商社 不思議2 “格上げ”相次ぐ 財務規律の姿勢鮮明に 成長投資は保守的に=種市房子
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最近1年間で、商社は、格付けやその見通しの引き上げ・上方修正ラッシュを迎えている。象徴的だったのは、伊藤忠商事の長期格付けだ。S&Pグローバル・レーティングスが今年7月、Aマイナスから1段階上げてAに、ムーディーズがBaa1からA3に1段階上げたのだ。
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伊藤忠は、中国国有複合企業・中国中信(CITIC)へ6000億円も投資したにもかかわらず、相乗効果が出ていないと指摘されており、財務基盤への不安が指摘されていた。それにもかかわらず格上げした理由について、S&Pは「保守的な投資方針と財務規律を継続する姿勢を明確にしている」と説明する。S&Pが評価しているのは、伊藤忠が5月に発表した中期経営計画(2020年度まで)で「株主還元後の実質フリー・キャッシュフロー(純現金収支)の黒字継続」と明記していることだ。
商社は資源、農業・穀物事業の巨額投資が裏目に出た2010年代半ば、低格付けにあえいできた。理由の一つは、有利子負債を抱えながら巨額投資したのにもかかわらず、十分なリターンが得られないことだった。また、資源事業を中心に、資産の大型減損リスクがあるのにもかかわらず、それを埋め合わせる資本が十分でないとみなされていた。格付けは債券の元本支払い能力を評価するもので、商社にとっては低いほど資金借り入れ条件…
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週刊エコノミスト
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