、現役合格者が大幅に増えた一因と見ています」(安田さん)
上位3校や西京は中高一貫校であり、難関国立大入試における一貫校の優位さがうかがえる。トップ10には、東大寺学園(6位)、甲陽学院(7位)、開成(8位)などの伝統一貫校が入っている。この中で注目されるのは、43年連続で東大合格者数ランキング1位の開成。402人と他校に比べて卒業生が多いにもかかわらず37・3%と高い占有率となっている。
卒業生が多い学校ということでは、300人以上の学校が大半の公立の高校単独校も健闘している。3年間という一貫校の半分の就学期間で結果を出している学校には、4位の札幌南や5位の札幌北、9位の北野、10位の岡崎などがある。
「文武両道の学校が多く、かつては4年制といわれることもあった公立校ですが、現役で難関国立大に合格者を輩出する学校が増えています。その背景には、公立校といえども保護者や生徒の現役志向が強くなっており、学校もその流れに対応していることがあります」(安田さん)
現役志向の高まりに応えている公立校はどのような取り組みをしているのか。占有率が14・6ポイント増と大きく伸びている札幌北の進路指導部長の高桑知哉教諭が、その要因を説明する。
「1年次からグループワークで学び合う環境ができており、最後まで教え合いながら頑張っていました。蓄積されたデータにより、校内模試の成績から志望大学の合格可能性が見えます。そのため、自信を持って入試に向かうことができ、好結果につながっています」
同校の北海道大合格者は、総数が5人減にもかかわらず現役は35人増。1年次には、グループで学びたい分野を模索し、その実現のために全国に視野を広げて大学を研究するという。生徒同士が刺激し合い進路を考える機会を持つことにより、地元の北海道大以外の合格者も多い。
公立校では、向陽(26位)や岡崎、日比谷(27位)、北野なども、難関9国立大の現役占有率が大きく伸びている。
ここまで、難関国立大の現役占有率が高い学校を見てきたが、これは進学校のごく一部。ここで触れていない学校の合格実績については、「全国3435高校 有名183大学合格者数」をご覧いただきたい。