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経済・企業 特集

商社 不思議6 遅れる「組織改革」 「本社」から「投資先」へ 変わる現場に経験値低下=五十嵐雅之

取り込み利益200億円以上の非資源事業投資先 (注)資源・インフラ系および2010年代以降の投資先を除く、社名の( )内の数値は、出資比率と事業参入年 (出所)各社IR資料などを基にローランド・ベルがー作成
取り込み利益200億円以上の非資源事業投資先 (注)資源・インフラ系および2010年代以降の投資先を除く、社名の( )内の数値は、出資比率と事業参入年 (出所)各社IR資料などを基にローランド・ベルがー作成

 新卒就職人気ランキング上位に君臨し続ける総合商社。好業績が続き、年収が高く、雇用も安定。それにもかかわらず、中堅エース級人材の流出が続いている。「就社」感覚が薄い世代の増加も一因だが、事業投資にかじを切った商社経営のゆがみが、20年の時を経て噴出し始めたのではないだろうか。

 2000年前後の商社は「冬の時代」だった。人海戦術に頼ったトレーディング(取引仲介)事業が立ち行かなくなり、業界全体が危機に陥ったのだ。当時、商社本体には全世界に「現場」があり、投資案件の発掘力・目利き力が強かった。例えば、本社には産業機械のトレード機能があり、将来有望な技術・会社・サービスの情報が日々入ってきた、という具合だ。このことが、トレードから事業投資型へのビジネスモデル転換を成功に導き、今日の繁栄をもたらした。ただ、その副作用として、世界中を飛び回ってモノを売買するような古き良き商社社員が激減した。ビジネスの「現場」は投資先の子会社に切り離されて、本社からほぼ消滅してしまったからだ。

 現在の商社は、投資実行と投資先管理が主な業務となっている。前述の通り、投資先には「現場」がある。そこで、商社社員が現場経験を積んで、本社に戻り、かつてのような成功体験を再現できれば良いのだが、残念ながらあまり機能していない。

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